お墓の基礎知識:お墓の種類や墓地・墓石も解説

一生のうちにお墓を何回も買うということは、そうありません。お墓を探している多くの方は、初めての経験をしているはずです。
しかしながら、お墓の業界では専門用語なども多く、よく分からないことがたくさんあります。
まして、昨今では、墓石のお墓以外にも多様な形のお墓が登場しており、その全体像を把握することは難儀です。
今回の記事では、初めてお墓を探す方のために、お墓の全体的な基礎知識をご紹介します。
皆様のお墓選びの一助となれば幸いです。
目次
お墓はいる?いらない?

これまで一般的だった、お墓といえば墓石を建てて代々引き継いでいくものが一般的でした。
しかしながら、このスタイルのお墓が広まっていったのは明治以降と言われており、それまでは個人や夫婦単位での埋葬が一般的でした。
現代では、また別な形で、代々引き継ぐことを想定しない様々なお墓が広まっています。
お墓とは何でしょうか?お墓は必要なのでしょうか?
お墓とは
この記事では、次の辞書の説明を参照し、お墓とは「遺体や遺骨を葬ってある所、またはその上に建てられた墓標」を指すものとします。
したがって、墓石を建てないお墓、例えば合葬墓などについても、「お墓」として扱います。
遺体や遺骨を葬ってある所。つか。おくつき。また、その上に立った墓碑・墓石。
参考:学研 現代新国語辞典,2004 「墓」
お墓の役割
お墓の役割はさまざまですが、大きく、「遺体や遺骨を葬る場所」という物理的な役割と、「故人との繋がりを感じられる場所」という精神的な役割があります。
お墓は遺体や遺骨を葬る場所
お墓は、遺体や遺骨の最終的な行き先になります。
法律上、遺体や遺骨を埋葬できる場所は「墓地として都道府県知事の許可をうけた区域」に限定されます。
墓地としての許可を受けていない区域、例えば自宅の庭先などに遺体や遺骨を埋葬すると、「墓地、埋葬等に関する法律」に違反します。
参考:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
さらに、遺体や遺骨は、適切な方法で弔わなければ、刑法190条に違反します。
例えば、遺骨を遺棄したり、公共の場に放置するような場合です。
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
お墓は故人との繋がりを感じられる場所
物理的な役割だけではなく、お墓は遺された人に対しての精神的な役割もあります。
人との付き合いは、その人が亡くなって終わりではありません。
時間を経る中で故人を偲ぶと、その人に対して今までとは違う見方を持ったり、思いが変わったりすることがあります。そうすることで、故人との新しい関係性が築かれていきます。
そういった、故人とのコミュニケーションを取る場所として、お墓は拠り所になります。
墓前で近況報告をしたり決意表明をしたりするという方もいるかも知れません。
また、日本では祖先崇拝の慣習が根付いているので、お墓参りをすることでご先祖様に感謝し、我が身が今あることをありがたく感じられる、という説明がされることもあります。
お墓がないと遺骨はどうなる?
現状、国内できるお墓を持たない葬送として挙げられる方法が「散骨」です。
散骨とは、焼骨を粉状に粉砕し(粉骨)、海や山などの自然環境にまくことを言います。
散骨については法整備が進んでおらず、黙認される形で普及してきました。
こうした現状の中、令和2年度の「厚生労働科学特別研究事業『墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究』」では「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」が取りまとめられました。行政からのルールの整備が進むことで、いっそう一般的な選択肢として定着していくかもしれません。

なお、お墓を持たない供養の方法として、一定期間自宅で遺骨を管理するということもありますが、供養する本人が亡くなった時に遺骨が行き場を失うことになるので、いずれはお墓に納骨するか、散骨する必要があります。
お墓はいる?いらない?
散骨をしない限り、どんな形であれお墓は必要になります。
ただし、墓石は必ずしも建てる必要はありません。法律上で墓地として認められているところであれば、墓石を建てない合葬墓などに納骨しても構いません。
どのようなお墓を用意するべきなのかは、お墓に入る本人や家族が考え、納得できるものを選びましょう。
「永代供養墓」ってなに?

