納骨堂にまつわるトラブルは何がある?使用期限に要注意


墓地の区画を入手し墓石を建てることには、初期費用も維持費も多額にかかります。
そのような費用を出すことを避けるために、最近は納骨堂へ遺骨を納め、祀っていく人が増えて来ました。
しかし納骨堂には納骨堂のトラブルがあります。
今回の記事では、納骨堂を利用するうえでよく起こるトラブルには何があるか、そしてトラブルを防ぐにはどうしたらよいのかという点について解説していきます。
なお、納骨堂全般については、『納骨堂とは?』で解説しています。
目次
納骨堂とは何か
納骨堂は、個人でも夫婦でも、あるいは一族でも遺骨を納めることができる様々な「納骨スペース」の総称です。
基本は室内で、遺骨を土に埋葬せず、骨壺のまま納めます。
納骨堂は近年できたものではなく、実は昔から存在しています。
しかしその頃は墓を建立するまでの仮の遺骨収納スペースの役割しかありませんでした。
ところが最近では墓の代わりに納骨堂を利用する人が増えたことで、納骨堂が注目されているのです。
納骨堂は墓石のお墓とは違う
広い意味で納骨する場所としては、一般的なお墓も納骨堂も同じ仲間です。
納骨堂の大きな特徴は、屋内にあること、そして「永代供養」がついていることです。
永代供養とは、お墓の承継者がいなくなった後もお寺などの管理者が供養を続けてくれることを言います。
永代供養の場合は遺骨を個別で安置する期間を定めているところが多く、三十三回忌や五十回忌を機に合祀墓で他の一緒に祀られます。
費用も墓と納骨堂は大きく異なります。
建墓費用には、墓石代、工事費用、永代使用料、維持管理料などが入り総額で150万円~300万円かかります。
納骨堂は、墓石代や工事費が不要なので、安ければ50万円程度の費用で済みます。
納骨堂の種類には何がある?
納骨堂は納骨スペースの総称で、その収納方法別にいろいろな種類があります。
・棚式
棚式の納骨堂とは、その名の通り壁面やパテーションに棚を作って骨壺を納める方式です。
かつての納骨堂と言えば、ほぼすべてこの形でした。
・ロッカー式
ロッカー式とは、壁面が棚の代わりにコインロッカーのような個別の納骨スペースになっているものです。
鍵付きの扉があり、盗骨などの心配がありません。
・仏壇式
仏壇式とは、個々の納骨スペースが仏壇のようになっているものです。上段に位牌、下段に骨壺を納めます。
仏壇と同様に焼香具、花立て、ロウソク立てが置けるので、通常の墓参と同じようにお参りができます。
・自動搬送式(マンション型)
機械式とは、遺骨はいつもは奥の収蔵庫に収納されていて、タッチパネルなどを操作すると、奥から墓参スペースまで骨壺が移動されてくるものです。
・位牌式
位牌式とは、大きめの位牌の中に収骨スペースがあり、そこに納骨していくものです。1人に1つの位牌を使います。
納骨堂のメリットは
このような納骨堂が増えている理由はそこに以下のようなメリットなどがあるからです。
跡継ぎがいなくてもいい
1つは、跡継ぎのいない人や夫婦、家族でも利用できるという点です。
ほとんどの場合で納骨堂には永代供養がついているので、極端に言えば、納骨以降全く縁故者がお参りに来なかったとしても、お墓が荒廃するようなことにはなりません。
家族代々でも利用できる
納骨堂の中でも自動搬送式や仏壇式の場合は、お墓が承継できることが多いです。
跡継ぎはいるけど屋内のお墓が良いので納骨堂を選ぶという人もいます。
家族用の納骨堂であれば、8体前後納骨できます。
ただし、お墓を使い続けるには一般のお墓同様、毎年管理料を払い続ける必要があります。
お墓と比べて費用がかからない。
2つめは、一般的なお墓を建てるよりも費用が掛からないという点があります。
日本人の祖先に対する価値観や葬送に対する価値観が変化し、多額の費用を人の死に関してかけなくなってきました。
一般的なお墓を建てる場合は150-300万円が相場とされますが、納骨堂はタイプを選べばこれより断然安く購入できます。
例えば、1人で利用する位牌式であれば安いもので10万円程度、家族で利用できるロッカー式や自動搬送式でも、70-90万円程度で購入できます。
