自宅で樹木葬はできる?庭で埋葬するのは違法!散骨ならOK?
自分が死んでも骨壺の中に遺骨を納めて冷たい墓石の下に埋葬されたくない、という人は、樹木葬を考えることがあります。
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標とするお墓です。
墓石を建てるわけではないなら、自宅の庭でもできるのでは?と考えられるかもしれません。
今回の記事では、自宅で樹木葬ができるのかどうかについて解説します。
目次
樹木葬とは何か
樹木葬とは墓石を建てる代わりに木を植えるお墓です。
遺骨1体に対して1本の木を植えるものと、共同の墓地の中央にシンボルツリーを1本植え、その周りにいく柱の遺骨を埋葬するものがあります。
樹木葬は、もともと土中に直接埋葬して自然還す方法で広まったものです。
しかし、近年では樹木の根元の納骨室に骨壺で埋葬する場合もあり、樹木葬であれば一概に自然に還るとは言えないのが現状です。
なお、ほとんどの場合で樹木葬には「永代供養」がついています。
永代供養とは、お寺などの管理者が、存続する限り埋葬された故人を供養し続けるというものです。
具体的には、お盆やお彼岸の合同法要でお経があげられる、といったことがされます。
そのため、跡継ぎがいない人でも安心して利用できます。
なお、骨壺で埋葬されるタイプの場合は、一定の期間を過ぎると骨壺から遺骨が出され、合祀のお墓で供養されます。
自宅の庭で樹木葬はできない
遺骨を土中に埋葬して樹木を植えるだけなら自宅でもできるかと言えば、そうではありません。
法律上、遺骨を埋葬できるのは、墓地として行政の許可を受けた土地だけとされています。
遺骨を埋葬する場所は、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)で以下のように規定されています。
第2条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
自宅の庭が墓地として行政の許可を受けている、あるいは許可が下りることは極めてまれなので、自宅に遺骨を埋葬することはできません。個人の土地で墓地の許可が新たに降りるとすれば、山間などの僻地で周りに墓地がない所に限られます。
したがって、樹木葬もすることができません。
散骨ならできる可能性がある
墓埋法では、遺骨を墓地以外に埋葬することを禁止しています。
ですが、埋葬しない「散骨」であればできる可能性があります。
自宅の木の根元に遺骨を埋葬するのは違法ですが、遺骨をまくのであればできるかもしれません。
散骨は法律に違反しない?
散骨が違法ではないかと言えば、グレーゾーンです。
しかし、現実には散骨業者などが数多く存在するように、散骨は黙認されています。
墓埋法は昭和23年に施行されたもので、それ以降に行われるようになった「散骨」については、規定がありません。
散骨が最も抵触しそうな法律としては、以下のものがあります。
刑法190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
ただし「散骨」ついては、その後の1991年に法務省刑事局が「葬送を目的として、個人が節度をもって実施する分には遺棄罪にはならない」という見解を出したと言われています。
この見解は非公式のものでしたが、これをもって散骨が広まりました。
自宅で散骨するための条件
それでは、どういった条件であれば自宅で散骨ができるのでしょうか。
自宅がルールに則った場所か確認する
散骨ができるのは、基本的に以下のいずれかです。
・公海上
・所有者の承諾を得ている土地
・業者が所有している散骨場
もし自宅で散骨する場合は「所有者の承諾を得ている土地」に該当しますので、これだけを見ると問題なさそうです。
ただし、法律ではありませんが、国の指導として散骨は以下のような場所で行うことは避けるように言われています。
・水源地付近や生活用水として利用される河川、湖、沼など
・漁場、養殖場、防波堤など