近年、従来のような墓石を建てて代々引き継ぐお墓に変わって、「永代供養墓」が人気です。
永代供養墓とは、将来にわたってお寺などの墓地管理者が故人を供養してくれるお墓です。
親族で引き継がなくてもお寺などが供養してくれるので、跡継ぎがいない方や、子どもにお墓のお世話を残したくない方、個人や夫婦だけでお墓を持ちたい方などに選ばれています。
永代供養墓に対して、従来のような墓石のお墓は、「一般墓」と呼ばれることがあります。
「永代供養」がついているお墓は「永代供養墓」なので、お墓の形式自体は様々なものが考えられます。
例えば、永代供養墓には以下のようなお墓があります。
合葬墓(合祀墓) | 樹木葬 | 納骨堂 | 永代供養付き一般墓 |
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一つの納骨室に血縁など関係なく不特定多数を納骨するお墓 | 樹木や草花を墓標とするお墓 | 屋内に遺骨を安置する施設 | 従来の墓石のお墓に永代供養がついているもの |
お墓の費用はどれくらい?
お墓にかかる費用は、お墓の種類によって大きく変わります。
種類 | 一般墓 | 合葬墓(合祀墓) | 樹木葬 | 納骨堂 | 永代供養付き一般墓 |
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初期費用 | 80万~250万円 | 3万~30万円 | 3万~150万円 | 10万~250万円 | 80万~200万円 |
年間管理費 | 3千~2万円 | 0~3千円 | 0~1万円 | 0~2万円 | 0~2万円 |
例えば墓石を建てる場合は、初期費用でおおむね80万~250万円程度がかかります。この他、年間管理費が3千~2万円程度かかります。
なお、極端な例ですが、高級な墓地や墓石でお墓を建てると、初期費用だけで1,000万円以上するということもあります。
一方、もっとも費用を抑えられる「合葬墓」では、1人あたり3万~30万円程度で供養してもらえます。
お墓にまつわる費用
お墓を購入すると、次のような費用がかかります。
なお、必ずしもすべての費用がかかるわけではありません。
お墓にかかる費用の例
- 初期費用
- 永代使用料(墓所使用料)
- 石材工事費
- 永代供養料
- 契約後にかかる費用
- 年間管理料
- 納骨手数料・彫刻料
- 墓前法要のお布施など
「永代使用料」などの見慣れない言葉もありますね。
お墓に関する費用について解説します。
初期費用
お墓にかかる初期費用には、以下のようなものがあります。
永代使用料(墓所使用料)
「永代使用料」とは、ある区画を将来にわたって使用する権利を買うための料金です。大雑把に言えば、墓地にかかる費用です。
永代使用料は、契約時に支払います。
区画内の土地そのものを購入する費用ではなく、あくまでも使用権のための費用です。
一部例外の地域を除き、区画を契約しても転売や転貸しはできない点に注意しましょう。
また、永代供養墓では、区画に使用期限が設けられていることが多くあります。
この場合、「永代」にわたっては使用できないので、区画の使用にかかる費用を「墓所使用料」などと表記することもあります。
石材工事費
石材工事費は、石材とその加工費・工事費です。大雑把に言えば、墓石にかかる費用です。
一般墓の価格表でよく見られる表記です。他に、「墓石工事代金」などの表記も見られます。
墓石を設置しないお墓にはもちろんかかりませんが、代わりに、どこかに名前を彫刻する場合は「銘板彫刻料」「プレート代」などがかかることがあります。
永代供養料
「永代供養料」とは、お寺などの墓地の管理者に、将来にわたって故人を供養してもらうための料金です。
永代供養がついているお墓にのみかかります。契約時にまとめて支払います。
永代供養墓の価格を記載する際に永代供養料と墓所使用料を分けて記載する例は少なく、多くは二つまとめた価格を「料金」「価格」などとして記載されます。
ただし、一部の納骨堂などでは代々承継するか、永代供養にするかを選択できることがあるので、この場合は別々に記載することもあります。
契約後にかかる費用
多くのお墓は、契約後にも費用がかかります。
契約後にかかる可能性のある費用は、以下のとおりです。
年間管理料
年間管理料は、区画を使用するにあたって毎年納める費用です。管理料は、墓地の清掃やメンテナンスなどにあてられます。
墓石のお墓や納骨堂なら年間3千~2万円程度、樹木葬ならおおむね年間1万円以内に収まるでしょう。
もちろん年間管理料がかからないこともあります。例えば、ほとんどの合葬墓では年間管理料がかかりません。
また、年間管理料ではなく、「年間護持会費」と表記することもあります。
もともとはお寺の檀家からなる「護持会」の会費を指す言葉なので本来の意味合いはと異なりますが、檀家にならない墓地でも「年間護持会費」と表記をすることがあります。
納骨手数料・彫刻料
お墓の形式を問わず、契約した後に追加で納骨する場合は、通常納骨(手数)料や彫刻料がかかります。
納骨料と彫刻料は、あわせて3万~10万円程度でしょう。
この他、納骨法要が必須のお墓の場合は、次に述べるお布施も用意します。
墓前法要のお布施など
直接お墓にかかる費用ではありませんが、墓前法要などを依頼するならお布施が必要です。
特に、お墓に納骨する際の「納骨法要」は必須の墓地も少なくありません。
お布施は渡す人の気持ちなので相場ということもおかしいのですが、一般的には3~5万円程度です。
お墓の種類
近年では永代供養墓を筆頭にお墓の形が多様化し、それぞれの霊園や墓地が独自の形式のお墓を作り始めています。
そういう背景から、ここですべてのお墓の種類を網羅することは難しいのですが、代表的なお墓の種類を紹介します。
お墓の種類の例
- 一般墓
- 合葬墓(合祀墓)
- 樹木葬
- 納骨堂
- 永代供養付き一般墓
- その他の永代供養墓
一般墓



