墓地や霊園の作り方!新設許可や基準はどうなってるの?

墓地や霊園の作り方!新設許可や基準はどうなってるの?

お墓の購入を考えているけど、急に墓地や霊園がなくなったりしないか心配・・・。

墓地や霊園を決めるときに、管理している団体がちゃんとした所なのかは気になるところです。

ですが、墓地は誰でも簡単に作れるわけではありません。
墓地を造るには様々な要件をクリアし、行政の許可を受ける必要があります。

今回は、墓地や霊園がどのようにできるかを紹介していきます。

墓地の新設許可、経営許可が下りる条件

墓地を新設する場合にはどのような許可が必要になるのでしょうか。

許可を出すのは都道府県知事

まず墓地新設の許可権があるのは、都道府県知事です。
したがって墓地新設の申請は都道府県に出す必要があります。
申請を出す施設は墓地だけではなく、納骨堂、火葬場に関しても同様です。
これは「墓地、埋葬等に関する法律」、通称「墓地埋葬法」の第10条で以下のように規定されています。

第10条
墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

参考:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)

ですから寺院、宗教法人に限らず、過去の経緯で認可されている個人墓地でも、移設、拡張する場合には都道府県知事の許可が必要になります。

経営主体の条件

墓地経営は基本的に営利事業ではありません。
墓地は儲かりそうだからと言って、飲食チェーンなどの営利法人が参入する、ということは原則的に不可能です。

厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について(平成12年12月6日)」(以下、墓地経営・管理の指針)では、墓地の経営主体については「市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい場合であっても宗教法人、公益法人等に限る」としています。

したがって、現行で墓地を設置・経営できるのは以下の団体になります。

・市町村などの公共団体
・宗教法人
・公益法人

この他、経営主体には、名前だけ貸して営利企業に経営させる「名義貸し」が行われていない、などの要件も求められます。

なお、例外として以下に該当するものが墓地を管理している場合もあります。

・地域の共同体(墓地管理組合など)
・個人

上記の2つが管理するのはどんな墓地かというと、「みなし墓地」と呼ばれるものです。
みなし墓地とは、墓地埋葬法の制定前に行政の許可を受けていた墓地のことを言います。
みなし墓地には古くから地域にあった「共同墓地」や、個人で作ったお墓があります。

立地上の条件

墓地は、「墓地の設置場所について、周辺の生活環境との調和に配慮されていること」が、墓地経営・管理の指針で示されています。

「地域の実情に応じて学校、病院その他の公共施設、住宅、河川等との距離が一定程度以上あること等を求めることが考えられる。」とされており、実質的には住民の反感を買わないような配慮や衛生面での注意が必要になります。

具体的な距離は各自治体の条例などで定められており、100mとする場合が多いようです。

この他、条例では、「飲料水を汚染するおそれのないこと」「墓地を経営する本人が所有する土地で、抵当権などがついていない」などの条件が追加されていきます。

墓地造成の正当な理由があること

墓地新設の上で最も重視されるのが、墓地経営の理由です。
単に儲かるからという営利目的の場合は、認可は得られません。
したがって、寺院であれば檀家の利便性を拡張させるためとか、公益法人の場合は近隣に大規模な霊園がなく住民が困っているから、などの理由付けが必要です。

周辺住民の同意が得られていること

墓地だけではなく、パチンコ店、スーパーマーケットなどの新設、あるいは道路の増設には周辺住民の同意が必要です。
その対象範囲は、一般的には計画している墓地の周辺100m以内の住人です。

特に墓地は多くの参拝客が訪れる施設ですから、駐車場を完備し、供物から発生したごみの問題への対処を完璧にしておかないと、住民の同意は得られないでしょう。

なおかつ、自治体によっては近隣住民の同意の証明である同意書が必要です。

無許可で墓地を作った場合どうなる?

