お墓の名義変更の流れと費用を解説!墓地や霊園の手続き

お墓の名義変更の流れと費用を解説!墓地や霊園の手続き

お墓には所有権はありませんが、永代使用権と言って毎年の管理費を払っている限り、半永久的に使用できる権利があります。
そしてこの権利は、お金や不動産などと同じように、今持っている人が亡くなったら、次の代の人に承継することができます。
お墓の永代使用権は帳簿に登録する必要があるので、相続が発生すれば当然名義変更をしなければなりません。

今回の記事では、お墓の名義変更の方法や費用を詳しく解説します。

墓地の名義変更手続きの方法

お墓の名義変更をするにはどのようなことをしなければならないのでしょうか。

名義変更はお墓の権利相続のこと

冒頭で書いたようにお墓には所有権の代わりに永代使用権があります。
名義変更とはこの永代使用権を相続させる時に、その権利の移転を帳簿に反映させるために行う手続きです。
お墓の名義の名義変更をするタイミングは、前の名義人が亡くなった時や高齢などの理由で生きている間に引き継ぎたいと言う時です。

また、名義人の引き継ぎがない場合でも、名義人の住所や本籍が変わった場合、結婚などで苗字が変わった場合は、名義変更の手続きを行わなければなりません。

名義変更手続きの方法

名義変更の手続きの方法は以下のようなものです。

名義変更は誰に対して行う?

お墓の名義変更を誰に対して行うかというと、墓地管理者です。
公営墓地なら役所、寺院墓地ならお寺、民営霊園なら管理事務所を訪ねてみましょう。

この墓地管理者が国に代わって帳簿を管理しているのです。

墓地の名義変更は行政手続きではないので、持ち主が亡くなった場合は個別の手続きが必要です。

名義変更に必要な書類とは?

お墓の名義変更に必要な書類は4種類あります。
これがすべて揃っていないと、1回提出しても再度提出し直さなければならないなど、2度手間、3度手間になるので、最初からしっかり準備するようにしましょう。
必要な書類は以下の通りです。

1.名義変更届
名義変更届は名義変更する内容を所定の用紙に記入して提出するものです。用紙は墓地管理者が持っていますから事前に請求しましょう。
また名義変更届は、それぞれの墓地や霊園によって書式が異なります。
ですから、以前の名義変更届があってもそれは使わずに、新たに用紙を入手しましょう。

また名義変更届の名称は、墓地によって「墓所承継使用申請書」「変更届出書」など、異なる場合もあります。

2.永代使用許可書
永代使用とは冒頭で書いたように、墓地の管理費を支払っている間は半永久的にその墓地を使用できる権利のことです。
永代使用許可書は、名義を引き継いだだけではなく、そのお墓を半永久的に使用します、ということの申請なので、名義変更の都度提出しなければなりません。

3.戸籍謄本
戸籍謄本を提出する理由は新しい名義人と、名義変更前の名義人との続柄を確認するためです。
また、戸籍謄本は前の名義人が亡くなったことを確認するためにも提出する必要があます。
したがって戸籍謄本にはその前の名義人が死亡年月日とともに記載されている必要があります。

また戸籍謄本は発行日が古いものは受け付けてもらえません。
最低でも3か月間以内に入手したものを提出しましょう。

戸籍謄本は市役所、区役所で入手できます。最近はマイナンバーカードがあれば、主要なコンビニでも入手できるようになっています。

4.印鑑証明書
名義変更届には自分の実印を押す必要があるので、それが実印かどうかを確認するために提出します。
印鑑証明書も市区町村の役所で入手できます。

名義変更に必ず必要な書類は以上の4種類ですが、場合によってはお墓を承継することを証明する、前の名義人の遺言書が必要な場合もあります。
遺言書が原本でなければならないのか、コピーでもよいのかについては、墓地によりますので管理者に確認しましょう。

お墓の名義は誰に変える?兄弟の場合は

一般的に名義は誰に変更することが多いのでしょうか。

お墓の名義は「祭祀継承権」というものとセットです。
祭祀継承権とは、先祖や故人の墓を守り、お墓の永代使用権や仏壇の所有権を保持する権利を指し、金融資産や不動産などの相続財産と同様に、前の所有者が亡くなったら相続するものです。