・公園や住宅地
・観光地や観光ルート
加えて、自治体の条例で以下のような条件が加えられることがあります。
・隣家と一定距離(自治体による)離れていること
・隣家の承諾を得ている
・沖合に一定距離(自治体による)出る
また、自治体によってはそもそも散骨自体が禁止されていることもあります。
散骨をする際は、必ず条例もあわせて確認しましょう。
なお、法律や条例をすべてクリアしていたとしても、散骨を知った近隣住民からクレームが来ることも考えられます。
そうならないようにするためには、少なくとも近隣の住民からすぐに見えてしまうような、表通りに面した場所に散骨することは避けたほうがよいでしょう。
また、風で遺骨が隣家に飛んでいったことでトラブルになることもあるので、注意が必要です。
遺骨をパウダー状にする
遺骨は、遺骨だとわからない状態になるまでパウダー状にする必要があります。
パウダー状とはどの程度の細かさかというと、これも法律の規定はありません。
ただし散骨を行っている業者の自主規制によれば2mm以下の遺灰にすることになっていますから、その自主規制を目安にすればよいでしょう。
自分で粉骨する場合は、遺骨以外のものを除去した後、乳鉢などで遺骨をすりつぶしていきます。
ただし、遺骨をつぶしていく作業は精神的にも体力的にも負担になるため、業者にお願いするのも手です。
自宅で散骨する際の注意点
散骨自体合法的にできたとしても、その後に土をかぶせると「埋葬」とみなされ違法になります。
また、遺骨は土の上など自然に還る場所にまきましょう。
隣家に遺骨が飛んで行かないよう、風の向きや距離なども注意する必要があります。
樹木葬はどこでできるのか
それでは、散骨ではなく、遺骨を埋葬する「樹木葬」をしたい場合はどこですればいいのでしょうか。
先述の通り、遺骨の埋葬ができるのは行政の許可を受けた「墓地」だけです。
樹木葬をする場合は、樹木葬を取り扱っている墓地や霊園を利用することになります。
樹木葬墓地の種類
樹木葬霊園には以下の2つの種類があります。
・里山型
田舎の自然では、山と森林が同居しています、そのような場所を里山と言います。里山型の樹木葬霊園は、すでにある里山を生かして霊園を設け、その自然の山の中に遺骨を埋葬するものです。
・公園型
自然をそのまま生かした里山型に対し、霊園の中に自然を人工的に再現して、その中に埋葬するものが公園型です。
樹木葬の費用
樹木葬の形態や人数、立地などにもよりますが、永代使用料の相場は10~80万円くらいです。
個別の区画や安置期間を設けず、最初から遺骨を土に還すタイプだと、最も安くて5万円程度でできます。
逆に、個別の区画に複数人埋葬し、さらに長期間個別で安置するとなると、100万円を超すこともあります。
区画を何人で利用するか、個別安置はするかなど、自分の希望と費用を見ながら墓地を探しましょう。
また、個別の安置期間を設ける場合は、毎年管理料がかかります。
管理料は年間5,000円~10,000円程度です。
永代使用料と一緒に一括前納を受け付けている場合もあります。
加えて、遺骨を埋葬する際に埋葬料がかかります。
埋葬料は、1体2万円程度でしょう。
樹木葬で後悔しないために
樹木葬霊園での埋葬を希望する場合、埋葬後や契約後にトラブルが発生し、樹木葬にしたことを後悔してしまうケースもよくあります。
後悔しないためには、契約前に以下を確認しましょう。
立地はお参りしやすいところにする
樹木葬霊園は広い土地と、可能な限り自然が残っている環境が必要です。
都心部ではそのよう場所を見つけることが難しいため、結果的に樹木葬霊園は、都心から離れた場所に設けられることが多いのです。
そういう場所のほとんどは交通アクセスが悪いため、遺族がお参りをするうえで非常に苦労します。
お参りする遺族がいる場合は、樹木葬霊園は交通アクセスが良くて、お参りしやすい場所にあるもの選びましょう。
樹木の手入れが契約に入っているか確認する