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合葬墓(合祀墓)




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樹木葬




特に都市部では、一本または数本の樹木の周りに区画を並べるものが多く、さらには樹木ではなく草花を区画の周りに植えているものについても、「樹木葬」として販売されています。
都市部では、遺骨は土に還さず石室などに納めて、一定期間後に合葬墓に移動するものの方が多く見受けられます。
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納骨堂
納骨堂の中でも様々な形態があり、個人で利用する位牌式や、複数人で利用するロッカー式や仏壇式、遺骨が機械で墓前に運ばれてくる自動搬送式などがあります。
複数人で利用できる区画では、承継して利用できるものもあります。
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永代供養付き一般墓




具体的なシステムは大きく2通りで、一つは「承継が途絶えたら墓地管理者がお墓を撤去し遺骨を合祀墓に移す」、もう一つは「跡継ぎが途絶えた後もお墓を残して墓地管理者が供養を続ける」というものがあります。
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その他の永代供養墓


まずは「永代供養墓」をキーワードに調べてみるのも良いでしょう。
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墓石の種類
従来のような墓石のお墓を建てたい方は、石材の種類や墓石のデザインも悩みどころです。
墓石の種類について解説します。
石材の種類
墓石は、産地ごとに大きく次のような傾向があります。
石材の産地と大まかな傾向
- 国産石材:希少で価格が高い
- 中国産石材:産出量が多く安価
- インド産石材:高品質の割にリーズナブル
石材の価格は、主に希少性に左右されます。
必ずしも価格が高い石が丈夫で、安い石が粗悪、ということではありません。
以下に、それぞれの石材について解説します。
※石材については、『よく使われる墓石の種類30種を画像つきで解説!』で詳しく解説しています。
国産石材
名称 | 庵治石 | 本小松石 | 大島石 | 真壁石(小目) | 天山石 | 紀山石 | 青糠目石 | 浮金石 | 万成石 | 磐梯みかげ | 吹雪石 | 芝山石 |
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産地 | 香川県 | 神奈川県 | 愛媛県 | 茨城県 | 佐賀県 | 福島県 | 茨城県 | 福島県 | 岡山県 | 宮城県 | 福島県 | 福島県 |
国産石材は希少価値が高く、価格も高価な傾向があります。
石材によっては耐久性に優れているものからそうでないものまであり、高価だから必ずしも丈夫だということはありません。
しかしながら、独特の美しい風合いはやはり魅力的ですし、「国産」や産出地の愛着から、こだわりをもって国産墓石を選ぶ方は少なくありません。
国産墓石の代表といえば、香川県の「庵治石(あじいし)」です。国内再高級墓石として位置づけられ、「花崗岩のダイヤモンド」とも呼ばれています。「斑(ふ)」と呼ばれる二重のかすり模様が特徴です。
他にも、愛媛県の「大島石(おおしまいし)」や、関東では神奈川県の「本小松石(ほんこまついし)」も有名です。
