お墓がいらない人が知っておくべき終活のポイント

お墓というとどういうイメージがありますか。
先祖代々守ってきたものなので、自分もそれを継承していき、子供にも継承してもらいたいというものでしょうか。
あるいは、子供に負担をかけるくらいならお墓はいらないと考えるでしょうか。
最近では前者の考えの人が減り、後者の考えの人が増えいるという傾向があります。
しかし、単にお墓がいらないといっても、亡くなれば埋葬しなければなりません。
ですからお墓がいらないと考えている人は、自分の遺骨をどうしてほしいかということを、終活の一環として考えておく必要があります。
そこでここでは、終活におけるお墓がいらない人が知っておくべきポイントを解説します。
目次
お墓の必要性は現代でも存在するのか
冒頭でお墓がいらない人は増加傾向にあると書きましたが、実際にお墓の必要性という価値観は現代においてどのように変わってきているのでしょうか。
お墓がない人=社会性がない人、は過去の常識
この30年ほど前までの日本では、人が亡くなったらお墓に入ることが当然以上の常識でした。
埋葬されるべきお墓を持たない人は、自分の所属する家がない、社会性がない人という評価だったのです。
しかし現代においてはそのような価値観は薄らぎ、お墓がないこともその人の死生観の1つの反映なので、人それぞれだという考え方をする人が増えてきました。
お墓がない家、お墓がいらない人が増えている?
それは統計データにも表れています。
まずお墓を持っていない家の割合は、東京都で38.1%(※1)、大阪市で59.1%(※2)です。
つまり東京でも全体の4割の人はお墓を持っていないのです。
さらに、現在墓を持っていない人のうち、お墓を購入することを考えていない人は東京都で36.3%、大阪市で18.4%です。全体に対する割合で言えば、お墓を持たないと決めている人が、10人に1人はいるわけです。この数字は、10年前と比べて大きく増加しています。
お墓が買えない場合だってある
お墓を持たないと決めている人の理由は、大阪市で言えば、1位が「お墓の維持管理が大変で子供に負担がかかる」で45.2%、「お墓を買っても継承することもがいない」が19.6%、「お墓の入手や維持のお金がない」が13.1%、「お墓の維持、管理が大変」が10.1%となっています。
つまり積極的な意思でお墓を持たないと決めている人がいる反面、金銭的な理由からお墓を持つことをあきらめている人もいるわけです。
※1 「東京都の霊園」アンケート
※2 「墓地に関する意識調査」
お墓を持たないメリット、デメリット
ではお墓を持たないことにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
お墓を持たないメリット
まずメリットは以下の通りです。
お金をかけないで済む
霊園にお墓を購入すると、一般的なもので永代使用料と墓石の費用で200万円以上かかります。
さらに毎年管理費も必要です。
これだけのお金があったら、現在の生活を充実させるために有効に使えるでしょう。
承継者の心配が不要
お墓がなければ、お墓の管理や回忌法要などもしなくて済むため、承継者も不要です。
特に最近は生涯独身の人や子供のいない夫婦が増えているので、承継者の心配をしないで済むことは大きなメリットです。
子供に負担をかけないで済む
お墓を管理するには、経済的な負担だけではなく、時間的な負担や、場合によっては肉体的な負担が発生します。
自分の代ではそれは我慢できても、子供にまで負担をかけたくないという人は多いでしょう。
お墓がなければそのような負担は皆無です。
樹木葬や散骨などをすれば自然に還ることができる
人間は自然から生まれて自然に還ることが最も自分の気持ちに合っていると考える人が増えています。
冷たい墓石の下にずっと埋葬されるよりは、お墓を持たずに木の下に埋葬する樹木葬や、海や山林に遺骨を撒く散骨をする方が、亡くなったら自然に還りたいという希望が実現できます。
お墓を持たないデメリット
一方でお墓を持たないデメリットは以下のようなものです。
社会性がないと言われる
冒頭でも書いたように、お墓を持って維持管理し、自分もお墓に埋葬されることが、社会人としても最も基本的な常識だという考えの人は依然としています。そのような人が親族にいた場合は、お墓を持たない選択をすることで、蔑視されたり非難されたりするかもしれません。
合祀されると他人の遺骨を混ざってしまう
お墓を持たないで埋葬される方法に合祀墓があります。
これはほかの人と一緒に遺骨を埋葬し、その上に供養塔を建てるというものです。
しかし、他人の遺骨と自分の遺骨が混ざってしまうことに違和感を持つ人もいるはずです。
遺族が故人を偲ぶ場所がない
亡くなった本人はいいですが、遺された家族にとってお墓がないことは、お参りして故人を偲ぶ場がないということです。
それは遺族が故人を失った悲しみを緩和させていく上ではマイナスでしょう。
お墓を作る費用が子孫の負担になる
自分の代ではお墓がなくても問題ない場合でも、お墓がないという問題点は子供以下の代に引き継がれることになります。
言ってみれば問題の先送りです。子供が自分でお墓を建てる選択をした場合、その費用は子供がすべて負担することになります。
子供にそのような負担要因を残すことは本意ではないという人も多いでしょう。
散骨の種類と方法、費用
お墓を持たないメリットとデメリットは以上のようなものです。
それを理解したうえで、やはりお墓を持たないと決めた場合であっても、遺骨は本人の死後、何らかの方法で処理していくことが必要です。
