檀家制度徹底解説!お寺でお墓を持つ方法とは?

先祖代々のお墓がお寺にある人の場合は、お墓がお寺にあり、葬儀などの様々な法要をお寺で行うことが当たり前になっているので気づきませんが、しかし新たにどこかのお寺にお墓を持つためには数々の手続きやステップが必要です。
今回の記事では、お寺にお墓を持つ方法を解説します。
目次
檀家とは何なのか?
あるお寺にお墓を持つ、ということは「そのお寺の檀家になる」ということです。まず最初にその檀家制度について解説しましょう。
檀家制度とは
特定の寺の信徒、門徒になり、お布施や墓地管理料を納めてお寺を維持するための経済的支援を行う家を檀家と言います。
檀家になることによって、葬式、四十九日、回忌法要などを行ってもらえ、概念的には故人の霊を常に供養してもらえることになっています。
「檀家」は「だんか」と読み、その語源は古代インド語の「寺や僧を援助する庇護者」である「ダーナパティ」です。
創始したのは江戸幕府
「檀家制度」とはこのように書いてくると古い制度のように思えますが、しかし実際は江戸幕府が始めたことですので、日本の2000年の歴史の中ではまだ400年にも満たない歴史の浅い制度です。
檀家制度は寺請制度(てらうけせいど)、あるいは寺檀制度(じだんせいど)ともいい、江戸幕府がキリシタンの信仰を禁止するためにすべての国民をいずれかの仏教寺院の所属にした、ということが始まりです。
同時に江戸期にあった、数々の人民統制政策の一環として、寺院を通しても、国民1人1人を管理し、幕府に背く不審な人間を取り締まれるようにしたものです。
そのために江戸時代は各寺院が「宗旨人別帳」「檀家帳」などと呼ばれる戸籍台帳のようなものを作成し管理していました。
今の役所の戸籍係を寺院がしていたようなもので、子供が生まれても寺院に届けたのです。
この宗旨人別帳には、檀家の家族、奉公人、出入りの行商人などの情報が載っており、それぞれの名前、年齢、所属寺なども記載されていました。
先ほど書いたように主な目的は、キリシタンでないことの証明でしたが、同時に住居移転、奉公、結婚や旅行という際に、その人間の身分を保証する「寺請証文」という証明書も発行し、戸籍係とハローワークや外務省を兼ねたような役割も果たしていました。
これは長く続いた江戸時代の平和を維持する重要な行政システムであったと同時に、寺院を繁栄させ裕福にさせる制度でもあったので、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」「地獄の沙汰も金次第」などのような僧侶や寺院が人々のお金で暮らし、贅沢をしている、という揶揄のことわざも生んでいます。
現代の檀家制度は、この江戸時代の檀家制度がもとになっています。
したがっていまだに先祖の葬祭供養を独占的に檀那寺と言われる寺院が実行し、寺院墓地に墓を構えることで定期収入を確保し、寺院という「ビジネス」を存続させる経済的なベースになっています。
檀家を持たないお寺もある
檀家制度ではこのような檀家を持つ寺院を「回向寺」といいましたが、同時に檀家を持たない「祈祷寺」というものも生みました。
それぞれは役割分担をしていて、回向寺は先祖供養を行い、祈祷寺は商売繁盛などの現世利益をお参りする寺として機能しました。
檀家制度は一旦明治政府によって反故にされる
檀家制度は寺院の経済力、発言力を強大にし、その反対に神社の力を弱めました。
神道を根幹理念として成立した明治政府はそれを問題視し、廃仏毀釈政策という、お寺を壊し、仏教の力を弱める政策を実行しました。
その廃仏毀釈政策によって、少なくとも表面上は檀家制度は反故になり、日本国民はすべてどこかの寺の檀家にならなければならない、ということはなくなったのです。
しかし第2次世界大戦の敗戦によって、神道をベースにした国家という概念は再びなくなり、先祖信仰の色濃い仏教へと回帰し、それらが多様化して現代につながっています。
お寺でお墓を持つにはどうしたらよいのか
では現代の「檀家制度」の中で、お寺にお墓を持つにはどうした良いのでしょうか。
お墓持つには寺院墓地か霊園墓地しかない
まず日本の法律では、許可を受けた墓地でした遺骨は埋葬できません。いくら自分の所有する土地であろうと、遺骨を埋葬することは犯罪なのです。
したがって新しくお墓を建てる場合は、原則としてキリスト教の教会も含めた「寺院墓地」か、「霊園」のいずれかしかありません。
ただし、すでに先祖代々のお墓をいずれかの寺院墓地か霊園墓地に持っている場合でも、新たに自分の代でお墓を別の場所に持つことは可能です。