また、国内の黒い墓石といえば福島県の「浮金石(うきがねいし)」で、黒の中に金を散らしたような模様が特徴的です。
中国産石材
名称 | G623 | G688 | AG98 | 北大青 | 河北山崎 | G603 | G663 |
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中国産石材の魅力は、何といっても価格です。
流通量が多いので安価に取引されており、品質も悪いわけではありません。
建墓の費用を少し抑えるために、お墓の石塔は国産墓石やインド産墓石にして、墓所の囲いにあたる「外柵」だけ中国産墓石にする、というケースもよくあります。
「G623」は非常によく使われている石材で、安価な割に品質が安定していることで人気です。
しかし、G623の採石場が閉山するという話も出ており、最近ではG623に代わる「湖南623」や「漳浦623」などの「新623」と呼ばれる石材も登場しています。
他の石材にも当てはまりますが、「G623」と「新623」などの名前や見た目がよく似ている石材でも、それらは全くの別物です。
使用実績が少ない石材はその耐久性も判然としませんので、石材店と契約する際には、保証の有無や内容も確認しましょう。
インド産石材
名称 | マハマブルー | アーバングレー | YDK | M-1H | ニューインペリアルレッド | 銀河 |
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インド産の石材は、品質が良く、供給も安定していることから国産と比較すると費用を抑えられることが特徴です。
全体に水を吸いづらい石材が多いのですが、特に「M-1H」は水をほとんど吸わない、経年劣化が少ない石材です。
見た目が独特な石材もあり、青・紫・白の流れ模様が特徴的な「マハマブルー」、赤系の「ニューインペリアルレッド」などのお墓は目を引きます。
その他の海外産石材
名称 | ブルーパール | インパラブルー | ファイングレイン | バルチックキング | ラステンバーグ |
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産地 | ノルウェー | 南アフリカ | スウェーデン | フィンランド | 南アフリカ |
この他、北欧や南アフリカ産の石材も、お墓に使われています。
墓石のデザイン
墓石のデザインには、大きく3通りあります。
墓石のデザイン3つ
- 和型墓石
- 洋型墓石
- デザイン墓石
和型墓石


石塔のサイズは、お墓の顔になる「竿石」の横幅を基準に、「寸」で表記されます。1寸が約3.03cmなので、「八寸角」なら竿石の横幅が約24.24cm、「九寸角」なら約27.27cmです。また、「10寸=1尺」なので、横幅が10寸のときは「尺角」と言います。
正面彫刻の文字は「愛」や「感謝」などの少ない文字数では格好が付きづらく、基本的には家名や「南無阿弥陀仏」などの仏前で唱える言葉が彫刻されます。
和型墓石を建てるなら、極端に小さな区画では縦長で窮屈な印象になるので、少し広めの区画がおすすめです。
洋型墓石


お墓のサイズはしばしば「号」で表記されます。「号」は「寸」と同じ大きさです。和型墓石と同様に竿石の横の長さで表記します。「18号」なら、竿石の横幅が約54.54cmのお墓です。
彫刻の自由度が高く、「愛」など一文字の言葉や、「やすらかに」などの平仮名、「Thank You」などの英語、あるいはイラストなどを彫刻しても違和感がありません。
墓所は狭くても様になりやすく、逆に広すぎると全体が横に平たくなり、和型墓石と比べるとかえって寂しい印象になってしまいます。
デザイン墓石