その1つの方法が散骨です。
遺骨を墓地に埋葬しないのが散骨
散骨とは火葬した遺骨をパウダー状にして、海、川、山林などの撒く方法です。近年この散骨を選択する人が非常に増えています。
散骨の種類
散骨には遺骨を撒く場所によっていくつか種類があります。
・海洋散骨
海洋散骨は遺骨を海に撒く方法で、日本の散骨の中では最も多いものです。
海洋散骨をする上では、自分で撒く場所を検討し自分の力でその場所に行って散骨する方法、業者に遺骨を託しすべて行ってもらう方法、業者が用意した船に乗り自分で散骨する方法があります。
・山林散骨
山林散骨は山の中に散骨する方法ですが、その山林を自分で所有しているか、所有者が許可している山林であるかのどちらかの場合しかできません。
・空中散骨
空中散骨はヘリコプターやセスナ機などで上空から海に遺骨を撒く方法です。
・宇宙散骨
遺骨をカプセルに入れて、ロケットや気球で成層圏まで運び、その場所で遠隔操作で散骨するのが宇宙散骨です。
・海外散骨
日本ではなく、インドのガンジス川や、故人の海外の思い出の地で散骨する方法もあります。ただし現地の規制があるので、コーディネーターに依頼する必要があります。
散骨の費用は
散骨の費用は、お墓を建てることに比べればはるかに安いです。
また毎年の管理料も当然かかりません。
海洋散骨の場合は、船を1つの家族で単独でチャーターする場合に20~30万円、ほかの遺族と一緒の船に乗って散骨する場合で10万円前後、業者にすべて委託すると5万円前後です。
山林散骨の場合は、霊園の中に木を植えてその下に埋葬する樹木葬の場合で50万円前後です。
自分で山林に撒く場合は、その場所の取得費を除けば基本的に無料です。
宇宙葬は20万~100万円が相場ですが、中には月面に撒く250万円程度のプランもあります。
今あるお墓を撤去する方法、費用
今すでに先祖から伝わってきているお墓があって、自分の代ではお墓に入らないと決めている人の場合、今あるお墓は管理者がいなくなります。すると管理費が支払われなくなるため、いずれ無縁墓として処分されます。お墓に埋葬されていた先祖の遺骨は無縁仏として、まとめて処分されてしまいます。先祖の遺骨がそのように扱われることを避けるには、自分の代でお墓を処分し、中の遺骨も適切に供養することが必要です。その方法が「墓じまい」です。
墓じまいとは「お墓を撤去する」ということ
墓じまいの方法は、お墓の中の遺骨を全て取り出し、霊園の管理者が回忌法要や盆施餓鬼などを代行してくれる永代供養にすることです。
そしてお墓の墓石は撤去し、更地に戻して、霊園側に返却します。まさにお墓を閉めるので、墓じまいと呼ばれるのです。
墓じまいのステップは
墓じまいをするためには以下のステップを慎重に踏むことが大切です。
親戚に理解を求める
墓じまいは古い価値観を持っている人にとっては、先祖への孝養と供養を拒否した、極悪で非常識な行為だと捉えられかねません。そのような非難を避けるためには、墓じまいを考えたら関係が深い親戚とよく話し合い、墓じまいについて理解を求めることが重要です。
霊園管理者に墓じまいの意思を伝える
墓じまいをするということ今埋葬されている遺骨を改葬することです。
改葬には霊園の管理者の許可が必要なので、墓じまいをする場合には、霊園の管理者にその旨を伝え、親戚と同様に承諾をしてもらわなければなりません。
石材店に連絡する
お墓から遺骨を取り出し、お墓を撤去して更地に戻すには石材店の力が必要です。
閉眼供養を行う
お墓には先祖の霊魂が宿っているとされています。霊魂がいるお墓は撤去できませんから、お墓から霊魂を抜く必要があります。これが閉眼供養です。閉眼供養は僧侶や神官でなければできません。
遺骨を取り出す
閉眼供養をしたら、遺骨が取り出せます。
墓域を更地に戻す
お墓は実は所有物ではなく、霊園から借りているものです。ですから賃貸住宅と同じように、退去する場合には原状回復、つまり更地に戻す必要があります。
墓じまいの費用
墓じまいの費用は以下のように、目的によってそれぞれ必要です。
墓域の更地化費用
お墓の墓石を撤去し、墓域を更地に戻す費用の相場は、墓域1平米につき約10万円です。
日本の平均的な墓域の面積は1.5~2平米なので、総額15万~20万円になります。
閉眼供養のお布施
閉眼供養の費用は、僧侶へのお布施と、車代、食事代で4万~6万円です。
会食の費用
閉眼供養をした後、参列者の会食を行う場合は、1人あたり5,000円程度の予算を見ておく必要があります。
檀家を離れる離檀料
民営霊園や公営霊園ではなく、寺院霊園の場合、墓じまいはその寺院の檀家から外れるということです。檀家から外れるためには、離檀料と言う費用を支払う必要があります。離檀料の相場は10万~20万円ですが、寺格や地域によって上下します。
まとめ
この世に全く係累のない人でない限り、お墓を作らない選択は、家族や周囲に何らかの影響を与えることになります。
また、お墓を作らないと言うことだけ決めて自分の遺骨の処理を決めないのはあまりに無責任です。
ですからお墓を作らない選択をするためには、ここで挙げたようなさまざまなポイントを慎重にクリアしていく必要があります。
とは言え、冒頭で触れたようにお墓を作らないという人は確実に増えています。
もしもやはりお墓を作らないことを考えているのであれば、以上で解説した内容を参考に、誰にも迷惑をかけず、なおかつ自分で満足できる方法を選択し、ポイントをしっかり実行しましょう。