墓前法要・墓前供養とは?事前準備と法要の流れ・進め方

墓前法要・墓前供養とは?事前準備と法要の流れ・進め方

墓前法要、墓前供養という言葉は聞いたことがありませんか。
特に最近家族が亡くなった場合、初七日や四十九日など大規模な法要を行うことも多いでしょう。

その際には墓前法要、墓前供養なのかそうではないのか、ということが大きなポイントになってきます。
そこでここでは墓前法要、墓前供養とは何なのか、詳しく解説していきます。

墓前法要、墓前供養とは

まず単刀直入に、墓前法要、墓前供養とは何を指すのでしょうか。

墓前法要、墓前供養とはどういう法事?

墓前とは言葉の通り「お墓の前」のことです。
したがって、墓前法要、墓前供養とは、お墓の前で執り行われる法要のことです。

なぜあえて「墓前」ということを強調するかと言うと、この墓前供養に対する法要の仕方として、寺院の本堂など室内で行う「室内法要」というものがあるからです。
法要の種類によって、墓前法要、墓前供養の場合と室内法要の場合があるため、区別するためにあえて墓前と言っているわけです。

墓前法要の場合は、室内法要などに比べて、法要内容が簡便化されていることが多いです。
これは別に仏教の教義によってそうなっているのではなく、墓前法要の場合は室内法要のように参列者が椅子に座って供養することができないため、参列者の負担にならないように簡便化してきた、と言うのが実際の理由です。

したがって、具体的な内容として、墓前法要の場合は僧侶の読経のあと、参列者が焼香をするということが一般的です。

49日?一周忌?墓前法要はいつ行う

結論から言えば、墓前法要のタイミングは四十九日、一周忌のどちらにもなり得ます。

具体的に墓前法要で行われる法要の種類は、「開眼供養」「閉眼供養」です。

開眼供養とは、お墓を単なる石から魂の依り代とするための儀式で、納骨する際に行われます。
逆に閉眼供養とはお墓を霊魂の依り代から単なる石に戻すための儀式で、墓じまいやリフォームなどでお墓を解体するときに行います。

納骨は四十九日法要に行われることが多いですが、新規にお墓を建てる場合は工事が四十九日に間に合わないことがほとんどです。
そのため、一周忌とあわせて納骨することも少なくありません。

したがって、墓前法要は四十九日または一周忌どちらのタイミングにもなり得ます。

この他、閉眼供養をするタイミングは何らかの事情でお墓を解体するときになるので、一概に決まった時期はありません。

墓前法要に必要な準備

では墓前法要、墓前供養の際にはどのようなものを準備すればよいのでしょうか。

お供えはどうする?

墓前供養、墓前供養の際に用意するのは基本的に以下の通りです。

香とは線香のことです。線香の香りのよい煙は、場を浄化してくれ、さらにその煙自体があの世における故人の食べ物になるとされています。
またお参りをする遺族の心を穏やかにし、その心身を浄化してくれる、という効果もあります。

ですから安価であまり香りがしない線香よりも、少し値が張っても良いものを少量購入し、少しの量でよい香りを焚いたほうが本来の香の主旨に沿うでしょう。

最近は、家庭で仏壇に供える線香は部屋に充満しないように、煙が少なく、香りもあまり強くないものが販売されています。
しかしこの線香をそのまま墓前法要、墓前供養に流用することは、以上のような理由からあまりおすすめできません。

ですから墓前法要、墓前供養に持参する際には、家で用いている線香ではなく、先ほど挙げた香りが良いという条件にあったものを購入しましょう。

線香はロウソクやライターで火を灯し、線香が燃えたら、手のひらであおいでその火を消します。
息を吹きかけて消してしまうと、生きている人の持っている不浄な空気がせっかく浄化するために焚かれている線香の効果を減じてしまうため、ふさわしくありません。
火が消えたら、故人を供養する気持ちとともに、墓前に供えましょう。

お線香は、束のまま供える場合と、数本ずつの場合があります。
宗派によっても本数が細かく決まっていることもあります。
さらに地域や宗派、あるいは寺院によっては線香の供え方自体に特別な作法がある場合もあり得ます。
ですから法要前に念のため、寺院に線香の供え方に作法があるかどうかを確認しておいた方が安心です。