以上のような手続きを踏まずに、都道府県知事の許可を得ずに墓地を新設したり拡張すると刑法に違反します。
刑事罰は、6ヶ月以下の懲役または5,000円以下の罰金になります。
罰金額はわずかですが前科1犯になるので2度と墓地の新設はできないでしょう。

墓地の許可を申請する手続き

では墓地の新設はどのように申請していけばよいのでしょうか。
順を追って解説します。

事前申請を必要とする自治体も

すべての自治体ではありませんが、一部では、申請を行う前に役所の窓口で担当者に相談をすることを義務付けているところもあります。

申請地の不動産登記簿謄本を入手する

墓地を新設する時に、その土地が山林や田畑などとして登録されているとしたら、その「地目」を変更する必要があります。
地目を確認できるのは、その土地の不動産登記簿謄本なのでこれを入手しましょう。
またそこには手続きに必要な、「地番」「所有者」も明記されています。また抵当権が設定されているかどうかも確認できます。

さらに申請する土地は、墓地経営者本人が登記名義である、つまり正式な所有者である必要があります。
親の土地を墓地にしようとする場合は、まず相続手続きが必要です。

「墓地埋葬法」以外の法律に抵触していないか確認

墓地を新設する上で関係してくる法律は墓地埋葬法だけではありません。
以下のような法的な手続きも必要です。

農地転用許可

登記地目が農地つまり田畑の場合に、これを地目変更するには、都道府県の農地転用許可が必要です。
農地転用許可は農業委員会が認可するものなので、申請しましょう。
これは意外に時間がかかるので、余裕をもって行うことが大切です。

道路関係、主要河川関係

墓地は国道、県道、市道、主要河川などから一定距離があるところに設置します。

具体的な距離などは各自治体の条例を確認しましょう。

急傾斜地法関係

災害危険区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域に入っていないかどうかの確認も必要です。

隣接地所有者の同意書の取得

同意書は先ほど記載した周辺住民からだけではなく、隣接地の所有者からもとることが求められています。
具体的にどこまでが隣接地に該当するかも、条例や自治体の規則で確認します。

許可申請書の入手

ここまで書類準備と手続きが済んだら、やっと許可申請書の作成です。
まずは自治体の環境課や、市民人権課で許可申請書一式を受け取りましょう。
さらに、申請地の住宅地図を入手し、墓地予定地を中心とした半径100mの円を記入します。

許可申請書の作成・提出

許可申請書に以下の書類を添付して申請します。

・不動産登記簿謄本
・公図
・墓地設計図
・隣接地所有者の同意書
・周辺住民の同意書
・他法に係る承諾書

現地調査

許可申請書を受けると自治体が現地調査します。これには申請者または代理人が立ち会う必要があります。

許可書の発行、墓地の新設

ここまで問題がなければ、申請をして20日前後で許可証が発行されます。

墓地の経営許可にまつわる判例

墓地の新設は個人が行う場合でも、自治体が行う場合でも、周辺住民に大変影響を与えるものなので、申請にまつわる多くの裁判が行われています。
ここではそのうちの2例をご紹介します。

墓地経営許可処分取消請求事件

これは、墓地の経営許可を個人の利益の損失を理由に取り消すことはできない、ということを示した判例で、2000年12月に最高裁で判決が出ました。

内容は大阪府が許可した墓地の周辺300mの範囲に住む住民が、その許可の取り消しを求めたものです。

判決は、墓地の設立は周辺住民の、雰囲気が悪くなる、環境が悪化する、地価が下がるなどの個別的利益によって、その許可を取り消すことはできない、というものでした。

墓地経営許可処分取消請求控訴事件

これは、上とは逆に、墓地の建設に関して周辺住民には精神的な苦痛があるということ認めた判例で、2008年5月に福岡高等裁判所で判決が出されました。

この内容は、上と同じく住民が近隣に墓地ができることをに関して精神的な苦痛があるとして撤回を求めた裁判でしたが、結論的にその訴えは棄却されました。

ただしその判決文の中で、「墓地の建設は公共の利益を保護するために行われるが、墓地や火葬場といった嫌忌施設が自らの居住する住宅の周辺に設置されることで、周辺住民には相応の精神的苦痛があり、また周辺の地価が下落するような経済的な損失もある」ということを認めたことで、画期的な判決とされています。

個人墓地を新たに作ることはできるか

みなし墓地として個人の墓地はありますが、新たに作ることはどうでしょう。
例えば、自宅の庭先にお墓を作ることはできるのでしょうか。

個人墓地とは?

