樹木葬の流れを徹底解説!検討・契約・納骨・お参りまで

日本人の死生観はこの十年ほどで大きく変わってきました。
それは葬式を豪華に行わない「個人葬」や「家族葬」の増加にも表れていますし、またお墓そのものも、骨壺に入って冷たい墓石の下に埋められるよりは、木の下に埋めてもらって自然の生命の循環の中に戻りたい、という樹木葬の希望が増えていることでも明らかです。
そこで今回の記事では、樹木葬はどのように準備し、どのように行えばよいのかについて解説していきます。
目次
樹木葬とは
まず、樹木葬のあらましについて解説します。
樹木をシンボルとしたお墓
現在日本で一般的なお墓では、「○○家之墓」などと掛かれた墓石を建てますが、この墓石の代わりに樹木を植えるのが樹木葬です。
樹木の植え方は場所によって異なり、1人または1区画につき1本植える場合もありますし、樹木が何本か植わっている芝生のようなところに随時遺骨を埋葬していくタイプもあります。
1本の樹木の根本周辺に遺骨を埋葬していく場合、この樹木はシンボルツリーと呼ばれます。
また、昨今では、樹木の代わりに花を植栽するお墓についても樹木葬という名前で売り出されています。
継承を必要としない永代供養墓
一般的なお墓の場合は、本家一族が代々引き継いでいくことを前提としています。
対して、樹木葬は引き継いでいくことを前提としない、一代限りのお墓です。
樹木葬は承継を前提としないので、多くの場合「永代供養」がついています。
永代供養とは、お寺などの墓地管理者が供養を続けてくれることを言います。
親類にお墓の面倒を見てくれる人がいなくなっても、お墓が荒廃することはありません。
跡継ぎが不要ということも、樹木葬が増えている理由の一つです。
ただし、土に還さないタイプの樹木葬の場合、個別の安置期間に期限が設けられています。
期限後は合祀墓にて他の遺骨と一緒に供養される形となるので、注意しましょう。
費用が安い
樹木葬は遺骨を埋葬するための小さなスペースだけが必要で、かつ墓石なども購入しなくて済むため、費用が非常に安くなっています。
一般的に墓石を建てるお墓を持とうとすると、土地代を合わせて150-300万円程度かかると言われています。
土地が安い地方で墓石も最低限のものにするとしても、少なくとも70万円はかかります。
一方、樹木葬の場合は、最も安くて5万円程度でできます。
もし複数人で使う家族用の区画を買うとしても、40-80万円くらいで購入できます。
自宅の庭には樹木葬はできない
では、自宅の庭の木の根元に遺骨を埋葬して、樹木葬とすることはできるのでしょうか。
残念ながら、自宅で樹木葬をすることはできません。
遺骨の埋葬については、「墓地、埋葬に関する法律」(墓埋法)によって規定されています。
墓埋法によると、遺骨の埋葬は、墓地として行政の許可を受けた土地でなければ行うことができません。
条文では以下のように記載されています。
第2条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
自宅の庭が墓地として行政の許可を受けているのはかなり特殊な場合に限られますので、自宅に遺骨を埋葬することはできません。
なお、現状個人で所有する墓地(墓地)の新設については、山間部などの僻地で周りに墓地がないといった場合でないと許可が下りないため、自宅の庭を墓地として申請しても、墓地の開設許可はまず下りません。
樹木葬の種類
一口に樹木葬と言っても、様々な種類があります。
ここでは、樹木葬にはどんな種類があるのかを解説します。
立地による種類分け
樹木葬は、立地によって次のように種類を分けることができます。
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里山型樹木葬 | 公園型樹木葬 |
里山型樹木葬

里山型樹木葬は、その名の通り、里山の中の木の根元に遺骨を埋葬する樹木葬です。
里山とは、1つの区画に山と森林があるエリアを里山と言います。
ほとんどの場合で土中に直接、または自然に還る素材の袋に入れて遺骨を埋葬するため、遺骨は土に還ります。
立地はアクセスしづらい所にある場合が多いこと、お墓を山林に持つことになるため、高齢になった時にお参りが大変になることに留意しましょう。
公園型樹木葬

