墓じまいのトラブルと後悔しないための対策!弁護士の見解も紹介

墓じまいのトラブルと後悔しないための対策!弁護士の見解も紹介

「墓じまいをしたいが、親戚やお寺とのもめ事が不安・・・」

先祖代々のお墓が無縁墓にならないように始めた墓じまい。
しかし親族やお寺の反対にあってうまく進まず、最悪の場合は墓じまいを断念せざる得なくなるケースもあります。

墓じまいを穏便に進めるためには、丁寧な話し合いや調査が必要になってきます。
方々でトラブルになり「こんなはずじゃなかった!」と後悔する前に、事前の対策には何が必要なのでしょうか。

今回のテーマは、墓じまいで起こりがちなトラブルと対策です。
「あさがお法律事務所」代表弁護士、岡田晃朝弁護士のご意見も交えながら、紹介していきます。

なお、墓じまい全般については、『墓じまいとは?』で解説しています。

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岡田弁護士●取材協力

岡田 晃朝 弁護士
あさがお法律事務所代表弁護士。
民事・家事事件に注力し、相続関係事案と会社関係事案、借金問題を中心に取り扱っている。
代表を務める事務所では、依頼者の一人一人に首尾一貫して自らが案件に対応する。

あさがお法律事務所:http://asagao-law.com/

 

親族とのトラブルと対策3つ

お墓は、親族全体に関わってくるものです。
例えば、親がお墓に入っていれば、その兄弟である伯父や伯母がお参りに来るかもしれません。
また、もしお墓が本家のものであれば、分家の家族もお参りに来ているかもしれません。
いずれも、親族ともめているにもかかわらず墓じまいを強行すると、取り返しのつかないほど関係が悪くなることもあります。
ここでは、墓じまいに関する親族とのトラブル事例と対策について解説します。

先祖に対する考えや祟りを理由に親戚から反対される

先祖に対する考えを理由に、親族から反対されるケースです。
具体的には、以下のようなことを理由に挙げられることがあります。

  • お墓を撤去するのはご先祖様に失礼
  • お墓を撤去するとご先祖様の祟りがある
  • 長男やその嫁なら墓を守るのは当然

<対策>相手の意見を肯定しつつ、事情を説明しましょう。

現代では一代限りで完結するお墓も増えてきましたが、上の世代はお墓は代々引き継いでいくのが常識でした。
自分が信じている常識と違うことを言われると驚いたり反対をするということは、珍しいことではありません。
まずは親戚の意見を肯定しつつ、なぜ墓じまいをしなければならないのかを説明しましょう。
もし自分の代で墓守がいなくなるなら、その後代々のお墓を放置する方がご先祖様に失礼です。
ご先祖様からしても、お墓を荒れ墓にされることと、しかるべき方法で供養してもらうことのどちらが良いかと言えば、後者でしょう。
遠方でお墓のお世話ができていない場合も同様です。
きちんと供養したいという思いがあるからこその墓じまいであることを、説明しましょう。
相談することで、親族の中からお墓を引き継いでくれる人が現れるかもしれません。

お参りする場所が欲しいという理由で親戚から反対される

お参りする場所をなくさないでほしいと、親戚から墓じまいを反対されるケースです。
お墓に入っている人の縁者は、必ずしも直系の子孫だけではありません。
自分の兄弟や、両親が入っていればその兄弟などもお参りに来るかもしれません。

<対策>改葬先を含めて相談しましょう。
お参りをする場所の問題なので、遺骨の引っ越し先(改葬先)についても併せて相談しましょう。
同時に、これまでお参りしていたお墓がなくなるという寂しさにも理解しておく必要があります。
現在では継承を必要としないお墓(永代供養墓)も増えています。
遺骨を永代供養墓に引っ越せば、後代までお墓のお世話をする必要もなく、お参りする場所も残すことができます。
改葬先を一族ゆかりの土地に持つのか、自分の住まいから近いところにするのか、お墓の種類はどうするのかなど、親族の希望を聞いてみましょう。
特に、改葬先に合葬墓を考えている場合は、埋葬後二度と遺骨を取り出すことができなくなるので、事前の相談は必須です。