花はその美しさによって故人の心を慰めるという効果のほかに、線香の煙と同様、その花の香り自体が供養になるとされています。

また特に墓前の花は依り代となって、故人の霊魂を宿らせるという考えもあります。
さらに美しく新鮮な花は、花のよう清らかな心でいることを説いた、仏教の教義にも則しています。

どのような花がいいかと言うと、花屋やスーパーに行くと、「仏花」と表示された花束が販売されているので、それを購入することが無難です。
しかし故人を供養する、という原則論から言えば、遺族の気持ちさえこもっていれば、どのような花でも墓前に供えられる資格があります。特に故人の住んでいた家の庭に咲いている花や、故人の好きだった花などを供えることは、故人の供養としては大変ふさわしいでしょう。

しかしそのような特別な思いがない場合は、基本的な花の選択のルールがあります。
まず、派手な色のもの、棘や毒のあるものは極力避けます。
また、造花などもできれば避けた方が良いでしょう。

花ができるだけもったほうが良いので、新しくて強い花を選びます。
そのような花でない場合は、墓前法要、墓前供養が済んだ段階で、花を撤去して持って帰るということをしても良いでしょう。

ただし供えた花をすぐに下げてしまうということが忍びない場合は、造花を用いるということも絶対的なタブーだということはありません。
遺族の思いや意図が入っているうえで造花を供えるのであれば、それはそれでOKです。
とはいえ、造花は生花よりは長持ちするものの、放置しておくと紫外線や雨によって退色したりするので、次回のお墓参りの際に交換できるようにしましょう。

灯燭

灯燭とはロウソクなどで灯した明かりのことです。
灯燭は暗い闇を照らし、お参りする人の心の中にある煩悩や欲を取り払ってくれる効果があるとされています。

かつては、お墓の前に灯篭があって、灯燭はそこに供えればよかったのですが、墓域が狭くなる傾向から灯篭のあるお墓は減ってきました。
現代ではほとんど、灯燭はロウソクで用意します。
またロウソクを立てる場所がないお墓の場合は、小さめの灰皿など耐熱性を用意してそこに立てましょう。
あるいはお墓用のロウソク立ても大きめの100均などでは販売されていますから、それを用意してもOKです。

いずれにしても墓石に直接ロウソクを立てることはおすすめできません。
なぜならお墓にロウを直接垂らしてしまうと、墓石にシミができてしまい、洗浄しても取れなくなるからです。

また最近では一般的な棒状のロウソクではなく、飲み物や食べ物などの形をリアルに再現したものも出ています。
このようなロウソクを用いることはNGではありませんから、故人が好きだったものに関係するような形状のロウソクがあれば、あえてそれを選択して供えてもよいでしょう。

墓前法要、墓前供養が済んだら、ロウソクの炎は必ず消しましょう。
消し方は線香についた火と同様に、息を吹きかけるのではなく、手であおぐことがマナーです。

浄水

故人の霊魂はきれいな水を好みます。
ですから新鮮な水を供えること自体、供養になります。
お墓には、前部に水鉢という水を入れるためのくぼんだ部分があるので、そこに水を張りましょう。
またその水の表面に故人が姿を現すとも言われています。

水は墓地や霊園には水場が用意されているので、そこで汲んで供えればOKです。
しかしもっときれいな水を供えてあげたい、という場合は、自宅からペットボトルや水筒で持参しても良いでしょう。
ただし、水場の水を使う場合も、お墓を掃除する水とは別の桶に入れたものを供えるのが基本です。
また水鉢には雨水がたまっていたり、苔が生えていたりするので、墓石の掃除の際にきれいにしたうえで、浄水を供えましょう。

飲食

飲食は「おんじき」と読みます。
これもその文字面の通り、お墓の前に食べ物を供えることです。
ただし先ほど書いたように、故人の霊魂の食べ物は線香の煙や花の香なので、この食べ物は故人が食するというためのものではなく、どちらかと言うと遺族が無事に毎日食事を取れていることを故人や先祖に感謝する意図の方が大きいです。

