樹木葬のデメリットにはなにがある?種類ごとの特徴も解説

近年では、従来のような墓石のお墓よりも、樹木葬を選ぶ人が増えています。
参考:お墓選びの実態調査(2023年)
しかしながら、お墓のイメージとしてはまだまだ墓石のお墓が強く、樹木葬についてはまだよく知らないことも多いのではないでしょうか?
人気の樹木葬ですが、いざ契約するとなると、思ってもみなかったような事態に見舞われないか不安になるものです。
今回の記事では、後に後悔が残らない知識を身に着けられるよう、樹木葬のデメリットについて解説します。
目次
樹木葬とは?

樹木葬とは、樹木や草花を墓標としたお墓です。
国内の樹木葬は、1999年に岩手県一関市にある祥雲寺(現・知勝院)というお寺が初めて開設しました。
これは自然豊かな里山の自然に遺骨を還す樹木葬で、ここから他の地方の寺院でも樹木葬が造られるようになりました。
その後、首都圏や都市部にも樹木葬が広まり、形態や価格帯も多様になっていきました。
現在では、樹木葬は3~150万円程度の価格帯で契約することができます。
費用は、樹木葬の形態や立地などによって大きく変動します。
樹木葬と永代供養はどう違う?
永代供養とは、家族や親族に代わり、お寺などの墓地管理者が将来にわたって供養することです。
樹木葬はお墓の種類、永代供養はお墓の管理形態の一つで、そもそもカテゴリが違います。
永代供養がついているお墓を、「永代供養墓」と言います。
永代供養墓は、跡継ぎがいない方や、家族に囚われないでお墓を持ちたい方に選ばれています。
ほとんどの樹木葬には永代供養がついているので、樹木葬は永代供養墓の一つとして広く選ばれています。
立地で考える樹木葬の種類
樹木葬は、立地によって大きく種類を分けることができます。
里山型樹木葬
まさしく自然に囲まれた環境で、基本的に遺骨は土に還します。
好きな花木を植えたい、一区画あたり一本の樹木を植えたいという方は、里山型樹木葬からから探しましょう。いわゆる「自然に還る樹木葬」のイメージにマッチする樹木葬です。
都市型樹木葬
多くは、遺骨は骨壺などの専用容器に納めて墓石の納骨室に埋蔵し、土には還さない形式を採っています。多くは「個別区画」に使用期限が定められており、期限後、遺骨は不特定多数の人を一緒に埋葬する「合祀墓」に移されます。
一般的なお墓を建てる霊園の一角に設けられることが多く、街中にある分アクセスは便利な傾向にあります。
樹木葬のデメリット6つ
樹木葬を検討している方は、契約後に思ってもみなかったような事態に見舞われないか、心配かもしれません。
樹木葬のデメリットには、以下のようなことが挙げられます。
樹木葬のデメリット6つ
- 季節によって景観が変わる
- 個別のお参りはできないことが多い
- 原則承継はできない
- 納骨予定者を変更できないことがある
- 粉骨が必要なことがある
- 遺骨を取り出せなくなることがある
1.季節によって景観が変わる
樹木葬は、都市部でも緑豊かな環境の中に造られます。
当然花木は季節によって花を付けたり葉を散らしたりするので、樹木葬やその周辺の景観も変わります。
春に見学したときは花盛りでも、いざ冬にお参りすると、枯れ木などが寂しく感じられるかもしれません。
姿の移ろいは自然の醍醐味ですが、気になる方は、事前に四季の景観写真などを見せてもらいましょう。
2.個別のお参りはできないことが多い
樹木葬は区画ごとに供物台がついていることは珍しく、基本的には共用の供物台を使ってお参りします。
また、特に山林などでは火気厳禁とする墓地もあり、ロウソクや線香は供えられないこともあります。
これまでのような墓石のお墓のようなお参りをイメージしていると、少し違うかもしれません。
3.原則承継はできない
代々承継できる樹木葬は非常に珍しく、基本的には一人から数人で使用することを想定しています。
お墓を引き継ぐ人がいない、あるいは、引き継ぎたくない人は問題ありませんが、逆に家族でお墓を引き継いでいきたい方には向いていません。
4.納骨予定者を変更できないことがある
