宗派によるお墓の違いを解説!違う宗派でも納骨できる?

墓地や霊園へ行くと、石碑の正面に「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」と彫刻されたお墓を目にすることがあります。
宗派によってお墓の正面文字を厳密に決めているわけではありませんが、宗派によってお墓に特徴がみられます。
また、そのような宗教色の強いお墓に違う宗派の人を納骨することはできるのかという疑問を抱く方も多いようです。
そこで今回は、宗派によるお墓の違いや違う宗派でも納骨できるのかを解説します。
目次
宗派によるお墓の特徴
仏教大国である日本の宗派は、十三宗五十六派あるといわれています。
ここでは、代表的な以下7宗派のお墓について解説します。
代表的な7宗派
浄土真宗のお墓
- 正面文字:南無阿弥陀仏・倶会一処など
- 亡くなってからの名前(戒名)を法名と呼ぶ
- 法名の前に釈(釋)の文字を刻む
浄土真宗のお墓には、石の正面に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と念仏を刻むのが一般的ですが、「俱会一処(くえいっしょ)」と刻むこともあります。
他宗派では本尊をあらわす梵字をお墓に彫ることがありますが、浄土真宗では阿弥陀仏をあらわす梵字を彫刻しません。
また、亡くなってから僧侶によって付けられる名前を一般的に「戒名」と呼びますが、浄土真宗では「法名(ほうみょう)」と呼びます。法名を記すための石碑も墓誌ではなく、法名碑と呼びます。
法名の前に男性の場合は、「釈(釋)」の文字を刻み、女性の場合は「釈尼(釋尼)」がという文字がつくのも浄土真宗の特徴です。
近年では、女性に尼をつけるのは差別になるということで、性別に関係なく「釈(釋)」を刻む傾向があります。
浄土真宗では、死後阿弥陀如来の力によってすぐに仏になるとされているため、追善供養は必要ないと考えられています。
そのため、卒塔婆供養をしない、あまり五輪塔を建てないという特徴もあります。
ただし浄土真宗であっても、地域によっては五輪塔を建てることもあるようです。
浄土宗のお墓
- 正面文字:南無阿弥陀仏・倶会一処など
- 石碑の上部に阿弥陀如来をあらわす梵字を刻む場合も
- 戒名の前に「誉」と刻むことも
浄土宗のお墓は、石の正面に「南無阿弥陀佛」と念仏を刻むか、「倶会一処」を刻むのが特徴です。
また、「〇〇家之墓」の上部に阿弥陀如来をあらわす梵字を刻む場合もあります。
阿弥陀如来をあらわす梵字は、「キリーク」と発音します。
五輪塔がある場合は、上から「南無・阿・弥・陀・仏」と刻んでいきます。
戒名の前に「譽」という文字が刻まれていることがあります。
これは誉号(よごう)といって、本来僧侶に対して与えられる称号でしたが、現在では僧侶以外の檀信徒でも授与されているようです。
天台宗のお墓
- 決まった特徴はなく自由
- 正面文字:南無阿弥陀仏・南無釈迦牟尼佛が比較的多い
- 五輪塔の彫刻:下から梵字で「地・水・火・風・空」か「妙・法・蓮・華・経」が比較的多い
天台宗のお墓には、明確な決まりや特徴がありません。
強いて言えば、お墓の正面に「南無阿弥陀仏」「南無釈迦牟尼佛」と彫刻されることが多いでしょう。
また、〇〇家之墓と彫刻する場合には、その上に大日如来、釈迦如来、阿弥陀如来をあらわす梵字を彫刻したお墓がみられます。
また、五輪塔がある場合は、下から梵字で「地・水・火・風・空」か「妙・法・蓮・華・経」が彫刻されることが多いです。
決まった特徴がないため、天台宗らしいお墓を建てたい場合は、菩提寺に相談することをおすすめします。
真言宗のお墓
- 正面文字:南無大師遍照金剛など
- 石碑の上部に大日如来を現す梵字を入れる
- 五輪塔の彫刻:下から「地・水・火・風・空」の梵字
真言宗のお墓には、石の正面に「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と念仏を刻むか、「〇〇家之墓」上部に大日如来を表す梵字を刻みます。
また、五輪塔がある場合は、梵字で下から「地・水・火・風・空」と刻んでいきます。
戒名の上には、大日如来をあらわす「ア」の梵字を刻み、子どもの場合は地蔵菩薩をあらわす「カ」の梵字を刻みます。
禅宗のお墓(曹洞宗・臨済宗)
- 正面文字:南無釈迦牟尼佛など
- 石碑の上部に円相という丸い輪を彫刻する