しかし、故人が食べるものではないにしても、供えるものは故人が好きだった食べ物や飲み物の方が良いでしょう。
墓前法要、墓前供養でよく供えられるのは、果物や菓子、お酒やジュースなどです。
お墓に供える際には食べ物は直接墓石に置かず、半紙や懐紙の上に置きましょう。

またかつては墓前の供えた食べ物は飢えている人への施しになるとされ、持ち帰らないことが一般的でした。
しかし現代では食べ物をそのままにしておくとカラスなどのエサになったり、腐ってかえって供養の妨げになったり、缶が錆びて墓石を傷める原因となったりするので、墓前法要、墓前供養が終わった段階で下げて持って帰るほうが良いでしょう。

また供えた飲食をその場で遺族が食べることは、故人への供養になります。ですから墓前法要、墓前供養終了後に遺族で食べることもおすすめです。

お布施はいくら必要?

墓前法要、墓前供養の際には僧侶に読経をお願いしますから、そのお礼としてのお布施が必要になります。

その相場は、寺格や地方によっても異なりますが、一般的には3万円~5万円です。

誰に案内を出す?

墓前法要、墓前供養を行う際には、参列してほしい人にハガキや封書で案内を出すことがマナーです。
どの範囲の人にまで出すのかは、法要の種類によります。

四十九日や一周忌など故人の供養の上で位置づけが大きな法要の場合は、親族だけではなく、故人の知人友人にも案内を出します。

それ以外の三回忌などの法要であれば親族までで良いでしょう。

さらにお盆やお彼岸などの場合は、家族だけで営むことが一般的です。

司会は誰がする?

墓前法要、墓前供養の司会は誰がしてもかまいません。
大規模な法要で葬儀社などが入っている場合は葬儀社の担当者が司会をしてくれるでしょう。

それ以外の場合は、親族から適切な人が司会をすればOKです。

あるいはあえて司会を立てなくても、立ち会った僧侶が、焼香などを促してくれるので、それで大丈夫な場合も多いです。

墓前法要の流れは?お墓でお経をあげるもの?

では墓前法要、墓前供養の流れはどのようなものなのでしょうか。

事前準備

まず法要前に事前準備をしましょう。

具体的には法要の当日までにお墓を掃除することです。
基本は家族で行いますが、シミなどがついている場合は、専門業者に依頼しましょう。

そして寺院に依頼をして卒塔婆を立てます。
卒塔婆は故人の冥福を祈るためのものであり、同時に立てた人が善行を積むことになるので、できるだけ立てたほうが良いでしょう。

また古い卒塔婆がある場合は、霊園管理者に依頼して処分してもらいます。
自分で焼却することは法律で規制されているので避けましょう。

また法要が始まる前に、先ほど挙げたお供え物を墓前に供えます。

当日の流れ

当日の流れは最初に司会から挨拶があり、その後に僧侶が入場します。

僧侶が読経をしてくれるので、それがそれが終わったら司会または僧侶の案内で、参列者が焼香をします。
焼香の順番は故人とかかわりが深かった人から、ということになります。

焼香が済んだら僧侶から簡単な法話があり、その後僧侶は退場します。
僧侶が退場した後は、遺族や知人友人が思い思いにお墓参りをします。

最近は減ってきていますが、四十九日や一周忌など重要な法要の後には、参列者を招いた会食を行うのが一般的です。場所は霊園や寺院の会場でもよいですし、近隣の料理店でも良いでしょう。

墓前法要の日が雨だったらどうする?

墓前法要、墓前供養の最大の難関は当時の天候です。特に雨が降ってしまった場合などは、屋外で法要を行うのは大変です。

しかしほかの行事のように、雨だからと言って実施の場所を屋内に移す、などのことは墓前法要、墓前供養の場合は行いません。
基本は各自、傘をさして参列します。
また僧侶には誰か親族が傘をさしかけましょう。

墓前法要、墓前供養は基本的に参列者は立って臨むことになりますが、特に雨で気温が下がってきた場合、高齢などが理由で足腰の弱い人の場合、負担が大きいでしょう。

そのような場合は、簡易な椅子を霊園などから借りて、その人だけ座って参列してもOKです。

まとめ

墓前法要、墓前供養の内容が良くおわかりいただけたのではないでしょうか。
もしも実施する場合は、以上の解説を参考に滞りなく準備をしましょう。