自宅墓とは?種類や費用を解説!メリット・デメリットは?

近年では散骨や樹木葬などの新しい供養の方法が広がり、従来のような墓石のお墓に納骨することはもはや常識ではなくなってきました。
遺骨を自宅などで供養する「手元供養」もまた、新しい供養の方法の一つです。
今回ご紹介する自宅墓は、手元供養品の一種です。
故人を身近に供養したい方は、ご一読ください。
なお、遺骨の自宅供養全般については、『自宅供養の方法を解説!』をご覧ください。
目次
自宅墓とは
自宅墓とは、自宅に設置できる、お墓を模した(あるいはお墓の役割を担う)手元供養品です。
「自宅墓」として販売されているものの様態は様々ですが、主には従来のお墓を意識した、墓石の製品が主流のようです。
自宅墓の種類と費用
自宅墓として販売されている製品には、様々なものがあります。
形態などにもよりますが、費用は5万~40万円程度です。
墓石タイプ
墓石の入れ物の中に骨壺で納めるタイプです。
費用は、10万~30万円程度です。
よりお墓に近いイメージでお参りできます。墓石なので、彫刻をすることもできます。
形状は、灯篭のような和風なものや、ボックスのような洋風なものなどがあります。
全骨用と分骨用があり、全骨用の方が費用高くなります。
仏壇タイプ
納骨スペースがある手元供養仏壇が、自宅墓として販売されていることがあります。
費用は、10万~40万円程度です。
基本的には家具の上に置く上置き仏壇で、背面や台座部分に納骨スペースがあります。
床に置く台付きのタイプだと、費用はより高くなります。