墓じまいを誰がするのかや費用負担でもめる

墓じまいを誰がするのかでもめるケースです。
特に、兄弟がいる場合は親のお墓の撤去を誰がするのか、費用負担はどうするかなどで、話が進まなくなることがあります。

<対策>お墓の名義人を確認しましょう。
後述しますが、お墓に関する権限は現在のお墓の名義人にあります。
したがって、通常はお墓の名義人が墓じまいをするのが自然です。
名義人が不明な場合は、墓地管理者に問い合わせましょう。
お墓の名義人が「承諾書」を書くことで名義人以外が墓じまいを代行することもできますが、その兄弟は必ずしも代行する義務がありません。
話し合いで関係者全員が納得することが最善ですが、万が一決着がつかなければ、お墓の名義人が墓じまいをすることになります。
なお、墓じまいをせずにお墓を放っておいてもいいかというと、これはおすすめしません。
お墓の年間管理料が滞納されると、墓地管理者は一定の手続きを経た後にお墓を撤去することができます。
ですが、その後何らかの方法で名義人や縁者と連絡が取れると、撤去費用や年間管理料を請求されることもあり得ます。
マナーの観点から言っても、お墓を放置するのは墓地管理者に迷惑が掛かります。
もし費用面が気になるなら、公営墓地であれば自治体が補助金を出していることもあります。
お墓のある自治体役所の窓口に相談しましょう。

【参考】墓じまいに親族の同意は必要?

墓じまいをするにあたっては親戚の同意は必須なのでしょうか。

墓じまいの決定権について、岡田弁護士のご意見を伺いました。

墓じまいの決定については、祭祀承継者が権利者となります。
以下の通り、遺産の移転とは別に、お墓や仏具などを受け継ぐ人を決めることになります。

民法第897条
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2. 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める

民法第897条第1項は、「墳墓」の承継は、前条の規定(財産の相続について定められた896条)ではなく、慣習で決まるとしております。
ただ、亡くなった方が、特定の人に引き継がせると指示していれば、その指示に従うことになるのが、「ただし」以下の規定です。

民法第897条第2項は、慣習が明らかでない時は、墳墓等の承継を家庭裁判所が決めることを定めています。

つまり、墓じまいの決定権は祭祀承継者になりますが、それは多くの場合慣習で決まります。
ただし、亡くなった祭祀承継者が後任を指定していることもあります。
お墓の名義人が存命であれば、その人が祭祀承継者と考えていいでしょう。

したがって、墓じまいに親族の同意が必要かどうかは、自分が祭祀承継者であるかどうかで変わります。
自分が祭祀承継者であれば、法的には親族の同意なしに墓じまいをすることができます。
逆に、自分が祭祀承継者でなければ、祭祀承継者である親族の同意なしに墓じまいをすることはできません。
具体的には、お墓の持ち主である祭祀承継者以外の人が墓じまいをする場合、祭祀承継者の承諾書なしに墓じまいの行政手続きをすることができません。
祭祀承継者が誰なのかは念頭に置いて話を進めましょう。

ただし、繰り返しになりますが、法律に関係なく、親族の同意なしに墓じまいをすることはその後の関係に大きく影響します。
無用なトラブルを避けるという意味でも、できるだけ関係者全員が納得した上で、墓じまいを実行しましょう。

お寺とのトラブルと対策3つ

墓じまいをするには、現在の墓地管理者から「埋葬証明書」を発行してもらわなければなりません。
この書類は役所に届出(改葬許可申請書)を出す際に必要になります。
したがって、墓じまいをするには墓地管理者の承諾が必要になります。

お寺にお墓がある場合、墓地管理者はお寺になります。
しかし、お寺のお墓を墓じまいするということは、「離檀」にほぼ直結します。

お寺には檀家という制度があります。
檀家とは墓地の世話や法要をしてもらう代わりに、お布施などで経済的に寺院を支える家のことを言います。
この檀家をやめることが「離檀」です。

