お墓がいらない人のための供養の方法を紹介!終活で準備しておくことは?

お墓がいらない人のための供養の方法を紹介!終活で準備しておくことは?

一昔前までは、お墓と言えば墓石を建てて、代々引き継いでいくことが一般的でした。
しかし、昨今では新しい形のお墓や、お墓を持たずに遺骨を供養する方法も登場しています。
今回の記事では、お墓がいらないと考えている人のために、遺骨を供養する方法を紹介します。

お墓がいらない人は増えている

お墓を持たない葬送の方法として、近年広まりを見せているのが「散骨」です。
散骨は、平成3年にNPO法人の「葬送の自由をすすめる会」が相模湾で実施したことを皮切りに、今では国内で広く実施されるようになりました。
散骨が一般化してきたことを受けて、令和2年度の「厚生労働科学特別研究事業『墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究』」では、「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」が取りまとめられています。
参考:厚生労働省 墓地・埋葬等のページ 参考資料集(パンフレットなど)

また、少し前の調査ですが、東京都が発表した「平成27年度第6回インターネット都政モニター『東京都の霊園』アンケート結果」では、現在墓地を所有していない人が38.1%、そのうち、墓地を必要としていない人が34.6%になりました。当該調査の前回にされた平成17年度のアンケートでは、墓地を所有していない人のうち、墓地を必要としていない人が28.1%だったので、東京都では、10年間でお墓を必要としていない人の割合は増えたということになります。
参考:東京都公式ホームページ 平成27年度第6回インターネット都政モニター『東京都の霊園』アンケート結果

これらは断片的な情報ですが、「お墓はいらない」あるいは「お墓は持たなくてもいい」という機運は、近年高まっていることが推察されます。

お墓を持たないメリット・デメリット

お墓を持たないことで生じるメリットとデメリットを紹介します。

お墓を持たないメリット

お墓を持たないことのメリットには、以下のようなことが挙げられます。

費用やお参りの負担がなくなる

お墓を持たなければ、お墓にかかる初期費用も、お墓を維持するための年間管理費などもかかりません。
例えば墓石のお墓を建てるとすると、初期費用で80万~250万円程度、年間管理費で5千~2万円程度がかかります。
永代供養墓などの小さなお墓でも、遺骨を個別安置するには、少なくとも初期費用で10万円程度はかかります。
加えて、お寺にお墓を持つ場合は、檀家の付き合いが必要になることがあります。
合同法要などへの参加が要件になっていたり、お寺の修繕費にお布施が必要になったりすると、お墓とは別に出費がかさみます。
お墓を持たなければ、これらの費用は全てかかりません。
また、定期的なお参りや掃除、草むしりなども不要です。

承継者の心配をしなくて済む

お墓を持たなければ、誰にお墓の面倒を見てもらうか、子どもがお墓のお世話をすることが大変にならないか、などの心配がなくなります。
なお、承継者を前提としない永代供養墓でも、この心配は解消されます。

お墓を持たないデメリット

お墓を持たないことのデメリットには、以下のようなことが挙げられます。

お参りする場所がなくなる

お墓がないと、当然お墓参りもできません。
故人を追悼するための拠り所がないと、寂しいと感じる方もいるかもしれません。
また、もし散骨をしてしまったら、お墓をつくらなかったことを後悔しても、遺骨を取り戻すことはできません。

親族などに反対されることがある

明治以降、墓石を建てて代々引き継いでいくいわゆる「家墓」が普及しましたが、この慣習が強く残る地域や世代の方が親族にいると、お墓を持たないことに反対されるかもしれません。
特に、散骨をした後に反対されても取り返しがつかず、後々まで遺恨が残る可能性もあります。

お墓を持たない供養の方法・費用

お墓を持たないで遺骨を供養する方法と、その費用について解説します。

散骨:3万~30万円程度

レイセキ:海散華
散骨とは、粉末状に砕いた遺骨を海や山などの自然環境に撒く葬送の方法です。
遺骨の粉砕(粉骨)から散骨までを全て業者に委託すると、一人あたり3万円程度から依頼できます。家族の手で散骨する場合は10万円前後、家族のみで船をチャーターする場合のみは、15~30万円程度の費用が掛かります。
一度散骨すると遺骨は取り戻せないので、契約前には必ず親族に確認を取りましょう。

散骨について詳しく >>

手元供養:0~30万円程度

手元供養-骨壺
手元供養とは、遺骨を自宅に安置したり、一部を身に着けたりする供養の方法です。
火葬後の骨壺を自宅に置いておくだけなら、費用はかかりません。手元供養専用の骨壺やオブジェなどを利用する場合は、数千~数万円で購入できます。この他、遺骨そのものを加工してアクセサリーやオブジェなどにする場合は、10~30万円程度の費用がかかります。