寺院で墓地を持つためのステップ
その寺院墓地か霊園かの2つのうち前者を選んだ場合は、江戸時代さながらに、多くの場合はその寺院の檀家になるしかありません。
以下にそのためのステップを解説します。
寺院または墓地を選ぶ
まず、お墓を建てる寺院を選びます。
基本は寺院は自分のお寺の宗派に属している人しか受け入れませんから、日蓮宗のお寺に入りたいと思ったら日蓮宗に改宗するしかありませんし、曹洞宗などの禅宗や他の宗派の場合も同様です。
寺院が決まったら、檀家になることを申し出る
寺院霊園にお墓をを作ることは、ほとんどの場合そのお寺の檀家になることなので、申請はその2つを同時に行うことです。
申請には住民票や印鑑登録証明書などの書類が必要ですが、詳細は寺院によって違いますので前もって確認しましょう。
申請が終わり墓域を確保したら、入檀料、永代使用料や管理費などを支払い、「永代使用権権利証書」が届いたらお墓を建立できます。
この永代使用権権利証書」はそのお墓を維持している間は必携書類ですので、大切に保管しておきましょう。
檀家になるためには入檀料が必要
ここで入檀料というあまり見かけない費用が出てきました。それについて詳細を解説します。
入檀料の相場
檀家になるということを入檀と言いますが、これが霊園のであれば霊園の使用料だけ済むところを、寺院墓地の場合はお墓に関する費用のほかに、檀家になる費用も初期費用として必要です。
これはその地方や宗派、あるいは寺格によっても違いますが10~30万円が相場です。
入檀料の表書き
入檀料は受付があってそこで支払えばよいというものではなく、基本的には「お布施」なので、そのような形式を整えて納める必要があります。
たとえば、寺院事務所に入檀料の内訳として、お供えでいくら、土地代でいくら、と内訳が明示してある場合は、その項目ごとに別の封筒に入れて、土地代分としては「墓地借料」、花や線香、供物などのお供え分ととしては「御供」または「志」と表書きを書いて納めます。
内訳が無く、全体でいくら、という記載しかなければ、1つの封筒に全額を入れて「入檀諸費」でよいでしょう。
そして必ず封筒の後ろには、住所、氏名、金額を書きましょう。
お墓を建立する手順
檀家になった後はいよいよ、お墓を建立する段階です。そのステップについても詳細を解説します。
石材店に見積もりをとる
お墓を建立する寺院が決まったら墓石を建てる工事を行う石材店を探し、依頼して見積もりをとります。
ただし、寺院によっては指定の石材店が決まっている場合もあるので、申し込み時に確認しましょう。
指定の石材店がなく、自由に石材店を選ぶことができる場合は、できるだけ多くの石材店の相見積もりを取ったほうがよいでしょう。
お墓を建立すること自体、墓石代から工事費までかなり費用が掛かると同時に、建立後も新たに埋葬する都度石材店に依頼するので、長い付き合いになります。
ですから単純に建立費用が安いというだけではなく、後々のメンテナンス能力も見ておくことが重要です。
選択のポイントは、何といっても自分たちの要望をきちんと聞いたうえで適切な提案をしてくれること、自宅や墓地の近くに店舗があること、料金が明確であることなどです。契約時にはきちんと契約書を取り交わしましょう。
墓石の工事
石材店との契約が終了したら墓石の建立工事に移ります。借り受ける墓域は基本的に更地ですので、工事は以下のように本格的なものになります。
・基礎工事:草の撤去、墓石を建てる土台作り
・外柵工事:隣地のお墓との境界線を設け、同時に土砂の流入などを防ぐ外柵を作る
・墓石設置工事:指定の墓石に文字を彫刻し、設置する
ここまでの期間は契約後約1か月~約3カ月です。
ただし、墓石の種類やデザインによってはもっと時間がかかる場合もありますので、三回忌の法要までに建立したいなどの期日が決まっている時には、石材店にそのことをきちんと伝え、余裕を持った工期を設定してもらいましょう。
開眼法要を行う
お墓が完成したら、檀那寺の僧侶による開眼法要を行います。これはお墓には先祖の霊魂がまだ入っていないので、それを入れてあげる法要です。
一般的に納骨と一緒に行います。
ただしそれも決まったルールではなく、たとえばお墓が完成した時にまず開眼供養を行い、後から納骨をすることも可能です。
檀家になったらすべきこととは
では檀家になったらどのような義務が生じるのでしょうか。
年会費を納める
年会費は寺院によって、護持会費、墓地維持費などとも称されますが、要はお墓の清掃管理や寺院の通常運営のために檀家が負担する費用です。