お寺の墓じまいでは、単純なお墓の撤去の他、離檀が絡んでくるために、トラブルが起きることがあります。

法外なお布施(離檀料)を要求される

法外な「離檀料」を要求され、トラブルになるケースです。
慣例として、離檀する際はこれまでお世話になったお礼としてお布施を包みます。
このお布施が、いわゆる「離檀料」と呼ばれるものです。

離檀料の相場は地域柄やお寺にもよるので一概に語ることはできませんが、多くの場合は法要1回分、3~20万程度と言われています。
ですが、ごくたまに数百万など法外な離檀料を要求してくるお寺もあり、払えなければ離檀を認めないという事例すらあります。

<対策>相談という形で前もって丁寧にお寺にお話ししましょう。
事前の対策としては、お寺へのあいさつを丁寧にするということが挙げられます。
これは、お寺との仲が険悪になると、後の話し合いも難しくなるためです。
先述の通り墓じまいは離檀に直結する問題ですが、お寺からすると、檀家の減少は切実な問題です。
まずは墓じまいを決定事項としてではなく、相談としてお話ししましょう。
相談するときの挨拶の内容は、以下のようなものが考えられます。

  • お詫び・・・日頃お参りに行けず、お墓の手入れがおろそかになっていることを謝る。
  • 感謝・・・これまで長い間お墓のお世話をしてもらった感謝を伝える。
  • 墓じまいの理由・・・立地や後継ぎの問題から十分な供養が難しく、状況を改善したいということを伝える。

多くの場合、しっかりと丁寧に説明すればトラブルは防ぐことができます。

<対策>金額が納得できなくてもまずは二者間で話し合いましょう
法外な離檀料を要求されたら、その場では応じず、まずはお寺との二者間で話し合いましょう。
そもそも離檀料はお布施です。いわゆる「お気持ち」で納めるものだということを念頭に、穏便に話し合いを進めてください。
どうしても決着しない場合は、弁護士に同席してもらうか、お寺に断ったうえで本山に相談してください。
弁護士に同席を依頼するにも費用が掛かりますが、高額な離檀料をそのまま納めるよりは、出費を抑えられるでしょう。

遺骨を引き渡してくれない

墓じまいや離檀でお寺ともめた結果、お寺が遺骨を引き渡さないと主張されるケースです。
通常考えられませんが、お寺との仲が険悪になってしまうとごくたまに起こります。

<対策>話し合いが難しければ弁護士に相談
お寺との仲が険悪にならなければ起こらないトラブルなので、まずは墓じまいの相談をするときは穏便に話し合いを進めることを意識してください。
それでももめてしまって遺骨を渡さないと主張される事態が起こったら、やはり弁護士に相談します。
宗教や信条については法律で説明しづらい部分になるので、遺骨の「物権」を争うという内容で相談するとスムーズです。

お寺の指定石材店の見積りが高い

お寺では、お墓の工事ができる業者が決まっていることがあります。
この業者は、指定業者、あるいは指定石材店と呼ばれます。
指定石材店で墓じまいの見積もりを取った結果、費用感が高かったというケースです。

<対策>見積りに疑問があればすぐに契約はせずに内容を確認
墓じまいの墓石解体工事の相場は、8~10万円/㎡と言われます。
あまりにも相場感とかけ離れていたらすぐに契約はせずに、なぜその金額になるのか聞いてみましょう。
実際、お墓の立地(山の上にある、機材が入る通路がないなど)によっては人工と期間がかかるので、相場の倍以上になることはあり得ます。
ただし、指定石材店がいる場合は言い値になるのでどちらかと言えば費用感が高めになるのも事実です。
内容を聞いても納得できなければ、お寺の住職に他の業者に相見積りをとらせてもらえないか相談してみます。
お寺では知らない業者が入ってずさんな工事をされることを警戒していることもあるので、石材店を含めた三者面談を提案してみてもいいでしょう。
もしどうしても費用感に納得できない上に相見積もりも取らせてもらえなければ、消費生活センターに相談してみましょう。

