桜葬とは?桜の木の下に遺骨を埋葬する樹木葬・桜葬墓地を紹介

近年、従来の墓石を建てるお墓とは違った新しい形式として、樹木葬という跡継ぎを必要としない自然志向のお墓が広がりを見せています。
「桜葬」は、その先駆けとして誕生しました。
花見文化に象徴されるように、桜は国内で人気の花木です。
せっかく樹木葬にするなら、シンボルツリーは桜がいいという方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、桜の下で眠る桜葬について解説します。
☆動画でもご覧いただけます。
目次
桜葬とは
桜葬は、桜をシンボルツリーにした樹木葬です。
桜葬とは何かについて紹介します。
認定NPO法人エンディングセンターが企画
桜葬は、認定NPO法人エンディングセンター(以下、エンディングセンター)によって企画されました。
「桜葬」という名称はエンディングセンターが商標登録をしています。
したがって、厳密に言えば、「桜葬」とはエンディングセンターが企画し世に出した、桜の下で眠る樹木葬のことです。
桜葬は、跡継ぎのいらない自然志向のお墓を社会に広めようという試みとして誕生しました。
戦後の高度経済成長期以降、日本では核家族化が進んでいます。核家族は、一組の夫婦と子どもから成る世帯で、晩年は夫婦のみ、さらに一方が亡くなれば独居、最後の方が亡くなればその家族は消滅します。
こうした家族が代々の家墓を持つことは難しく、跡継ぎ不要のお墓が必要になってきたという社会状況の変化から、桜葬の取り組みも始まりました。
桜葬は、2005年に東京都町田市の町田いずみ浄苑内に初めて開設され、2012年には大阪府高槻市の神峯山寺開成院霊園(かぶさんじかいせいいんれいえん)内にも開設されています。
NHKドキュメント72時間「樹木葬 桜の木の下のあなたへ」で紹介された樹木葬
町田市の桜葬は、NHKで2019年に放送された、「ドキュメント72時間『樹木葬 桜の下のあなたへ』」で取材されました。
初回の放送以降も、数回にわたって再放送されています。
番組では、結婚記念日に夫を亡くした女性や、一緒にお墓を選んだ兄のお墓参りに来た方などの様子が取り上げられ、それぞれの人間模様や生前の関係性が思われる内容になっています。
桜葬はどんな人のためのお墓?
桜葬は、次のような人におすすめできます。
- お墓のお世話を子どもに引き継ぎたくない方
- 子どもがいない夫婦、独身の方
- 自然に囲まれて土に還りたい方
- 将来にわたって合葬されたくない方
桜葬の利用者は、子どものいない夫婦や独身の方もさることながら、子どもがいる方も多くいます。
必ずしも跡継ぎがいない人のためのお墓ではなく、お墓の継承を自分たちの代で終わりにして、子どもの代は自由にしてほしいという考えの人にも選ばれています。
実際、意識調査によると桜葬の利用者の74%には子どもがいます。
子どもはいるけれど遠くに住んでいる人、あるいは、子どもが近くにいても自分たちのお墓は自分たちで完結させたい人、お子さんがハンディキャップをもっている人も、桜葬を利用しています。
このほか、桜葬は区画を永続使用できます。将来にわたり合葬されずに自然に還ることができるので、自然に囲まれて土に還りたい方、お墓の場所を移動されたくない方にもおすすめできます。
桜葬の特徴とメリット
桜葬の特徴やメリットについて解説します。
継承者不要でお墓を持てる
桜葬は継承を前提としないお墓なので、おひとり様や子どもがいない方も利用できます。
あるいは、子どもがいるけれど娘なのでお墓を継げない、遠方に住んでいるのでお墓のお世話ができない、子どもにお墓の負担を残したくないなど、様々な需要に応えます。
逆に、お墓を継承したいご家族は、桜葬の区画を継承することもできます。
個人化が進む現代で、「家」のシステムにとらわれず、自分のエンディングを自由に選ぶことができます。
合葬されずに個別で土に還る
桜葬の中でも区画の種類は様々で、そのほとんどが遺骨は個別に埋葬され、そのまま土に還っていきます。
都内にある樹木葬は最終的に遺骨を合葬墓に移動するものが多く、埋葬された場所から動かず永久に合葬されない桜葬は大変貴重です。
また、外柵は見えませんが、土中は個別区画になっています。住宅でいうマンションのように、桜葬も個別区画が隣接して1つのエリアを形成しています。一戸建てであれば跡が絶えれば草茫々ですが、集合墓なので一緒に管理でき、同じエリアの人々と心が通いあい、「ゆるやかな共同性」も生まれています。
「墓友」をつくることができる
「墓友」という言葉は、エンディングセンターが最初に使い始めました。
桜葬は契約者同士の交流も活発で、新たに友人をつくったり、活動の場所を広げる方も多くいます。
桜葬は会員制を採用しており、区画使用者のうち一人はエンディングセンターの会員になることが条件になっています。
エンディングセンターでは定期的にサークル活動やイベント、終活講座などを開催しており、これらの活動を通して人との繋がりを持つことができます。
サークル活動の内容は、俳句や書道、小物作り、合唱、ヨガ・太極拳などがありますが、ランチや語り合いの会など気軽なものもあります。
生前や死後のサポートも受けられる
エンディングセンターでは、生前や死後のサポート(エンディングサポート)も行っています。
生前サポートでは、見守り、遺言相談、入院保証や入退院の付き添い、任意後見などを、死後サポートでは、葬儀、死後事務や部屋の片づけ、埋葬などを行います。
特に一人暮らしの場合は、エンディングに向けた不安も多くなります。
認知症になったらどうするか、孤独死したらどうなるのか、遺骨はお墓に埋葬されるのか、死後の手続きはどうなるかなど、おひとり様特有の悩みは多くあります。
サポートを契約しておけばそういった不安を大きく軽減することができるので、安心して余生を過ごすことができます。
桜葬がある場所は東京都町田市と大阪府高槻市
桜葬は、東京都町田市の町田いずみ浄苑内と、大阪府高槻市の神峯山寺開成院霊園内の2か所にあります。
それぞれどんな種類の区画があるのかを紹介します。
町田市にある桜葬
町田市の桜葬は、町田いずみ浄苑内にあります。
多摩丘陵の自然に囲まれた、緑豊かな立地です。
※区画情報は、2020年9月時点での情報です。
詩桜里(しおり)


