墓地の選び方―「宗教不問」と「宗旨宗派不問」

墓地の選び方―「宗教不問」と「宗旨宗派不問」

墓地・霊園のチラシやホームページを見ると、「宗教不問(宗教自由)」や「宗旨宗派不問」という言葉が目に入るようになると思います。「過去の宗旨は不問」というような表現もあります。

何となく「どんな宗教でもいい」という意味なんだろうなとはわかっても、実際にお墓を選ぶときにどう影響するのか気にならないでしょうか。

一見似ているような「宗教不問」と「宗旨宗派不問」でも意味が違います。特に注意しなければならないのは「宗旨宗派不問」。霊園によって意味する内容が違っていることがあるのです。

「宗教不問(宗教自由)」の霊園は制限がない

「宗教不問」あるいは「宗教自由」という霊園は、宗教についての制限がまったくありません。仏教・神道・キリスト教はもちろん、その他の宗教や無宗教の人でも使用することができます。

すべての公営霊園は信教の自由の原則から宗教自由となっています。また、民営霊園も大半は宗教自由となっています。

「宗旨・宗派不問」とは?

「宗旨」を辞書で調べると「一つの宗教の中の流派。宗門。宗派」となっていますが、「宗旨・宗派」という場合には「天台宗」「真言宗」「浄土真宗」といった仏教の宗派の大きな枠組みの意味で使うのが一般的です。

「宗派」は「真言宗智山派」「浄土真宗本願寺派」といった、宗旨の中の宗派を指します。「宗派」の「宗」を宗旨の意味で、「派」を「宗派」の意味に解釈することもあります。

「宗旨・宗派不問」という場合、本来は仏教であればどの宗派であってもよいという意味でつかわれます。しかし、実際には霊園によって異なる意味でつかわれていることがあるので注意が必要です。

「宗教不問」の意味で使われている場合

「宗教不問」の意味で「宗旨・宗派不問」と表記しているケースがあります。

「宗旨宗派不問」ただし在来仏教に限る

「宗旨宗派不問」と表記されている場合、仏教であれば使用可能という意味になりますが、在来仏教に限定されているところが多いようです。「在来仏教に限る」と表記されていることもあります。

在来仏教というのは江戸時代以前から続いている宗派のことで、「天台宗」「真言宗」「浄土宗」「浄土真宗」「時宗」「融通念仏宗」「臨済宗」「曹洞宗」「黄檗宗」「日蓮宗」「律宗」「法相宗」「華厳宗」の十三宗を指します。

「在来仏教に限る」と明記されている場合、上記13の宗旨であれば自由に使用できますが、それ以外の宗派・教団については仏教であっても使用できません。ただし、神道のお墓については許可している場合があります。

過去の宗教(宗旨宗派)は問わない

寺院墓地で「過去の宗旨・宗派(宗教)は不問」と表記しているところがあります。これは、「過去の宗旨・宗派(あるいは宗教)は問わないが、お墓を建てた後はそのお寺の宗旨に従って法要や供養を行う」という意味です。事実上、以前の宗旨から改宗するということになります。

同じ寺院が経営主体となっている墓地・霊園でも、民営霊園は公益事業、寺院墓地は宗教活動として行われています。

宗教法人法で、宗教活動は「宗教の教義を広める」「儀式行事を行う」「信者を教化育成する」と規定されており、その一環として寺院墓地があります。寺院墓地を宗旨・宗派不問にすると、宗教法人法上の宗教活動から逸脱することになります。そのため、基本的に宗旨自由の寺院墓地はないのです。

寺院墓地で「宗旨・宗派自由」を謳っている場合、「過去の」という表記がなくても、お墓を建ててからはそのお寺の宗旨に則って法要や供養を行うことを求められていると考えて間違いないでしょう。

改宗不要でも注意が必要

お寺の境内墓地の一画を民営霊園としている場合、「宗旨宗派不問」かつ改宗不要であっても、法要などに制限が設けられていることがあるので注意が必要です。

よくあるのは、改宗不要で、他寺院の檀家であってもよいが、墓地内での法要については管理している寺院で行うというものです。

以上のような内容は、チラシなどを見ただけでは区別できないことが多いので、墓地を購入する前にきちんと確認しておくことが大切です。