墓地によりますが、樹木葬は契約する時に、納骨予定者を登録することが珍しくありません。
その場合は、登録後に人数を減らしたり増やしたりすることが難しいので、あらかじめ誰が墓に入るのかをイメージして、お墓を探しましょう。
5.粉骨が必要なことがある
樹木葬に埋葬するにあたっては、省スペースや遺骨を土に早く還すという観点から、遺骨をパウダー状に粉砕する「粉骨」が必須になることがあります。
6.遺骨を取り出せなくなることがある
樹木葬の中でも、区画を区別しないものや、区別していても遺骨を土に直接埋葬するタイプでは、埋葬後に遺骨を取り出すことはできません。
埋葬後に親族から反対された、住まいが変わってお墓も引っ越したくなった、ということが起こっても、遺骨を移動することはできません。
里山型樹木葬のデメリット3つ
里山型樹木葬は山林にあるので、一般的な山林に付いてくる不便さは伴います。
特に里山型樹木葬のデメリットしては、以下のようなことが挙げられます。
里山型樹木葬のデメリット3つ
- アクセスが不便
- 足元が悪い
- 野生動物が出る
1.アクセスが不便
里山型樹木葬は山林にあるので、アクセスは基本的に不便です。
駅からバスで行ける場合は良い方で、多くは車が無いと辿り着けません。
歳を重ねて免許を返納するようなことがあると非常に行きづらくなり、お参りの足も遠のいてしまいます。
2.足元が悪い
山の自然を活かした墓地なので、参道を舗装することは多くありません。
当然斜面もあるので、足元は注意が必要です。歳を取ってからのお参りは難しくなるかもしれません。
また、区画も従来のお墓のようにはっきりと囲いを設けるわけではないので、お墓の上を踏んでしまうこともあります。
3.野生動物が出る
自然豊かな山であれば野生動物もつきものです。
ヘビやイノシシ、熊など、危険な動物がお墓の近くに出ることもあります。
また、直接人を襲わなくとも、動物が墓地を掘り返してしまうこともあり得ます。
都市型樹木葬のデメリット3つ
都市型樹木葬のデメリットには、以下のようなことが挙げられます。
都市型樹木葬のデメリット3つ
- 遺骨は土に還さないことが多い
- 区画の使用期限が定められていることが多い
- 好きな樹木を植えられない
1.遺骨は土に還さないことが多い
都市型樹木葬では、遺骨は骨壺などの専用容器に納めて、石でできた納骨室に埋蔵することが一般的です。
この場合、遺骨は土に還らず、いわゆる自然に還るという樹木葬のイメージからは離れます。
2.区画の使用期限が定められていることが多い
遺骨を個別の納骨室に納めるタイプの多くでは、個別区画の使用期限を定めています。
期限は「契約日から50年」、「最後の納骨から13年」など様々ですが、いずれにしても、期限後はみんなで一緒に入る「合祀墓」に移されます。
ペットと一緒の区画を契約しても、合祀墓に移されるときは人とペットを別々にされることもあるので、注意が必要です。
3.好きな樹木を植えられない
都市型樹木葬で自分が好きな花木を植えられるということは、めったにありません。
自分が好きな樹木を植えるには一区画につき一本の花木を植えるということですが、樹木は成長すると横に広がるので区画も広い必要があります。
しかし、都市部では区画が広い樹木葬を作ることは現実出来ではありません。
都市型樹木葬では、すでに植えられているシンボルツリーが気に入ったものから選ぶことになります。
樹木葬のメリット4つ
樹木葬にはもちろん、メリットもあります。
樹木葬のメリットには、以下のようなものがあります。
樹木葬のメリット6つ
- 自然に包まれて眠れる
- 跡継ぎを気にしないでお墓を持てる
- 費用を抑えてお墓を持てる
- 比較的宗教の制限が緩い
1.自然に包まれて眠れる
樹木葬の最たる特徴は、自然に囲まれて眠ることができる点です。
また、場所を選べば、自然に遺骨を還すこともできます。
豊かな木々や美しい花々の下で眠りたいという方は、樹木葬がピッタリです。
2.跡継ぎを気にしないでお墓を持てる
樹木葬は、承継を前提としないお墓です。