和型や洋型に比べると形が複雑になる傾向にあり、加工費が乗る分、費用が割高になります。
墓地の種類
墓地と言ったら、どのような場所を思い浮かべるでしょうか?
昔ながらのお寺の墓地、郊外にある公園のような墓地、近所の住宅街の中に突然現れる墓地、など、人によって思い浮かべるものは違うかもしれません。
墓地の大まかな傾向は、どこが経営、または管理しているかで分けることができます。
ここでは、墓地の経営(管理)者ごとで考える墓地の種類を紹介します。
公営墓地
自治体が運営しているので、倒産や廃寺などの心配がなく、永続性の観点ではもっとも安心できます。公営であることから墓地が特定の宗教を指定できないので、宗教も自由です。
「〇〇市に居住していること」「遺骨が手元にあること」などの申し込み要件が課されることが多く、人気の墓地では抽選で使用者を決めることもあります。誰でもいつでも契約できるわけではないので、公営墓地を検討している方は早めにリサーチしておきましょう。
費用が安いというイメージがありますが、必ずしもそうではありません。実際に面積あたりの永代使用料や年間管理費は安い傾向にありますが、同時に一区画あたりの面積が広い傾向もあるので、石材工事費なども加味すると、民営などの小さな区画で建てる方が費用を抑えられる場合もあります。
なお、都立霊園は例外で、面積あたりの永代使用料も高額です。
寺院墓地
基本的にはお寺の檀家や門徒が利用します。言い換えれば、寺院墓地を使用したい場合は、原則、檀家や門徒になることが条件になります。
檀家とは、お寺に仏事のお世話をしてもらう代わりに、お寺を経済的に支える家のことを言います。浄土真宗では「門徒」という言い方をします。具体的には、お寺は、葬儀や回忌法要、納骨法要などのお世話をします。檀家はお布施などでお礼をします。
しかしながら、最近では境内にある墓地でも宗教の制限を緩くして使用者を募るケースも見受けられます。特に永代供養墓では、寺院墓地でも宗派、または宗教を問わないものも多く探すことができます。
民営霊園
基本的には宗教を問わず利用できます。経営主体はほとんどの場合で宗教法人で、一部公益財団法人などになっている墓地もあります。
宗教色のない明るい雰囲気で整備されることが多く、郊外などでは風光明媚な景色や自然豊かな環境を売りにしていることもあります。もちろん民営霊園は都市部にも作られていますが、やはり花壇を植えたり緑地を整備したりするなど、公園風の明るい霊園が多く見受けられます。
民営霊園には「指定石材店制度」という独特の制度があります。霊園で工事ができる石材店(指定石材店)が決まっており、見学などでは指定石材店が持ち回りで案内します。一度特定の石材店に案内されると、以降その霊園では他の石材店に工事をお願いできなくなります。
石材店を選びたい方は、事前に指定石材店を調べて、石材店に問い合わせて見学の案内をしてもらいましょう。
施設やサービスが充実している傾向にあり、ドッグランやカフェなどを備えているところまであります。公営墓地や寺院墓地に比べると新しい形態なので、バリアフリーに配慮した所も見つけやすいでしょう。
共同墓地


住宅街などの生活圏内に多く、近所に住んでいれば気軽にお参りに行けます。
地域で管理する墓地なので設備などが充実しているとは言い難く、参道が舗装されていないこともままあります。
その墓地がある地区に住んでいる方のみを募集の対象にするなど、何らかの要件を設けることもあります。
個人墓地
個人墓地とは、個人が経営者になっている墓地です。
家の裏山、田畑の中などに、お墓が一つだけ、あるいは一族のお墓が数基だけまとまってあるような場合は、おそらく個人墓地です。
共同墓地と同様に、個人墓地のほとんどは墓埋法の制定以前からあったもので、現代ではごく一部の例外を除き、個人墓地を新たに作ることはできません。
今から墓地を探す方の選択肢には個人墓地が入ることは通常ありません。
一方で、個人墓地を相続する、あるいはお墓を撤去するということはありえます。
このとき、現在の個人墓地の管理者が分からなくて困るというケースがあるのですが、その場合は、自治体の役所で「墓地台帳」という書類を管理しているはずなので、そこに記載がないか問い合わせてみましょう。
墓所(区画)の種類
お墓を探していると、墓地内の墓域ごとに名前がついていることがあります。
もちろん霊園独自に命名していることもありますが、一般墓では、様々な霊園で広く使われている墓域の名称があり、そこから特徴を推測することができます。
ここでは、よく見る一般墓の区画の名称を解説します。
ゆとり墓所