管理の手間がかからない
墓を維持していくことは費用も大変ですが、それ以上に草むしりや墓石清掃などの作業の手間もかかります。
対して、納骨堂の清掃管理などは全て管理者が行うため、お墓の掃除を自分たちでする必要がありません。
また、屋内にあるので、風雨によってお墓が傷むということもありません。
天候に関わらず墓参できる
納骨堂は室内にあるので、天候や気候に左右されず墓参ができ、非常に便利です。
また、自動搬送式などの新しくできた納骨堂ではエレベータやバリアフリー設計が採用されており、快適にお参りできます。
交通アクセスが良い
墓の中には交通アクセスの悪い場所にあるところも多いです。
それは特に高齢化した遺族にとって、墓参の障害になります。
その点ほとんどの納骨堂は、都心で最寄り駅から徒歩圏など交通アクセスのよい場合にあるので、気軽にお墓参りができます。
場所によってはどのような宗派でも納骨が可能
お寺の中にある納骨堂でも、一般のお墓に比べて宗教を問わないところが多いです。
今までは家族の中で1人だけ違う宗派に帰依していると、一緒の墓に埋葬できませんでしたが、納骨堂であればそのようなことはありません。
また、埋蔵される人の範囲を定めていない場合もあり、友達同士などで利用することもできます。
納骨堂の管理者とのトラブル
納骨堂にはメリットもたくさんありますが、良く確認しないで契約すると後々にトラブルになってしまうこともあります。
まずは納骨堂の管理者側と利用者の間のトラブルについて触れましょう。
使用期限を把握していなかった
先ほど書いたように、一般的なお墓は1度建てれば、跡継ぎがいる限り使用し続けることができます。
しかし納骨堂には三十三回忌または五十回忌などの、スペースの使用期限があります。
この期限を過ぎると遺骨は合祀墓に移動されてしまいます。
跡継ぎはいないけど他の遺骨と一緒になるのが嫌だから納骨堂を考えているという人は、十分留意しましょう。
また、使用期限についても、その期限は契約してからなのか、最初の納骨からなのか、最後の納骨からなのかによって実際に使える長さが違います。
例えば期限が契約時から50年の納骨堂を3世代で使おうとすると、最後の代が納骨堂を使うときには使用期限が切れてしまっていることも考えられます。
安置スペースの使用期限や合祀については事前に把握しておきましょう。
あとで改葬ができなかった
ほとんどの場合、納骨堂を利用しても遺骨はいずれ合祀墓に移動されます。
また、場所によっては最初から納骨堂内の合祀墓に遺骨を埋葬するプランを提供している場合もあります。
遺骨はひとたび合祀墓に入ってしまうと、その後個別に取り出すことは二度とできません。
引越しなどの都合でお墓を近くに移す可能性がある場合は、どのタイミングで合祀になるのかは十分注意しましょう。
建物が老朽化したのに修繕してくれない
納骨堂は建物内にあるので、通常のビルなどと同様に老朽化します。
老朽化した場合は建て替えや修繕が必要ですが、管理者側がそれを怠るケースもあります。
特に自動搬送式の場合は機械で遺骨の出し入れをするので、メンテナンスが非常に重要になってきます。
納骨堂を選ぶときは実際に現地に行って、手入れが行き届いているかどうかを確認しましょう。
お供えができなかった
墓参時には故人の好きだったものを供えたいという人が多いでしょう。
仏壇式や自動搬送式の場合はお供えをするスペースが設けられていますが、棚式や位牌式の場合は個別にお供えをするのは難しいでしょう。
ロッカー式の場合、お供えができるかどうかは場所によって変わってきます。
また、納骨堂は屋内のお墓なので、基本的に火気を使えません。つまり、ろうそくとお線香をあげることはできません。
場所によっては電気香炉が用意されており、焼香でお香を供えることができます。
違う宗派の家族を一緒に埋葬できなかった
納骨堂は宗教不問の場合が多いですが、お寺によっては宗派を限定しているところもあります。
また、宗教不問で誰でも利用できるといっても、お寺がしてくれる供養は当然そこのお寺が信仰する宗派に則って行われます。