公園型樹木葬は自然を人工的に霊園の中に再現し、その中の木の下に埋葬する方法です。
里山型と違って休憩所やトイレなどの施設も完備されているので、お参りする遺族にとっては便利で安全な埋葬方法です。
公園型の場合は、遺骨は骨壺に入れられ、樹木の根元の石室に納められることが主流です。
したがって、遺骨は自然に還りません。
遺骨は一定期間の地、墓所内にある合祀墓に移動され、他の遺骨と一緒くたに埋葬されます。
合祀
埋葬方法による種類分け
遺骨の埋葬方法によっても、樹木葬は次のように種類を分けることができます。
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個別型樹木葬 | 集合型樹木葬 | 合葬型樹木葬 |
※合葬型樹木葬は、埋葬する穴は個別の場合もある
合祀型樹木葬

一本のまたは数本の樹木の周りに、複数の遺骨を埋葬します。
このタイプでは、土に直接または自然に還る素材の袋に入れて埋葬されるため、遺骨は長い年月をかけて自然に還ります。
合祀墓と言えば普通は遺骨が他の人と一緒になりますが、樹木葬で合祀と言った場合には穴が個別に用意され、他の遺骨と混ざりません。
樹木葬の中では費用を最も安価に抑えられます。
ただし、区画がはっきりと分かれていないため遺骨をどこに埋葬したかが分からなくなる、一度埋葬したら後に取り出せなくなるなどのデメリットもあります。
集合型樹木葬

一本または数本の樹木の周りに、複数の区画を設けます。
ほとんどの場合で区画には石造りの納骨室が用意されており、遺骨は骨壺に入れられた状態で納められます。
したがって、土に遺骨を還すというイメージからは離れます。
ほとんどの場合で個別の安置期間が定められており、期間後、遺骨は合祀墓に移されて供養されます。
樹木の代わりに、花を植える場合もあります。
個別型樹木葬

