お墓参りではお墓に水をかける?かけない?それぞれの理由

お墓参りではお墓に水をかける?かけない?それぞれの理由

お墓参りをする際、迷ってしまう作法の1つが「お墓に水をかけるか、かけないか」ですよね。
常々疑問には思っているものの、答えが分からないまま何度もお盆を過ごしてきたという人も多いのではないでしょうか。

その疑問を無くし、心を込めてお墓参りができるよう、お墓に水をかけることは正しいのか、それとも間違っているのかについて分かりやすく説明します。

また、そこから派生してお墓と水に関するその他の情報も記事の内容に含めてまとめていますのでぜひお読みいただけたらと思います。

お墓に水をかけてもいい?悪い?

お墓に水をかけてもいいか悪いかですが、答えは「どちらでも構わない」といわれています。
お墓参りをする人たちの考え次第でどちらの行為を選択しても良いということです。

どちらも間違っていないとなると余計にどうしたらいいか分からないという方は、両方の理由を知って支持できる意見の方の行為を選択することをおすすめします。

では、実際に水をかけていいとする理由と水をかけてはいけないとする理由をいくつか紹介します。

お墓に水をかけていいとする理由

お墓に水をかけていいとする理由の1つとして、ご先祖様や故人が地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道の六道のうちの、水も食料もなく、常に喉の渇きと飢えに苦しんでいるとされる「餓鬼道」に落ちている可能性があり、水を欲しがっているかもしれないからというものがあります。

そして、お墓の掃除ができて綺麗になり、お浄めにもなるからという理由でお墓に水をかける人もいます。後者は私たちがお寺や神社を参拝する前に手水舎で手を浄めるのと同じ考えです。

また、お参りにきたことをご先祖様や故人に知らせることができるからという理由でお墓に水をかける人もいるようです。そうすると、ご先祖様や故人が墓前に出てきてくれるとも考えられています。

更には、お釈迦様の誕生日である4月8日に行われる花まつり(灌仏会などとも呼ばれます)という仏教行事の中でお釈迦様の像に甘茶をかけることが影響して、お墓に水をかけるという考えもあります。

お墓に水をかけてはいけないとする理由

お墓は開眼供養をされているので墓石自体がご先祖様や故人を表すそのものとなり、そのお墓に水をかけることはご先祖様や故人の頭に水をかけていることと同じで失礼にあたる、という理由からお墓に水をかけてはいけないとする人もいます。

また、水をかけることによって墓石に急激な温度変化が起こり、墓石が割れてしまう可能性があるという理由からお墓に水をかけない人もいるようです。

しかし実際は水をかけた程度では滅多に石が割れることはないということなので、特に古いお墓であったり墓石屋さんから水をかけてはいけないと注意されていたりするようなことが無ければ、この問題は心配しなくて構いません。

お墓の水のかけ方

お墓に水をかける際には必ず綺麗なお水を使うようにしましょう。

水のかけ方に決まった順番はありませんが、いきなり水をかけるよりは濡れタオルなどで墓石のコケや汚れなどを除いてから水をかけると尚良いです。

かける際には水桶やバケツで直接かけたりはせず、柄杓などを使って上からたっぷりと水をかけます。
上からというよりはお墓の後方のみにお水をかけるという考えもあるので、心配な方は親戚や霊園の人に相談してみてください。

どちらの場合も、優しく心を込めてかけてあげるのがポイントです。

また、水鉢にしきみを浮かべて、そのしきみの葉についた水をはじいてお墓にふりかける「水手向け(みずたむけ)」という方法もお墓に水をかける行為の1つです。
これは古来のしきたりなので、今もやっている人は少ないですが地域や家族によっては根強く残っているところもあります。

花立てに花を生ける際に水手向けをする人が多いので、やりたいと思う方はこのタイミングでするのが良いでしょう。

水手向けはお墓に水をかけるのとは別の行為として考えられているので、重複して行って構いません。

お墓に水をかける道具

つづいて、お墓に水をかける道具について説明します。

水をかける道具の種類

お墓に水をかける基本的な道具は水桶柄杓です。

水桶(手桶ともいいます)とはその名の通り水を入れる桶で、お墓参りでの水かけや暑い季節の打ち水などに使われます。

柄杓とは水をくむための道具です。神社やお寺の手水舎で身を浄める際の道具として置いてあるものをイメージしていただけると分かりやすいと思います。

これらは大体の墓地や霊園で誰でも使えるように貸し出されていますが、そうでない場合には自分で用意する必要があります。

用意できない場合は、ペットボトルや綺麗なバケツも水をかける道具として代用できます。

お墓参りで使う水桶と柄杓の値段

自分たち専用の水桶と柄杓が欲しい場合や、墓地や霊園での貸し出しが無く、購入をしようと思っている場合には仏具店ネット通販ホームセンターなどで購入できます。

プラスチック製や木製など様々な種類があるので、値段も2000円前後から数万円前後まで幅広くあります。

水桶と柄杓のセットで売られていることが多いですが、単体で販売されているものもあり、柄杓だけの値段だと300円前後から、水桶だけの値段だと2000円前後から購入ができます。