2人までで利用できる区画と、4人までで利用できる区画があります。
ローズガーデン


一区画4人までで利用でき、ペットと一緒に入れる区画もあります。
あさ陽の丘I・II



あさ陽の丘Iは2人まで、あさ陽の丘IIは4人までで利用できます。
あさ陽の丘II お墓のシェアハウス

1区画を異なる契約者同士4人でシェアします。
森の精(もりのせい)


1区画4人までで利用でき、ペットも一緒に入ることができます。
木もれ陽(こもれび)


こちらは合葬区画になっており、遺骨は骨袋に入れられ、この一つの区画に埋葬されます。
高槻市にある桜葬
高槻市の桜葬は、神峯山寺開成院霊園内にあります。
山の登口付近にある緑に恵まれた立地です。
※区画情報は、2020年9月時点での情報です。
木の精(きのせい)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
桜の丘(さくらのおか)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
緑の丘(みどりのおか)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
空の音(そらのね)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
風の旅人(かぜのたびびと)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
大地の礎(だいちのいしずえ)

区画は2人までで利用できます。3人以上は区画を増やすことで利用できます。
ペットも家族


ペットと人とを合わせて2体で利用できます。それ以上は区画を増やすことで利用できます。ペットだけのお申し込みはできません。
宙への庭(そらへのにわ)