一人または一区画ごとに一本の木を植樹します。
費用の面では最もコストがかかるタイプです。
里山型の場合は遺骨を土に還すタイプが多いです。
公園型の場合は、遺骨を骨壺に入れて納骨するため、土には還りません。
また、個人よりは、夫婦や家族で利用されることが多いでしょう。
集合型と同様、ほとんどの場合で個別の安置期間が設けられており、期限が過ぎると遺骨は合祀墓に移動されます。
樹木葬を契約するまでの流れ
では樹木葬墓地を契約し、埋葬されるまでにはどのような手順が必要なのでしょうか。
墓地を探す
最初に行わなければならないのは、樹木葬を実施している霊園や墓地を探すことです。
樹木葬墓地のスタイルや埋葬方法は以上で挙げたように種類がありますから、自分の望みと合致した墓地を探しましょう。
見学する
樹木葬霊園は、ネットやパンフレットを見ただけでは決めずに、必ず現地を見学した上で決めましょう。
樹木葬霊園の場合、自然の立地を実現した場所の確保のために、交通アクセスが悪かったり、お参りするまでに長い坂道を歩かなければならなかったりする場合も多いからです。
自分は埋葬される側なのでこれらの点には構わなくても、お参りする遺族にとってお参りしやすいことは必要な条件ですから、しっかり確認しましょう。
家族とよく話し合う
樹木葬の特徴は、埋葬される本人は樹木葬を強く希望していても、遺族となる家族は樹木葬に違和感を感じている場合が多いことです。
家族の違和感や拒否感を無視して樹木葬を強行すると、あとあとトラブルのもとになりますから、樹木葬を選ぶ前によく家族と話し合いましょう。
検討して契約する
立地や施設が気に入ったら、霊園の契約内容と費用の内訳をしっかり確認したうえで契約しましょう。
後で述べるように、樹木葬霊園の場合は樹木葬特有の問題点やトラブルがありますので、問題点をいかにクリアしているかについてチェックが必要です。
契約から納骨まで
お墓の利用者として登録されている方が亡くなったら、納骨します。
納骨の際には、火葬証明書、あるいは埋葬許可証が必要です。
火葬が終わると火葬場から発行されますので、なくさずにとっておきましょう。
大抵の場合は火葬場か葬儀社のスタッフが骨壺と一緒に骨箱に納めてくれるようです。
契約した墓地に納骨したい旨を連絡し、納骨の日程を確認します。
納骨の法要の際にはお坊さんも呼ぶ必要があるので、お世話になっているお寺にも連絡しましょう。
当日、お坊さんにお経をあげてもらった後、霊園のスタッフまたは担当の石材店が、樹木葬に納骨します。
納骨後のお参りについて
樹木葬をした故人を遺族がお参りする場合はどのよう流れになるのでしょうか。
お参りの流れは里山型と公園型で異なります。
里山型の樹木葬へのお参りの仕方
まず里山型の場合のお参り方法です。
基本的に火は使えない
墓参時にはろうそくや線香に火を灯すことが一般的ですが、里山型の場合、火は厳禁です。
お花の供え方
ろうそくや線香を供えられない代わりに、里山型の樹木葬の場合は、花を供えます。
しかし花の供え方も、通常の墓参りとは異なり、花瓶などがないため、花は土の上に直接置きます。
服装
里山型の樹木葬の場合、立地はまさに山の中にあることがほとんどです。したがって墓参する場合は、半ばハイキングや軽い山登りの時にするような軽装をしていく必要があるでしょう。
時間帯や天候
里山型の樹木葬の場合、あまり遅い時間や天候の悪い時の墓参は、安全性の点で問題が発生しますのでおすすめできません。里山型の樹木葬の場合は天気の良い午前中に墓参をするようにしましょう。
公園型の樹木葬へのお参りの仕方
次に公園型の樹木葬の場合です。
お供え物が置けないことも
公園型の樹木葬の場合は、木の下に線香台などがあるため、火は使えることがほとんとです。しかしお供えまでおける場所が確保されているかどうかは、その墓地にもよります。
合祀の場合シンボルツリーの前でご供養
公園型の樹木葬で、ほかの遺骨と合祀される場合は、墓標となるシンボルツリーが立てられ、その下に遺骨は埋葬されています。ですから墓参はそのシンボルツリーの下で行うことになります。
後悔しないために!樹木葬で気を付けるトラブル
樹木葬の場合、樹木葬特有のトラブルがあります。
以下で述べるようなトラブルに巻き込まれないように、契約前に契約内容などについてしっかり確認しましょう。
線香、ろうそく、花を供えられなかった
上でもふれたように、里山型の樹木葬霊園は火気厳禁です。
公園型の場合でも火は使えないことがあります。
その場合、線香もろうそくも供えられません。花も花台がない場合が多いので、花は地面に置くか、供えることをあきらめるかしかありません。
交通アクセスが非常に悪かった
樹木葬霊園は自然を確保するために、市内からかなり距離があったり、最寄りの駅から徒歩で何十分もかかったり、そもそも墓参する交通手段が非常に不便な場合もあります。
アクセスが悪いために、せっかく買ったお墓からも足が遠のいてしまうことも考えられます。
樹木葬を購入するときは、後にお参りする遺族の便利も考えて選びましょう。
家族と一緒に埋葬できなかった
樹木葬の区画は、納骨できる人数が決まっています。
合祀タイプであれば何名でも埋葬できますが、家族で一区画持つということはできません。
家族で利用する場合は、その区画で将来的に全員入れるかを確認しましょう。
また、個別の安置期間にも注意が必要です。
「最後の納骨から13年」など、全員埋葬されてから期間を開始するタイプと、「契約時から50年」など、契約時点から期間を開始するタイプがあります。
契約時から期間を数えるタイプだと、最悪の場合最後の人が納骨される前に、先に埋葬されていた家族が合祀墓に移されることもあり得ます。
特に、自身の両親と子どもまで3世代に渡って使用したい場合には、注意が必要です。
あとで改葬ができない
遺骨を今のお墓から他に引っ越すことを、改葬と言います。
のちのち改葬の可能性がある場合は、要注意です。
合祀タイプの場合、一度埋葬するとその後遺骨を取り出すことはできません。
個別の安置期間があるタイプでも、一定期間後には合祀墓に埋葬されますので、やはりその後に遺骨を取り出すことはできません。
購入してから家族に反対される
樹木葬が広まったのは比較的最近の出来事であり、馴染みのない方も多くいます。
親族の中には、お墓と言えば従来のように墓石を建てるものだという人もいるかもしれません。
また、お墓は一族に関わることなので、樹木葬を決めた後に思わぬところからクレームが来ることも予想されます。
契約をする前に、お墓の関係者には一度話しておきましょう。
遺族がどこの樹木葬を購入したか把握していなかった
樹木葬には、生前契約できるところが数多くあります。
ですが、生前の内に自分のお墓を用意していても、遺された人にお墓の場所を伝えていなければ納骨してもらえません。
どこにお墓を用意したかは、遺族が把握している状態にしましょう。
また、身寄りがない方の場合は、信頼できる知人や司法書士などの法律のプロと「死後事務委任契約」を結んでおくのも一つです。
まとめ
樹木葬の思想や価値観に共感する現代人は増えてきています。
しかし樹木葬を行う上では、踏まなければならない手順もありますし、トラブルを防ぐために事前に確認しなければならないことも多いのです。
樹木葬での埋葬を希望する人は、以上の解説を参考に、しっかり事前準備をしましょう。
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