跡継ぎがいない方も、お墓を承継したくない方も、心配なく自分や夫婦、家族だけのお墓を持つことができます。
3.費用を抑えてお墓を持てる
従来のような墓石のお墓を持つには、総額で80万~250万円程度の費用が必要です。
一方で、樹木葬であれば、3万~150万円程度で探すことができます。
数十万円の価格帯のものも多く、お墓としては手ごろな値段で購入することができます。
個別で利用できる永代供養墓としても比較的安価なので、費用を抑えてお墓を持ちたい方にもおすすめです。
4.比較的宗教の制限が緩い
お寺の墓地では特定の宗派の人のみが使えることが多いのですが、樹木葬などの永代供養墓は、境内にあっても、宗教・宗派の制限なく使用できることがあります。
後悔しないための樹木葬を選ぶポイント6つ
樹木葬を契約してから公開しないよう、お墓選びの際には以下の点に注意してみましょう。
樹木葬を選ぶポイント6つ
- 遺骨の埋葬方法と区画の使用期限を確認する
- お墓を使用する人とお参りする人をあらかじめ考えておく
- 管理費や年会費を確認する
- 季節ごとの景観を確認する
- 地域のハザードマップを確認する
- 霊園やお寺でどこまで樹木を管理してくれるか確認する
1.遺骨の埋葬方法と区画の使用期限を確認する
これまでにも述べてきた通り、一口に樹木葬と言っても、遺骨を土に還したり、骨壺で石室に埋蔵したりするものなど、様々です。
遺骨の埋葬方法は必ず確認して、思っていたものと違ったとならないようにしましょう。
また、区画には使用期限がついていることがあります。
特に契約日から期間を数え始めるもの(「契約日から○年」など)については、想定する家族がみんな個別の区画に入れるのか、一度考えてみましょう。
2.お墓を使用する人とお参りする人をあらかじめ考えておく
樹木葬の契約にあたっては、あらかじめ納骨する予定の人を登録しておかなければならないことがあります。
後々に、他の家族も入れたかったけど入れられなかった、逆に、登録したけど実は入る必要が無かった、とならないよう、先々まで想像して、誰がお墓を使用するのか考えてみましょう。
加えて、お参りをしたい、お参りをしてほしいという場合は、参拝者のアクセスも考慮しましょう。
3.管理費や年会費を確認する
樹木葬では、年間管理費がかかるものと、かからないものがあります。
また、年間管理費はないけど、契約者の会のようなものの年会費がかかることがあります。
特に承継不要のお墓を希望する方は維持費の負担も残したくない方もいるかと思いますので、契約後の費用についても確認しておきましょう。
4.季節ごとの景観を確認する
自然豊かな環境に花木が植えられている以上は、季節ごとに景観が変わります。
特に秋や冬には景色が寂しくなりがちなので、気になる方は、見学などの際に四季ごとの写真を見せてもらいましょう。
5.地域のハザードマップを確認する
樹木葬に限らずお墓全般に言えることですが、浸水や津波に供えてハザードマップを確認しておくと安心です。
6.霊園やお寺でどこまで樹木を管理してくれるか確認する
特に一区画に一本の樹木を植えるタイプの樹木葬では、霊園やお寺の管理者がどこまでお世話をしてくれるかを確認しましょう。
どの程度管理してくれるかは場所によります。最初から使用者が花木のお世話をするもの、一定期間はお寺が面倒を見るものなど、様々です。
思ったより管理が大変だったということにならないよう、契約前に確認しましょう。
まとめ
樹木葬は、自然に包まれて眠るお墓、承継不要のお墓として、今や一番人気のお墓になっています。
ただし、季節ごとに景観が変わったり、遺骨の管理がその場所によって違うなど、独特な注意点もあります。
遺骨の埋葬方法やアクセス、契約後の維持費や管理については、特に注意しましょう。
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経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。