一般的には年間で5,000円~2万円が相場ですが、その寺院のある地域や寺格によっても変わってきます。
寺院行事や法要の際のお布施
寺院は年に数回の行事、宗教イベントを開催します。
代表的なものでは春と秋の彼岸会、7月あるいは8月のお盆の盂蘭盆会、夏に行う施餓鬼供養、秋に行う十夜法要などです。
さらに浄土真宗であればこれに報恩講が加わります。
このような法要に参加することは義務ではありませんが、しかし開催の都度寺院から案内が来て、参加とお布施を要請されるでしょう。
このような合同の法要に参加する場合は3,000円~1万円程度のお布施が必要です。寺院にもよりますが、この中に読経、説教、簡単な食事、卒塔婆回向費用などが含まれています。
お寺や住居(庫裡)を改築する場合の檀家負担金
寺院は「本堂」だけで成り立っているわけではありません。
何より僧侶が住む住居(庫裡)エリアがあります。
さらに寺院によっては、書院、鐘楼、山門、位牌堂、開祖堂などの諸施設があります。
これらは寺院のものではなく、その宗徒、門徒、つまり檀家全体の財産という考え方なので、こうした諸施設の修繕、改修、新築に際しては檀家に「負担金」としての寄付を求められる場合が多いです。
しかしあくまで寄付ですから、金額も決まっていませんし、払う義務もありません。
あくまで本人の宗教心で判断すればよいことです。
その他のお布施
そのほか檀那寺で葬儀、回忌法要などの法要、月命日の読経をしてもらう都度、あるいは戒名をいただく場合にはお布施を納める必要があります。
これにも寺院によっては金額が明示されていますが、多くの寺院では、施主、喪主の「志」によって費用を決めるという建前のもと、費用は明示されていません。
ただし、地域、寺格による相場はあるので、寺務所などでその相場を聞けば教えてくれます。
目安としては下記を参考にしてください。
・通夜、葬儀の読経や供養:15~50万円
・一周忌、三回忌などの法要:3~10万円
・月命日などの読経:5,000円~1万円
檀家をやめることはできるのか
このような慣例が嫌になったり、信仰が変わったりした場合に、檀家をやめることはできるのでしょうか。
結論から言えばできますが、それに際しても手続きや費用が必要になります。
檀家はいつでもやめられる?
第二次世界大戦前の、帝国憲法時代には「信仰、信教の自由の禁止」「改宗の禁止」という項目があり、国民は簡単には改宗できませんでした。しかし、新憲法に合わせて「信仰の自由」が保証されたたため、現代では自分の好きな宗教を自由に選択し信仰できるようになりました。
従って原理的には、檀家をやめようと思えばいつでも止めることができるのです。
離檀の方法は
檀家をやめることを「離檀」と言います。
その方法は、まず最初に檀那寺にその旨を相談する事が必要です。
檀那寺にとって自寺院の運営のためには、檀家からのお布施や墓地管理料が必要ですので、檀家をやめられることは好ましくありません。
ですから、離檀する上では様々な制約を設けているのですが、現実に経済的事情や遠方へ引越すなど、どうしても檀家をやめざるを得ない理由があれば、檀那寺と話し合って、納得してもらう必要があります。
それらを怠って、ある日突然、離檀を申し出ると、檀那寺とのトラブルになり、あとでも触れる離檀料を100万円以上請求されるケースもあるので注意しましょう。
離檀料の相場は
離檀することは憲法で保障された権利ですからそのために費用を支払う必要はありません。
しかしお墓を放棄してしまうとそこに納められている先祖の遺骨も放棄してしまうことになり、その後どのように処分されるのかが心配です。
ですから、通常は檀那寺の定める離檀料を納めるほうが無難でしょう。
大体の離檀料の相場は、通常のお布施の3回分と言われています。金額にして、10万円~15万円です。
ただし離檀するとお墓も撤去することになるので、その際の閉眼供養という法要のお布施も必要になります。
まとめ
現代では宗教、信仰の自由が保障され、同時に無宗派の人も非常に増えていますが、しかしまだまだお墓を持つ墓域として寺院を考えている人も多いですし、葬儀も仏式で行うことを前提にしている人も多数います。
特にお墓の場合は檀家にならないとお墓を寺院に持てない場合がまだまだ多いです。
お寺にお墓を持つことを考えている人は、今回の記事を参考にしてみてください。
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