仮にお寺側が宗教を問わなかったとしても、利用者家族の中に違う宗派のお経をあげられることに抵抗がある人がいると、利用できません。
お参りの時間が限定されていた
納骨堂は建物の中にあるので、24時間墓参ができるとは限りません。
管理者が開館している時だけ墓参が可能です。
したがって、早朝など自分の都合に合わせた時間での墓参ができないことも多いのです。
また機械式の納骨堂は墓参スペースが限られているため、お盆やお彼岸などの混雑する時期には、順番待ちをしなければならないことも多いです。
家族や親族とのトラブル
次に納骨堂を選択したことによる、本人と家族あるいは親族とのトラブルです。
お墓参りの実感が湧きにくい
墓参には花、線香、お供え物が必須という価値観は依然としてあります。
しかし納骨堂によってはすべてを実行できません。
墓参に対して制限がある点について、墓参の実感を持ちにくい、という不満を感じる家族や親族がいても不思議ではありません。
生前契約したことが親族に伝わっていなかった
納骨堂は跡継ぎがいない人が多く利用するため、生前契約を受け付けているところがほとんどです。
しかし、せっかく生前契約をしても、残された親族にそれが伝わっていなければ、納骨してくれる人がいません。
生前契約でお墓を購入した場合は、口頭やエンディングノートに記載して親族に契約したお墓がどこなのかを伝わるようにしましょう。
他には、信頼できる知人や、弁護士や司法書士などの法律の専門家と死後事務委任契約を結んでおくのも対策になります。
跡継ぎなのに勝手に墓じまいをしてしまう
現在墓を所有していて、それとは別に納骨堂を契約した場合、今の墓はいずれ墓じまいという形で処分しなければなりません。
しかし墓じまいは過去の先祖の遺骨も処分してしまうことなので、親族の同意がないとなかなか難しいのです。
勝手に墓じまいしてしまうと、親族間で大きなトラブルになります。
納骨堂建設の反対運動
納骨堂は墓地とは違って都心部に建設されることが多いという特徴があります。
商業区域であればさほどのトラブルは発生しませんが、住宅地域に納骨堂を建設してしまうと、近隣住民との間でトラブルが発生することもあり得ます。
実際に大阪で起こった訴訟の例をご紹介します。
それは2017年2月に大阪府門真市が建設を許可した納骨堂に対して、近隣住民が許可取り消しを求めて提訴したケースです。
提訴は大阪市の住宅地で起こったことで、内容は計画されているビル型納骨堂が市の建築基準を満たしていないとして住民が市の経営許可処分の取り消しを求めたものです。
この納骨堂は宗教法人「宝蔵寺」が運営するもので、大阪市淀川区西中島の605平方メートルの敷地に、鉄筋コンクリート6階建ての納骨堂を建設しようとしたものです。
構造は機械式で、計画では6千人分の納骨が可能な大規模なものです。本来の納骨堂に建設基準は「墓地埋葬法」によって「申請地から300メートル以内に学校、病院、人家がないこと」を前提に自治体が許可することになっていますが、この規定以外に付近の生活環境を著しく損なう恐れがないこと、というものもあります。
この納骨堂に関しては、建設地が住宅地の中にあって土地のイメージが悪化する、多くの参拝者が訪れることで交通渋滞が発生し生活に支障が出る、という点で「付近の生活環境を著しく損なう」ことに抵触すると訴えられたものです。
この件の結論は今のところ出ていませんが、同様のトラブルは全国的に今後も発生する可能性があります。
まとめ
墓の維持管理が工数的にも費用的にも負担になるという考えや、葬送関連費用に多額のお金を使いたくないという価値観が広がることによって、従来の墓から納骨堂を選択する人が増えています。
以上で解説したように、納骨堂にはメリットも多々ありますが、しかしトラブルになり得るデメリットもあります。
もし納骨堂への遺骨収納を考えているのであれば、この解説を参考にしっかり検討しましょう。
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