小さな区画が並んでいても、窮屈さが軽減されます。
左右と前側だけに余白があるものを「三方ゆとり墓所」とするなど、バリエーションがあります。
芝生墓所


通常は、洋型のお墓を設置します。
石碑はコンパクトで、区画自体は広い傾向があります。
参道が芝生ではなく、お墓が建っている場所の地面のみ芝生、という場合でも、芝生墓所ということがあります。
テラス墓所


区画面積や墓石はコンパクトな傾向があり、相対的に費用は抑えやすくなります。
通常、地上カロートの部分は既設で、上に設置する墓石もサイズなどの規格が決まっています。
規格墓所


そこ一帯のお墓はほとんど同じ形になるので、よそのお墓より豪華であるとか、貧相であるとか、そういった優劣を気にせずに済みます。
自由墓所


自分で考えたデザインでお墓を建てたい、個性的なお墓を建てたい、という方は、自由墓所がおすすめです。
どちらかといえば、園内でも広い区画を自由墓所とするケースが多いようです。
お墓選びのポイント
お墓はどのように選べば良いのでしょうか?
お墓選びのポイントは、例えば、次のようなものがあります。
お墓選びで考えるポイント
- お墓を引き継ぐ人はいる?
- 予算はどれくらい?
- お参りしやすいアクセスやエリアは?
- お墓は誰が何人使う?
- その他お墓や墓地に求める情緒・機能
お墓を引き継ぐ人はいる?
お墓を選びでまず考えたいのは、お墓を引き継ぐ人がいるかどうかです。
お墓を引き継ぐ人がいなければ、永代供養墓にすることをおすすめします。
お墓を引き継ぐ人がいない状態で一般墓を建てると、跡継ぎが途絶える時点で、追加費用を払ってお墓を撤去し、遺骨は他の永代供養墓に移すことになります。
引き継ぐ人がいるかどうかわからないけど墓石を建てたいときは、「永代供養付一般墓」も検討すると良いでしょう。
予算はどれくらい?
お墓の形式によって、かかる費用が変わります。
例えば、100万円以上の予算があれば、概ねどの形式のお墓でも検討範囲に入ります。
ですが、数十万円なら樹木葬や納骨堂、数万円なら合葬墓、という風に予算が低くなると選べるお墓も限られてきます。
現実的に、どのお墓であれば契約できるのかを考えてみましょう。
なお、石材店や墓地によっては、ローンを用意していることもあります。お墓にこだわりがある方は、一度相談しても良いかもしれません。
お参りしやすいアクセスやエリアは?
永代供養墓であれば必ずしもお墓のお世話はしなくても良いのですが、「お参りしたい」「お参りされたい」という方は、墓地までの通いやすさも重要です。
例えば、車がない方は駅から近い墓地がお参りしやすいですし、車でお参りに行きたければ参拝者用の駐車場がほしいですね。
また、親族が方々に散っているような場合は、それぞれの中間のエリアで探すのか、誰かの近くで探すのか、という問題も出てきます。
後々に誰がお参りすることになるのかも考えながら、アクセスも気にしましょう。
お墓は誰が何人使う?
永代供養墓では、基本的には一区画あたりに納骨できる人数に制限があります。
また、契約時に納骨する予定の人を登録しておかなければならないこともあります。
この他、「個別安置期間」などと呼ばれる、個別区画の使用期限を設けている永代供養墓も多くあります。
使用期限を過ぎると、遺骨は合葬墓に移されます。契約時から使用期間を数え始めるお墓では、最後の人まで納骨できないという事態にもなりかねません。
誰が使うのか、何人使うのか、いつまで使うのかなども考えながら、お墓を探してみましょう。
どちらかといえば大人数用の区画は納骨堂が探しやすく、少人数用の区画は樹木葬だと費用が抑えやすい傾向にあります。
その他お墓や墓地に求める情緒・機能