また樹木葬の埋葬後に、遺族と霊園における多くのトラブルは、墓標として立っている木の手入れを霊園がしてくれると思っていたら、実は遺族側の負担だったという場合です。
特に墓石型の墓であればそれほどメンテナンスは必要ありませんが、樹木葬は墓標が生きている木なので、どんどん繁殖しますし、根元には雑草が生えるため、メンテナンスを欠かすと大変なことになります。
ですから樹木葬霊園を契約する前に木の手入れが霊園側の義務に入っているか確認しましょう。
法事をしてほしいかよく考える
樹木葬霊園で、直接土葬するタイプの場合は、最終的に遺骨は土に還りますから、墓前での法要は難しくなります。
その意味で樹木葬には、三回忌や七回忌などの法要は適さないのです。
ですから樹木葬を選ぶ場合には、通常の方法で自分を法要してほしいかどうかをよく考えましょう。
家族の理解を得る
樹木葬を選択する人は増えていますが、しかしまだ埋葬に関する旧来の価値観を持っている人も多いです。
旧来の価値観の人にとって、樹木葬は受け入れがたい埋葬方法です。
そのため家族に旧来の価値観を持っている人がいると、樹木葬霊園を契約した後に、家族間でのトラブルが発生してしまうケースもよくあります。
そのようなトラブルを防ぐためには、契約前に家族とよく話し合いましょう。
ペットは自宅で樹木葬にすることはできるか
では愛していたペットが亡くなった場合は自宅で樹木葬をしてもよいでしょうか。
法律上はペットを庭に埋葬することは可能
法律上、ペットの遺骨は墓埋法の「遺骨」には該当しないため、庭先に埋葬することはできます。
ただし、遺骨や遺体を埋葬するうえでは、臭いや地下水への汚染を考慮することが必要です。
みだりに埋葬をすると法律違反に
ペットの遺骨や遺体を自分の私有地ではなく、公共の土地や他人の土地に無断で埋葬してしまうと、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に違反してしまいます。
つまり第5条の「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物または廃物を棄てたもの」として軽犯罪法違反になるのです。
ペットの樹木葬の方法
ではペットを自宅の庭で樹木葬する上ではどのような点に注意すればよいのでしょうか。
穴を深く掘る
ペットの遺骨や遺体は他の動物に掘り返されないように、深い穴に納めましょう。
だいたい深さ1~2mが目安です。
遺体の下に腐食しやすいタオルを敷く
遺骨ではなく遺体で埋葬する場合は、ただ土に埋めるだけではなかなか腐食、分解されません。
腐食、分解を促進するためには、腐食しやすいタオルなどを遺体の下に敷くとよいでしょう。
土を30cm以上盛る
穴を掘ってペットを埋葬し、その上から土をかぶせても、中に空間ができるため、時間がたつと平らに埋めたはずのものが、凹んできて遺体の一部がでてくることもあり得ます。
それを防ぐためには、埋めた上にさらに最低でも30㎝は土を盛りましょう。
樹木を植える
埋葬したままにすると、ほかの動物に掘り返されてしまう可能性があります。
掘り返されることを防ぐには、埋葬した上に樹木を植えたり、大き目の石を置いたりしましょう。
ペットの樹木葬キットも
最近はペットの樹木葬をするためのキットも販売されています。
キットにはいろいろな種類がありますが、人気は縦長の筒状の中に土がすでに入っていて、その中に遺体を納め、筒ごと土の中に埋めるものです。
キットの土には木の肥料成分が含まれていて、さらに遺体の上に埋める土には木の種が入っています。この筒状のキットを土の中に埋めるだけで、ペットの樹木葬ができます。
価格的には1万~2万円程度です。
まとめ
自宅で樹木葬してもらうことは法的には違反しています。
しかし散骨にすれば、法律に違反せず自然に還る方法で埋葬することも可能です。
冷たい墓石の下に埋葬されたくないと考える人は、以上を参考に樹木葬、あるいは散骨を検討してみましょう。
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