なお、お墓はお寺の私有地にあるので、お寺の許可なく指定石材店以外の業者を入れることはできません。

【参考】離檀料の支払い義務について

もし高額な離檀料を請求されてしまった場合、支払う必要はあるのでしょうか。

法律の観点ではどう扱われるのか、岡田弁護士にご意見を伺いました。

離檀料の法律上の根拠はあいまいなものです。
法外な金額の主張がされた場合、まずは交渉での解決を図るべきですが、交渉が出来ない場合は、裁判所での調停や訴訟も検討することでしょう。
裁判で金銭を請求する以上は、請求の権利があることや金額の根拠を請求者が示さなければなりませんが、これは実際には相当に難しいのではないかと思われます。

法律の観点からすると、離檀料の支払い義務を証明するのはかなり難しいようです。
ですから、もし仮に離檀料の支払いで訴訟になったとしても、慌てることはありません。

もし法外な離檀料を請求されたとしても安易に支払う必要はありません。
お布施とはお気持ち代であるということを念頭に、できるだけ穏便に話を進めましょう。

どうしてもうまくいかない場合は、役所に相談することで改葬許可の手続きを進めてくれる場合もあります。
それでもうまくいかない場合は、弁護士などに相談してみましょう。

石材店とのトラブル

ほとんどの場合、現在使っているお墓の土地は管理者から借入している契約になっています。
したがって、墓じまいをしたら土地は元の状態に戻して返却します。
つまり、更地にして返却するということです。

お墓の解体・撤去と土地を更地に戻す工事は石材店が請け負います。
ここでは、墓じまいで必ず関わり合いになる業者とのトラブルを紹介します。

墓石の処分が悪質だった

墓じまいで撤去された墓石が、不法投棄されていたり、山中に埋められていたというケースです。
墓じまいを安く請け負うために、こうした悪質な処理をする業者がごくたまにいます。

通常、撤去された墓石は、破砕処理が行われ、土木工事などにリサイクルされます。
ただし、墓石の破砕は相応の費用が掛かるため、墓じまいを安く請け負うために、悪質な処理をする業者がごくたまにいます。

<対策>「マニフェスト」をもらえるか聞いてみましょう。
「マニフェスト」とは、産業廃棄物に関する書類です。排出業者が産業廃棄物の処理を委託する際に交付されます。
墓石が産業廃棄物として正しく処理される場合は、マニフェストが発行されるはずです。
石材店を決めるときにマニフェストを見せてもらえるか確認しましょう。
また、見積りが安すぎる業者は注意してください。墓石の処理代を浮かすために、墓石の処理をきちんとしていない場合があります。

墓石の解体工事がずさんだった

墓石の解体工事がずさんで、基礎を解体せずにそのまま埋めていた、他のお墓を傷つけてしまったというケースです。
悪質なケースでは、工事の問題が発覚した後に連絡が取れなくなるということもあります。
この場合、自費で工事を再度依頼したり、墓石の修復費用を負担することになります。

<対策>信頼できる「石材店」に依頼しましょう
お墓を建てることとは違い、お墓の解体は一般の解体業者にもお願いできる場合があります。
ですが、お墓に関してはお墓のプロである石材店に依頼する方が安心です。
中でも、墓地管理者に紹介してもらった石材店や指定石材店であれば、工事はまず間違いありません。
指定業者がなく相見積りをしたい場合は、施工実績やその墓地での施工をしたことがあるかなどを確認して選びましょう。

墓じまいのトラブルの相談先

墓じまいでトラブルが起こってしまった場合の相談先は、以下のような所が挙げられます。

  • お寺とのトラブル・・・弁護士、お寺の本山、お墓のある自治体の役所
  • 解体業者とのトラブル・・・国民生活センター、弁護士
  • 墓じまいの手順や手続き上の困りごと・・・お墓のある自治体の役所、墓地管理者

また、「お墓さがし」でも墓じまいの無料相談を承っております。
通話無料のフリーコールをご用意していますので、お気軽にご連絡ください。

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まとめ

墓じまいには親族、お寺、石材店と、色々な立場の人々が関わってきます。
自分だけの意思で物事を進めていくのではなく、関係者と丁寧に話し合い、合意を取り付けていきましょう。

また、お金のトラブルに関しては相場を調べておくことも肝要です。
高額な費用を提示されてもすぐには応じず、弁護士などのプロに相談してみましょう。

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