- 五輪塔の彫刻:下から「地・水・火・風・空」の梵字
禅宗のお墓には、石の正面に「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と念仏を刻むか、「〇〇家之墓」上部に円相と呼ばれる〇(丸い輪)を刻みます。
円相は、完全なさとりの境地を象徴したもので、墓石に刻むことで故人が成仏して仏になったことを表します。
また、五輪塔がある場合は、下から梵字で「地・水・火・風・空」と刻んでいきます。まれに「祖師西来意」と刻まれた五輪塔もみられます。
日蓮宗のお墓
- 正面文字:南無妙法蓮華経など
- 南無妙法蓮華経が髭題目という特徴的な書体で彫刻されることも
- 亡くなってからの名前(戒名)を法号と呼ぶ
日蓮宗のお墓には、石の正面に「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」と念仏を刻むのですが、髭題目(ひげだいもく)と呼ばれるひげを長く伸ばすような独特の書体で刻まれるのが特徴になります。
正面に「〇〇家」と刻む場合には、上部に「南無妙法蓮華経」を刻みます。
「妙法蓮華経」や「妙法」と彫刻されたものもよくみられます。
また、五輪塔がある場合は、上から「南無・妙・法・蓮華・経」と刻んでいきます。
亡くなってからの名前を、戒名といわずに「法号」(ほうごう)と呼ぶのも特徴です。
法号は、日蓮宗の宗祖である日蓮上人から「日」の字をつけることから日号とも呼ばれます。
お墓と宗派に関するよくある質問
お墓と宗派に関して多く寄せられる質問に回答します。
お墓で自分の家の宗派を見分ける方法はある?
基本的に、お寺の敷地にお墓がある場合はそのお寺の宗派が自分の家の宗派です。
お墓があるお寺の宗派を調べてみましょう。
墓地の管理者に問い合わせると教えてもらえる場合もあります。
それでもわからない場合は、お墓の特徴で見分けるしかありません。
前述した各宗派のお墓の特徴を参考にしてください。
宗派が違う人の遺骨は納骨できる?
宗派の違いによって納骨ができるかどうかは、墓地や墓苑などの管理者の判断になり、管理規約を確認する必要があります。
相対的に公営、民営などの墓地、墓苑などでは、宗派を問われていないことが多いのですが、寺院が管理している寺院墓地では、公営、民営に比べて厳しくなります。
ただ、近年では、檀家制度を設けていない寺院も増えてきているので、宗派が違っていても納骨できる可能性もあるので、寺院に相談してみてください。
お墓の正面彫刻は変えられる?
違う宗派の人を一緒に納骨する際、お墓の正面に特定の宗派を表す彫刻があるのは抵抗があるかもしれません。
それでは、石塔の彫刻を変えるにはどうするかというと、ほとんどの場合石ごと取り替えることになります。
石塔正面の彫刻はかなり深く掘られているため、周りをすべて削りなおすと石塔本体が小さくなってしまう上、手間がかかります。
墓石にいろいろなデザインや加工がされた墓石になると、削り直した一面と他の面とのバランスが崩れて、つり合いが取れなくなり、さらに他の面にも手を加えなければならなくなります。
また、一度彫られた文字を何らかの方法で埋めるのも、耐久性や見た目の観点から言ってお勧めできません。
このように、手を加えれば加えるほど、かかる費用は増えていき、墓石の大きさ、形が変わっていくので、墓石を買い直すのが無難でしょう。
まとめ
ここまで、宗派によって違う墓石に刻む文字など宗派ごとのお墓の違いについてみてきました。
新しくお墓を建てるには高額な費用がかかるので、何かあったからとお墓を建て直すことは容易なことではありません。
建てたあとにトラブルになるようなことは避けたいですよね。
新しくお墓を建てようと考えている人は、この記事を参考にしていただき、宗派ごとの違いを理解していただくとともに、お墓を建てる前に公営・民営の墓地や霊園、寺院墓地の管理者に相談するようにしてください。
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お墓の正面彫刻は変えられる?
ほとんどの場合石ごと取り替えることになります。石塔正面の彫刻はかなり深く掘られているため、周りをすべて削りなおすと石塔本体が小さくなってしまう上、手間がかかります。まずは石材店に相談して、正面彫刻を変更するための費用を出してもらいましょう。