個人墓地とは別名「自宅墓地」とも言い、寺院、自治体、許可を得た法人が所有する霊園ではなく、個人が所有する土地にお墓を建てる場所のことです。
そういう言葉が存在しているのですから、個人墓地を建設することは可能なような気がしますが、実際にはどうなのでしょうか。

個人墓地は基本はNG!ただし例外的な自治体も

墓地を作るということはその墓地の経営主体になることです。
経営主体については墓地経営・管理の指針で、地方公共団体、宗教法人、公益法人に限られているというのは先述の通りです。
これに則すれば、個人で墓地を運営すること、墓地を所有すること、墓地を立てることはNGだということです。

ただし自治体によっては、例外的に個人墓地の建立を認めているところもあります。それは以下の自治体です。

・岡山県津山市
・広島県広島市
・高知県安芸市

例えば、この中で津山市が定めている、墓地の設置条件は以下のようになります。

・付近に利用できる公共墓地がないこと
・下記のアからエのいずれかに該当すること
・ア 災害又は公共事業のために墓地を移転するとき
・イ 自己又は親族のために、自己又は親族の既設墓地に隣接して設置するとき
・ウ 自己又は親族のために設置する場合で、近接して多数の墳墓があり、支障がないと認められるとき
・エ 自己又は親族のために設置する場合で、新設しようとする場所が山間地その他交通の著しく不便な場所にあり、やむを得ないと認めるとき

参考:津山市 個人墓地を設置しようとされる方へ

よほどやむを得ない事情があって、自分で墓地を建立するしか方法がない場合だけ例外的に認める、というスタンスです。
これはほかの自治体でも同様です。

したがって結論としては、「個人墓地を許可している自治体」で「個人墓地を作ることでしか対処できない」場合に限って、個人墓地を新設することができます。

みなし墓地は行政の許可を受けている?

日本にある墓地は全て都道府県知事の許可を得て解説しているということが原則です。

ただし、みなし墓地は少し事情が異なります。

みなし墓地とは、墓地埋葬法が制定された1948年以前から、行政の許可を受けて経営されていた墓地のことを言います。

墓地埋葬法の第26条で「この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。」と規定されているため、「みなし墓地」と呼ばれるようになりました。

ですが、現実にみなし墓地と呼ばれるものは、地域で自然発生的にできた「共同墓地」が多く、法律の施行前に行政の許可を受けているのか、そもそも管理者は誰なのかということすら分からないものもあります。

みなし墓地として許可を受けているかを調べる方法

自分の墓地がみなし墓地としても認められていない場合は、法的にはその墓地には新たに遺骨を埋葬できません。
したがって、不安がある場合は、自分の墓地がみなし墓地として認可されているかどうかを確認する必要があります。

その方法は市区町村にある墓地台帳を確認することです。墓地台帳とは、自治体が経営許可を出した墓地や納骨堂などの記録です。
ここに記録が残っていれば、その墓地は1948年以前からあるものでも、みなし墓地だといえるのです。

逆に記録されていなければ、それは無許可の墓地なので、その墓地に埋葬すると墓地埋葬法違反になります。

無許可墓地からの改葬は可能?

墓地埋葬法の施工前に行政の許可を受けていなかった墓地は、「無許可墓地」と呼ばれます。
上で書いたように、無許可の墓地へ新たに埋葬することは基本的にはできません。

しかし問題は、その無許可墓地にすでに両親などが埋葬されていて、その遺骨を新たに作った墓地に改葬する場合、それは可能かということです。

その場合は、自治体の役所で相談しましょう。
現実問題として墓地の使用者はその墓地の許可が下りているかには関与にしようがない、という観点から許可が下りることがあります。

ただし、改葬先がまた同じく無許可墓地の場合はそれは許されません。
あくまで改葬先は正しく許可を受けた墓地であることが条件です。

まとめ

墓地や霊園ができるまでの手順や条件について説明してきました。

墓地や霊園の新設には厳しい条件と煩雑な手続きを踏んだ上、都道府県知事に許可をもらわなければならないため、簡単に墓地を造るということはできません。
なお、墓地や霊園の廃止に関しても許可が必要になるため、絶対とは言わないまでも、簡単になくなることもありません。

また、個人墓地については、かなり特殊な条件がそろわないと作ることができません。
ただし、遺骨をパウダー状に砕いて、庭に散骨することは、条例での制約がなければ可能です。

みなし墓地の場合は経営主体がはっきりとしていないこともありますが、役所で土地台帳を見せてもらえば管理者が分かることがあります。

墓地や霊園は、ある程度厳しい審査を受けて作られているものと思えば、お墓選びも安心してできるかもしれません。