ただし、自宅に遺骨を置いていても、供養する本人が亡くなる前までには、どこかに納骨するか散骨しなければなりません。遺骨加工品についても、厚労省は遺骨を加工したダイヤモンドには「焼骨である」という見解を示しているので、遺骨相当の対応が必要になるかもしれません。
参考:「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」Q5[遺骨を利用したダイヤモンドについて]に関する質問

手元供養について詳しく >>

墓石のお墓を建てない供養の方法・費用

現代では、墓石を建てず、承継者もいらないお墓がたくさんあります。
墓石を建てないお墓について紹介します。

合葬墓(合祀墓):3万~30万円程度

合葬墓とは、一つの納骨室に不特定多数の人を埋葬するお墓です。「祀る」という宗教的な意味合いを伴って、「合祀墓」と呼ぶこともあります。
一人あたり3万~30万円程度で使用でき、お墓の中では最も費用を抑えられます。
不特定多数の契約者と一つのお墓を共有するので承継不要で、お参りなどは共用の供物台などを利用します。一度埋葬すると遺骨が取り出せなくなる点に注意しましょう。

近くの合葬墓を探してみる >>

樹木葬:3万~150万円程度

樹木葬とは、樹木や草花を墓標とするお墓です。ほとんどの場合で承継を必要としません。
形態や使用人数などによりますが、費用相場は3万~150万円程度です。
樹木葬と聞くと、いわゆる「大自然の中で自然に還る」というイメージがありますが、これは全体から見ると一部です。特に都会や住宅地にある樹木葬は、花壇のような区画に石室を設けて納骨し、一定期間後は合祀墓に移動して供養するものが一般的です。

近くの樹木葬を探してみる >>

納骨堂:10万~200万円程度

納骨堂とは、屋内に遺骨を安置する施設です。多くの場合で承継不要で使用できますが、大きな区画では承継できることもあります。
承継不要のお墓としては費用は高めで、10~200万円程度かかります。
屋内でお参りできるため、季節や天候を問わずお参りできます。

近くの納骨堂を探してみる >>

その他の永代供養墓:10万~200万円程度

永代供養墓とは、親族に代わってお寺などの墓地管理者が故人を供養してくれるお墓です。先に紹介した合祀墓、樹木葬、納骨堂も、永代供養墓として販売されています。この他にも、各社が様々な形態で永代供養墓を開発しており、見た目や使用人数、ロケーションなども非常にバリエーション豊かです。

近くの永代供養墓を探してみる >>

墓じまいの方法・費用

今あるお墓をなくしたい人は、「墓じまい」をします。
墓じまいとは、お墓を撤去して墓地を更地にし、管理者に返還するまでの一連の流れを言います。
墓じまいをするにはすでに納骨されている遺骨を移動する必要があります。納骨されているお墓から遺骨を移動することを、「改葬」と言います。

墓じまいの費用

墓じまいの費用は、解体から遺骨を供養するまでで、おおむね30万~300万円程度がかかります。
費用の内訳は、以下のようになります。

墓じまいの費用の内訳
墓石解体工事費 8~10万円/㎡程度
魂抜きのお布施 1~5万円程度
離檀料
(お寺の場合)
1~20万円程度
新しい供養先 3~250万円程度

墓じまいの方法

墓じまいは、次のような流れで行います。

墓じまいの流れ
1.親族に相談する
まずは、墓じまいをすることについて、家族や親族の同意を得ておきます。
2.墓地管理者に相談する
お寺の墓地であれば、そのまま管理者に墓じまいをする旨を伝えて構いません。
お寺の場合は、まずは決定事項としてではなく、相談という形でお話ししましょう。
3.解体工事の見積もりを取る
管理者の許可が取れたら、石材店に解体工事の見積もりをしてもらいます。
民営霊園や一部の寺院墓地では、見積もりを取れる業者が決まっています。
公営墓地であれば、複数社で見積りをとる相見積もりができます。
4.遺骨の引っ越し先を決める
石材店を選ぶのと並行して、遺骨の供養先を決めます。
お墓や、散骨業者を選定します。
5.解体工事をする石材店と契約する
納骨先と費用の目処が経ったら、石材店と契約します。
6.役所で改葬手続きをする
遺骨を移動するために、現在のお墓がある自治体役所で「改葬手続き」をします。
7.工事と法要の日程調整
石材店やお寺と相談して、「閉眼法要」という遺骨の取り出し前におこなう法要と、工事の日程を調整します。
8.墓石解体工事・更地返還
閉眼法要をした後に遺骨を取り出し、工事をしてもらいます。
閉眼法要、遺骨の取り出し、解体工事はそれぞれ別の日でも構いません。
9.取り出した遺骨を供養する
取り出した遺骨を、あらかじめ決めたおいた供養先で供養します。