全国に広がる「桜葬」
桜葬を筆頭に、桜の下で眠る樹木葬は全国で造られています。
ここでは、全国にある桜の下で眠る「桜葬」ネットワークの樹木葬を紹介します。
いずみ谷 西寿寺 桜葬(京都府京都市)
いずみ谷 西寿寺 桜葬は、京都市右京区にあるお寺の桜葬です。
ペットと入れる家族型桜葬墓地と、共同型の桜葬墓地があります。
墓域からは双ヶ丘や京都市街地を望むことができます。
正福寺 桜墓苑(鳥取県西伯郡大山町)
正福寺は 桜墓苑は、様々な種類の桜の下で眠る桜葬です。
しだれ桜、八重桜、ソメイヨシノ、山桜、冬桜が植樹されており、その周りにご遺骨を埋葬します。
季節になるとそれぞれの桜が順番に花をつけ、長い間、桜を楽しむことができます。
真光寺 樹木葬墓苑「桜の苑」(千葉県袖ケ浦市)
真光寺 樹木葬墓苑は、房総半島に自生する木を中心に植樹する樹木葬墓地です。
もともとは荒れた竹林であったところを払い、付近の森と連なる里山に戻していくことを目指して運営されています。
桜の下で眠る「桜の苑」は樹木葬墓苑の一角にある合葬墓のエリアです。
たくさんの桜の下、皆さんで一緒に眠るお墓です。
如意輪寺 桜葬「宝珠苑」(奈良県吉野郡吉野町)
如意輪寺 桜葬「宝珠苑」は、日本一の桜の名所の真中に位置し、見渡す限りの桜の中にある樹木葬地です。
1人用、2人用、分骨用、合葬と愛するペットと一緒に入れるお墓があります。
妙瑞寺樹木葬墓地「桜葬」(大分県大分市)
妙瑞寺樹木葬墓地「桜葬」は、九州で初めての桜を墓標とした樹木葬墓地として、平成23年に開設されました。
2人用、4人用、6人用の区画があり、ご夫婦やご家族、友人同士や事実婚の方同士でも利用できます。
また、そばにはペットのお墓もあります。
書籍「桜葬―桜の下で眠りたい」


本書のメインは桜葬を実際に選んだ人々の手記になっており、どのような人たちが桜葬を選び、それによってどのような気持ちになったかなどが分かります。
もちろん、桜葬そのものの紹介もありますので、気になっている方はぜひご一読ください。
honto 桜葬 桜の下で眠りたい
まとめ
桜葬は、エンディングセンターが企画した桜の木の下で眠る樹木葬です。現在は、東京都町田市と大阪府高槻市の2か所にあります。
原則、遺骨は個別に土に埋葬され、その後も合葬されずに自然に還っていきます。
桜葬はエンディングセンターの会員になって使用するお墓で、契約者同士の交流もあります。活動の場を通して、「墓友」をつくることもできます。
このほか、希望者は生前・死後サポートも受けることができるので、ご夫婦だけやおひとり様の世帯の方も安心です。
桜葬の利用者は必ずしも跡継ぎがいない方ばかりではなく、子どもがいるけど遠方に住んでいる方、子どもにお墓のお世話を引き継ぎたくない方も多く利用しています。
「家」の形にとらわれないでお墓を持ちたい方、自然に囲まれて土に還りたい方は、ぜひご検討ください。

井上 治代
(いのうえ はるよ)
社会学博士。エンディングデザイン研究所代表、元東洋大学ライフデザイン学部教授、認定NPO法人エンディングセンター理事長。研究テーマは、「人口減少社会における家族変動と葬送」「死生観」「日本仏教の再生」などで、執筆・評論活動を続け、公的機関の諮問委員や講演等を行っている。主な自著は『最期まで自分らしく』『墓をめぐる家族論』『墓と家族の変容』『桜葬』、「集合墓を核にした結縁―「桜葬」の試み」『地域社会をつくる宗教』、”Death Dying, and Disposal in Contemporary Japan,” It will be published by Routledge (UK ),「死生観なき時代の死の受容」『「終活」を考える』など多数。
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