その他
他にも、仏具を置かない簡易ステージに、写真や骨壺置くタイプなどもあります。
ステージタイプでは、簡易なもので5万円程度から購入できます。
自宅墓のメリット
自宅墓のメリットには、以下のようなものがあります。
- 外出しなくてもお参りできる
- 故人を身近に感じることができる
- 墓地規約や維持費の縛りがない
外出しなくてもお参りできる
家にお墓があるので、外出せずにいつでもお参りできます。
老後に車を運転できなくなった時のことや、足腰が立たなくなった時の心配も無用です。
天気も季節も関係なく、いつでもお参りできます。
故人を身近に感じることができる
大切な人と離れがたいという方は、割り切って自宅墓などの手元供養にしてしまってもいいかもしれません。
どう感じるかは人によりますが、いつも故人を身近に感じることで、寂しさが和らぐこともあります。
墓地規約や維持費の縛りがない
墓地の規約に縛られず、気軽にお墓を使えます。
例えば、彫刻の制限もありませんし、ペットと一緒に供養したり、宗教の違う人同士を一緒に供養したりすることもできます。
一度購入すれば年間管理費もかからず、管理も気軽です。
自宅墓のデメリット
- 供養している本人が亡くなると遺骨の処遇に困る
- 気持ちが切り替えられなくなる可能性がある
- 家を訪れる親族などに反発される可能性がある
供養している本人が亡くなると遺骨の処遇に困る
納骨先を決めておかないまま自宅墓を供養する人が亡くなると、遺された人が遺骨をどうしたらいいか分からなくなります。
自宅で供養していても遺骨の納骨先はあらかじめ決めておくことが望ましく、二度手間と考えることもできます。
気持ちが切り替えられなくなる可能性がある
遺骨を身近に置いておくことによってどのような心情になるかは人によりますが、かえっていつまでも悲しい気持ちを引きずってしまう方もいます。
納骨に期限はないので、自分の気持ちとじっくり向き合いながら、供養の方法を考えましょう。
親族などに反発される可能性がある
かつてはお墓を建てて納骨することが一般的だったので、納骨しないことに理解を示さない親族もいるかもしれません。
また、故人とそれほど親しくなければ遺骨に忌避感を持つ方もいるので、実際に家に訪問することがあれば不快に思うかもしれません。
全骨供養と分骨供養
自宅墓には、全身の遺骨(全骨)に対応するものと、遺骨の一部を分けたもの(分骨)に対応するものがあります。
全骨供養の注意点
自宅墓では、全骨供養に対応できる製品はどちらかといえば少なめです。
また、全骨を納められる骨壺は大きいので(関東で7寸壺)、供養するスペースは広めに考えましょう。
なお、自宅墓で供養をするといっても、将来的に自分が元気なうちには納骨先を決めておく必要があります。
この際、火葬場で火葬後にもらう、火葬許可証に押印された書類が必要です。
通常は骨箱に入れてくれるので、必ず遺骨と一緒にしてなくさないようにしましょう。
分骨供養の注意点
分骨供養をする場合は、火葬場で分骨する旨を伝え、分骨証明書を発行してもらいましょう。
将来的に手元供養にした分骨を納骨する可能性がありますが、その際に分骨証明書が必要です。
火葬場で分骨する場合は、あらかじめ分ける分の骨壺を用意しておきます。
手元供養にしなかった分の遺骨は、通常通り、納骨または散骨をして供養します。
自宅墓は違法ではない?
自宅墓は新しい供養の形式で、現在のところ、その違法性についての議論は確認できる限りなされていません。したがって、ここで直ちに合法であるか違法であるかを断言することはできません。
しかしながら、遺骨を自宅で管理するという様態はこれまでも広く見られていることから、今後これを違法として罰するということは現実的ではないように思えます。
お墓や遺骨の取扱いに関する法律には、「墓地、埋葬等に関する法律」と「刑法第190条(死体損壊等)」があります。
「墓地、埋葬等に関する法律」と自宅墓
「墓地、埋葬等に関する法律」(以下、「墓埋法(ぼまいほう)」と言います。)は、その名の通り、お墓や墓地、火葬や埋葬等に関して定めた法律です。
墓埋法には、納骨の期限を定める規定はないので、この点、自宅で遺骨を管理しておくことは墓埋法に抵触しません。
次に、墓埋法には、以下のような条文があります。
第2条
4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
ここから、「焼骨を埋蔵する」「墳墓」は、「墓地として都道府県知事の許可をうけた区域」でなければ作ることができません。
例えば、庭先にお墓を建てて納骨することは、墓埋法に抵触します。焼骨を埋蔵した施設は「墳墓」になってしまうからです。
自宅墓がこれに抵触するかどうかについては、自宅墓に納骨することが「埋蔵」にあたるかを考える必要がありそうですが、これに関する判例や論文などは見つけることができませんでした。
なお、「埋蔵」の定義は墓埋法の中ではされていません。字義通り捉えるなら埋めることが要件になりそうですが、「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」によると、納骨室が地上にある丘カロートのお墓の場合も、そこに焼骨を納めることは「埋蔵」にあたるとしています。
参考:「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」Q2.
参考:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
一方、従来の手元供養品にあるような骨壺や仏壇内に収骨し安置するものについて「埋蔵」であるとする記述は、確認されませんでした。
「刑法第190条(死体損壊等)」と自宅墓
刑法第190条(死体損壊等)の条文は、次のようになっています。
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
自宅墓に納骨するにあたっては、遺骨を粉状に粉砕する「粉骨」を行うことがあります。
「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」によると、粉骨自体は刑法第190条に抵触するとしています。
参考:「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」Q6.
粉骨を伴う葬法には、他に散骨やその他の手元供養などが挙げられます。これらも明確な司法判断が下されないまま黙認される流れとなり、今日では広く実施されています。
しかしながら、今から粉骨を伴う葬法を全て違法として罰することは、現実的ではありません。
令和2年度の厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」において、「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」が取りまとめられ、さらにその中で「焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと」規定されていることからも、今後は適法のものとして法整備を進める方向になっていくことが予想されます。
参考:令和2年度厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)
まとめ
自宅墓とは、自宅に設置できるお墓のような手元供養品です。
墓石のお墓をイメージした墓石タイプの製品や、収骨スペースを付けた仏壇のタイプなど、様態は様々です。
費用は5万~40万円程度です。
いつでも気軽にお参りできて故人を身近に感じられる一方、将来的にはどこかに納骨しなければならないという点に注意しましょう。



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自宅墓に関するよくある質問
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自宅墓にはどんなメリットがありますか?
いつでも故人を身近に感じることができます。天候や、将来身体が不自由になった時の心配をせず、気軽にお参りができます。
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自宅の庭にお墓を建てることはできますか?
都道府県の許可を得ていない土地にお墓を建てて納骨することはできません。ただし、納骨せずに石碑だけ建てることは法律に抵触しません。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。