墓じまいについてもっと詳しく >>

お墓がいらない人が終活で準備しておくこと

自分はお墓がいらないと思っていても、自分の遺骨を自分で供養することはできません。
自分の意向を叶えてもらうために、終活で準備しておくべきことを紹介します・

供養先を生前に契約しておく

まずは、自分が元気なうちに供養先を決めておきます。
散骨なら散骨業者、永代供養墓なら墓地や霊園です。

周囲に死後の意向を伝えておく

供養先を決めたら、家族などの周囲の人にどこと契約したかを伝えておきます。
エンディングノートなどに記入しておくこともおすすめです。
なお、遺言状を自筆証書遺言などを書き残しても死後すぐには開封できず、49日の納骨後に初めて内容が確認される場合もあります。日ごろから周囲には意向を伝えておきましょう。
一人暮らしの場合は、発見されやすい所に契約先との契約書を置いておくことも有効です。

死後を託す人を決める

確実に自分の意向に沿って遺骨を供養してもらうために、死後の手続きなどを誰に託すかを決めて、その人にもその旨を伝えておきます。
家族がいれば、基本的には家族にお願いします。
身寄りがなければ、法律事務所などがサービスとして行っている「死後事務委任契約」なども利用できます。

お墓は必要?

お墓がなくても、遺骨を供養することはできるのでしょうか。

お墓は必ずしも必要ではない

ここでは、お墓を「遺骨や遺体を納める場所」とします。
遺骨は「散骨」することで、お墓を持たずに供養することができます。
散骨とは、海や山などの自然環境に、粉状に砕いた遺骨をまくことを言います。
したがって、必ずしもお墓を持つ必要はありません。

お墓はあった方がいい?

お墓があった方が良いかどうかは、納骨される本人と遺される家族次第です。
お墓があれば、遺された人が故人を偲ぶときの拠り所になります。墓前で報告や決意表明などをすることで故人との繋がりを感じ、寂しさが和らぐこともあるでしょう。
一方で、お墓参りやお墓の維持を負担に感じて、それを子どもたちに引き継ぎたくないという方もいます。
お墓を持つかどうかは、ご家族と話し合って決めることをおすすめします。

散骨をしない限りは墓地が必要になる

ただし、散骨をしなければ、いずれはどこかの墓地を契約しなければなりません。

「墓地、埋葬等に関する法律」では、遺体や遺骨は、行政に墓地としての許可を受けた区域以外に埋葬または埋蔵することとしています。

第2条 5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
参考:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)

また、遺骨をゴミ収集に出したり、公共の場に放置したりすることは、刑法190条に違反します。

第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

参考:刑法 | e-Gov法令検索

加えて、遺骨を加工したアクセサリーなども、通常の遺骨と同様に扱わなければならない可能性があります。
厚生労働省は、「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」内で、以下のように回答しています。

遺骨を利用したダイヤモンドは、法律上の「焼骨」に該当するのか教えてください。(一般参加者より)
-原則的として、厚労省は「やはり『焼骨である』」という見解を示しております(平成24年7月24日健衛発0724第1号)。
しかし、ダイヤモンドとなった時点で融通性が飛躍的に高まることとなりますので、祭祀財産ではなく、相続財産と見做される可能性も出てくるかとも考えられます。この祭祀財産か相続財産であるのかについては、議論とされる処であります。

参考:「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」Q5[遺骨を利用したダイヤモンドについて]に関する質問

つまり、遺骨が手元にある以上は、棄てたり、(墓地として許可を受けていない)自宅の敷地内に埋めたりすることはできず、散骨するか、行政の許可を受けている墓地に納骨する必要があります。
これは遺骨を自宅で管理している場合も同様で、管理している本人が亡くなると、管理されていた遺骨は、遺された人が散骨または納骨をすることになります。

※『お墓を持たないで遺骨を供養するには?』では、お墓の意味やこれからのあり方についても解説しています。併せてご覧ください。

まとめ

散骨をすれば、遺骨を供養するためにお墓を持つ必要はありません。
ただし、現代では墓石を建てるお墓以外にも、様々なお墓が開発されています。
お一人から使用できる安価なものや、少人数で使用できる気軽なもの、承継や管理費が不要なお墓もあるので、そのようなお墓を検討するのもいいかもしれません。
なお、遺骨を棄てたり、公共の場に放置することは違法なのでできません。

跡継ぎのいらないお墓をお探しですか?

お墓さがしでは、全国の跡継ぎ不要のお墓を紹介しています。
墓石のお墓を建てるのは難しい、少人数で気軽に使用できるお墓が欲しいという方は、ぜひこちらから探してみてください。

近くの承継不要のお墓を探す >>

執筆者情報

お墓さがしスタッフ

佐野

経歴

2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。