この他、終の棲家はこんなところで眠りたいという希望はありますか?
お墓さがしに寄せられたことがあるご要望と、おすすめのお墓をまとめて紹介します。
ご要望 | おすすめのお墓など |
景色が良いところで眠りたい | 郊外の民営霊園 |
ご遺骨を土に還したい | 樹木葬 |
年中快適にお参りできる屋内のお墓がいい | 納骨堂 |
ペットと一緒のお墓がいい | 民営霊園または寺院墓地 |
いつまでもご遺骨を合葬せずに個別で供養してほしい | 「永代個別」のお墓 |
芝生墓地がいい | 民営霊園または公営霊園 |
宗教色のない明るい霊園がいい | 民営霊園 |
優劣がつかないよう、お墓の形が揃っている墓地が良い | 規格墓所 |
お墓を購入する流れ
それでは、お墓を実際に買うにはどうすればいいでしょうか。
ここでは、お墓を検討し始めてから購入するまでの流れを解説します。
1.希望するお墓の条件を考える
まずは、前述の「お墓選びのポイント」を参考に、どんなお墓が良いかを考えてみましょう。
2.お墓を探す
希望するお墓の条件をさらったら、条件に合致するお墓を探します。
「お墓さがし」では全国のお墓を条件を絞って検索できるので、ぜひご利用ください。
気になるお墓を見つけたら、資料請求などでより詳しい情報を見てみましょう。
3.見学をする(石材店を決める)
条件に近いお墓を見つけたら、現地見学をしてみます。
墓地によってはスタッフが常駐していないので、事前に予約しておくと安心です。
民営霊園や一部の寺院墓地では、見学した時点で石材店が決まってしまいます(「指定石材店制度」。後述)。
公営墓地や多くの共同墓地では石材店を自由に選ぶことができるので、墓地を決めてから見積もりを依頼するという流れになります。
民営霊園や一部の寺院墓地では、その墓地で工事ができる石材店(指定石材店)が決まっています(指定石材店制度)。
指定石材店が一社であれば、石材店を選ぶ余地はありません。
一方、特に民営霊園では、複数社が指定石材店になっていることがあります。この場合は、霊園に見学に行った際、最初に案内した石材店でしか工事を頼めなくなってしまいます。これは、霊園を共同運営している指定石材店同士で、顧客の取り合いにならないようにするための制度です。
もし石材店を自分で決めたい場合は、霊園ではなくまずは希望する石材店に連絡し、見学したい旨を伝えましょう。
4.契約をする
墓地と石材店が決まったら、契約します。
指定石材店制度がある墓地では、墓地と石材店はほぼ同時に決まります。
一方、公営墓地など、自分で石材店を探すケースでは、墓地が確定してから石材店を探し、見積もりを取ることになります。この場合は複数社に見積もりを依頼する「相見積もり」もできます。
お墓さがしでは、無料で墓石工事の見積もりをする石材店もご紹介しています。公営墓地を検討している方は、ぜひご利用ください。
お墓参りはどうする?
お墓の基礎知識として、お参りの方法も紹介します。
お墓参りの流れ
お参りの流れは、おおむね次の通りです。
- お墓を掃除する(一般墓の場合)
- お供えをする
- 手を合わせる
お墓を掃除する(一般墓の場合)
まずは、お墓をきれいにします。
雑草があれば抜き、植え込みが伸びていれば剪定します。
落ち葉などの大まかなゴミもまとめます。
ゴミをまとめたら、墓石の上から水をかけ、柔らかい布などで拭きます。
なお、永代供養墓であれば基本的に墓地の管理者が清掃しており、このステップは省略されるでしょう。
お供えをする
お墓をきれいにしたら、お供えをします。
仏教では五供(ごく・ごくう)と言って、「香」「花」「灯燭」「浄水」「飲食」をお供えします。
これでは分かりづらいですね。「お線香」「仏花」「ロウソク」「水」「食べ物」で大丈夫です。