できるだけ高いものを購入しなくてはならないなどのルールはないので、自分が水桶に使うことのできる費用と相談して購入してください。

なかには水桶に家名や家紋を入れてくれるサービスもありますので、長年愛用したいという方はぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか。

お墓でのお水のお供えは水鉢に

お墓でお水をお供えする場合には、柄杓などを使って水鉢にお水をたっぷりとお供えをします。

水鉢とは

水鉢とはお墓前方にある楕円のくぼみのことで、お水をお供えする場所です。

基本的には花立ての間に設置されていることが多いですが、供物台の一部に楕円のくぼみを作り、供物台と一体になっているものもあります。

お墓に水鉢がない場合

浄土真宗や神道などのお墓や、デザイン性が重視されたお墓の場合には、水鉢が設置されていないこともあります。

そういった場合は、湯呑などにお水を入れて供物台に置くようにしましょう。

但し、浄土真宗の場合はご先祖様や故人がお水に困っていることはないとされているため、お水のお供えはいりません。

お墓参りでやってはいけないこと

他の仏事などと比べるとあまり作法が決められていないお墓参りですが、やってはいけないこともいくつかあります。

墓石にお酒やジュースをかける

墓石にお水をかけるのは構いませんが、お酒やジュース、お茶などをかけてはいけません。

墓石がべたついてしまったり、シミが残ってしまったりする恐れがあります。

故人が好んで飲んでいたから、という理由でついやってしまう人もいるようですが、そういう場合には供物台にお供えしてあげてください。

水鉢に水以外の物を入れる

水鉢はあくまでもお水をお供えする場所です。

お酒やジュース、お茶などを注いではいけません。墓石と同じく、べたつきやシミの原因になってしまいます。

また、水鉢にお線香をお供えするのもやめましょう。

お線香を寝かせてお供えする宗派もあるので、そういった場面が印象に残っている場合は特に水鉢にお線香をお供えしてしまいそうになるかもしれませんが、火で墓石が傷ついてしまうので控えてください。

華美過ぎる服装

お墓参りの服装は基本的には自由ですが、お墓参りが主な目的で出掛ける際には華美過ぎる服装は避けましょう。

あまり露出がなく、黒やグレー、濃紺などの色合いの服を選んでおけば安心です。

心を込めてお参りができれば服装はさほど関係ないのですが、ご先祖様や故人に敬意を表すことができる方法の1つでもあるので、その点を考慮して服を選ぶことをおすすめします。

また特にお盆のお墓参りは、虫が出やすい季節でもあるので、そういったことからも露出を控えた服装は効果的です。

お墓の供物台にお供え物を放置して帰る

故人が好きだった食べ物や飲み物を供物台にお供えすることは構いませんが、そのままお墓に放置して帰ってはいけません。

カラスや小動物の食料・遊び道具になり、せっかく綺麗に掃除をしたお墓を汚されてしまいます。

自分たちのお墓だけでなく、周囲のお墓にも汚れの被害が及ぶことがありますので、帰る際に必ず持ち帰るようにしましょう。

湯呑などもカラスに割られてしまうことが多々ありますので、その都度持ち帰るか、墓地や霊園が置いておいてもいいというのであれば割れないプラスチック製のものにすると良いです。
但し、次のお墓参りの際にはカラスなどに持ち去られてしまっている可能性もあります。

お墓参りは一人で行ってはいけない?

よくお墓参りは一人で行ってはいけないという話を耳にしますが、そういったことは全くありません。

昔の墓地は山奥や足場の悪い場所にあることも多く、一人で行かせてしまうのは心配だという意味でこの言葉が使われていた可能性があり、そういったところからこの話が今も残っているのかもしれません。

確かに複数の人で行った方が、持っていかなくてはいけない物の管理や掃除、火やお供え物の後始末などで助かることもあるとは思います。

しかし考えられるのはそういった心配だけで、これらはとても一人で行ってはいけない理由にはなりませんので気にしなくていい事項です。

一人で行くほうが他の人に声をかける手間もなく気軽に行けるという方は、これだけの理由でお墓参りを中止にしてしまってはせっかくの機会が減って勿体ないですから、気にせず行くようにしましょう。

まとめ

お墓参りにはお供えの仕方やお参りの作法など、一応のルールはありますが、大事なのは故人を供養する気持ちです。
水をかけるのもかけないのもその人の自由ですので、自分の考えに基づいて判断して構いません。

ただ、水鉢の使い方などのお墓を傷つけないための最低限の事項は守って、ご先祖様や故人を思う大切なひとときを過ごしてくださいね。