供物台の上に半紙を二つに折ったものを載せ、さらにその上にお供えを置くとより丁寧です。
神道では米、酒、塩、水、野菜、果物、魚、餅などの「神饌(しんせん)」と榊、ロウソクを供えます
キリスト教では「お供え」の概念がありませんが、墓前に白い花を手向けます。
なお、永代供養墓では、供物台は共用のものを用いることがままあります。
この他、火気は使用できないなどの制約を設ける場合もあります。
手を合わせる
お供えをしたら、合掌します。
神道では二礼二拍手一礼をし、キリスト教では手を組んで神に祈ります。
お墓参りのマナー
それほど堅苦しい形式にこだわる必要はありませんが、やはり、周りに迷惑をかけたり、お墓を傷つけたりするようなことは避けなければなりません。
お墓参りのマナーについて解説します。
お供えの持ち帰りは墓地のルールに従う
お墓に供えたものを持ち帰るのか、置いて帰って良いのかは、墓地や霊園によります。
墓地によっては「枯れたお花は抜いてくれる」「食べ物などのお供えは整理してくれる」などの運用がなされますが、そうでない墓地もあります。「お下がり」として墓前で食べるか、持ち帰って食べましょう。
特に食べ物や蓋を開けた飲料などは、風雨で飛ばされたり、野生動物が荒らしたりすることがあります。基本的には持ち帰りが多いでしょう。
墓石にお酒をかけない
お酒が好きだった故人のお墓にお酒をかける、という描写がドラマなどでなされることがありますが、墓石が痛みますので真似しないでください。虫が寄ってきたり、墓石が錆びたりします。
火は息で吹き消さない
仏教の作法ですが、ロウソクや線香の火を消す際は、息で吹き消さず、手で仰いで消します。これは、「息」は不浄だとする思想に由来します。
知っている人は知っている作法なので、同行者がいる場で息で吹き消すと、違和感を与えるかもしれません。
お墓をなくしたり引っ越したりするときはどうする?
「お墓が遠方にありお参りが大変」あるいは「自分の次に跡継ぎがいないのでお世話できなくなる」などの理由で、現在のお墓を撤去するケースがあります。昨今では、「墓じまい」という言葉も定着してきました。
お墓を撤去する際は、親族に事前に相談しておくことをおすすめします。
また、もちろん墓地管理者の承諾も必要ですが、お墓がお寺にある場合は、お寺が管理者です。お墓の撤去は檀家をやめることに直結するので、単に手続きとは思わず、まずは相談という形で話を切り出しましょう。
遺骨をすでに納骨している場合は、お墓がある自治体の役所での行政手続きも必要です。
お墓を撤去するには、つぎのようなステップを踏みます。
- 親族に相談する
- 墓地管理者に相談する
- 解体工事の見積もりを取る
- 遺骨の引っ越し先を決める
- 解体工事をする石材店と契約する
- 役所で改葬手続きをする
- 工事と法要の日程調整
- 墓石解体工事・更地返還
- 取り出した遺骨を供養する
お墓の撤去や引っ越しについて詳しく知りたい方は『墓じまいとは?』をご覧ください。
まとめ
近年では、墓石を建てるお墓の他に、樹木葬や納骨堂、合葬墓などの跡継ぎ不要のお墓が広まっています。
お墓の種類や墓地の特徴などについて解説してきましたが、より納得のいくお墓選びに役立てていただければ幸いです。
お墓を選ぶ際、「跡継ぎがいるか」という観点は非常に重要です。跡継ぎがいない方は、永代供養墓を検討することをおすすめします。
この他にも、予算、アクセス、納骨する予定の人なども考えながら、お墓を選びましょう。
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経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。