したがってお墓の名義を誰に引き継ぐかということは、祭祀継承権を誰に相続されるかということとイコールです。
祭祀継承権を誰に相続させるかについては、民法の第897条で以下のように決められています。

民法 第897条

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

これによると、祭祀承継者は以下のような順序で決められます。

1.前の祭祀承継者の指定
2.慣習に従う
3.家庭裁判所が決める

つまり、故人の指定があればその人になりますが、指定が無ければ慣習に従い、慣習も分からなければ家庭裁判所が祭祀承継者を決めるということになります。

ただし以上は法律上の名義の変更先の規定で、墓地または霊園によっては、これとは別に規定を設けている場合があります。
たとえば「故人の3親等以内の親族」などです。
このような規定がある場合は、法律の規定と墓地独自の規定の両方を満たす人が祭祀継承権を相続しなければなりません。

お墓の名義はいつ変える?

お墓の名義変更を行うタイミングは、1つは前の名義人が亡くなった場合です。
亡くなってから何日以内に名義変更を行わなければならないということを決めている法律はありませんが、墓地や霊園の独自の規定で名義変更期間を決めている場合があるので確認しましょう。

なお、現在の名義人が海外に移住したなどの特段の理由がない場合、原則生前での名義変更は行えません。

お墓の名義変更をしないとどうなる?

お墓の名義変更が必要に応じて行われない場合、書類上名義人はいても、現実にはいないため、お墓の管理は誰もしないことになります。
具体的にはお墓の管理費を誰も支払わないということです。
この状況が続いた場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

お墓の管理費が一定期間支払われないと、お墓の所有権を持っている墓地管理者が強制的にお墓を無縁墓として撤去することになります。
お墓に埋葬されている遺骨は無縁仏として処分され、墓石は撤去され、墓域は更地に戻されます。

そのようなことを避けたい場合は、名義変更が必要になったら、時間をおかずすぐに手続きする必要があります。

納骨堂の名義変更は一般墓とは違う?

最近は土の上に墓石を建てる一般墓ではなく、専用の建物の中の棚に骨壺を並べるなどの方法で遺骨を埋葬する納骨堂というものも多くなってきました。
この納骨堂の場合も、お墓と同様に名義変更しなければならないのでしょうか。

結論から言うと、名義に関してはお墓と納骨堂は全く同じ扱いです。
したがって必要が生じたら、速やかに名義変更しなければなりません。

個人墓地は登記も変更する?

現代においては非常にまれなケースですが、お墓を寺院でも市区町村でも企業でもなく、個人で所有していることがあります。
この場合は名義変更と同時に、お墓の所有権の登記も変更しなければならないのでしょうか。

まず名義人と墓地の所有者が同じだった場合は、土地の所有権も相続されますから登記の変更が必要です。
ただし墓地の名義変更先と、土地の所有権の変更先は同一人物でなくてもかまいません。

次に名義人と墓地の所有者が異なっている場合は、土地の所有者が変更されない限り、名義を変更しても、登記は変更しなくてOKです。

お墓の名義変更にかかるお金

以上がお墓の名義変更の手続きのあらましですが、名義変更をする際に費用はどの程度かかるのでしょうか。

まず公営墓地の場合、名義変更には手数料がかかります。その費用は墓地によっても異なりますが、おおむね数百円から数千円の間です。
これに戸籍謄本を取得する費用の450円程度が加わります。

次に民営霊園の場合も、やはり名義変更には手数料がかかります。
この金額は公営墓地よりは高額で、だいたい数千円から10000円以上とさまざまです。
したがって名義変更の書類を取りに行った際に費用も確認しましょう。また民営霊園の場合もこれに戸籍謄本の取得費用がオンされます。

寺院墓地の場合の場合はお墓の名義だけではなく、檀家としての代表者という名義も引き継ぎます。
お墓の名義変更に手数料がかかると同時に、檀家の代表の引継ぎの手数料として別途お布施が必要です。お墓の名義変更の手数料は民営墓地とほぼ同様に3千円から10000円程度ですが、檀家の引継ぎ費用は寺院の寺格や地方によって幅があります。ですからこの場合も、事前に費用を確認しましょう。

まとめ

墓地の名義変更のあらましがお分かりいただけたでしょうか。
家族が亡くなった場合、相続の問題や預金口座の閉鎖、年金の手続きなど実に様々な手続きが発生します。墓地の名義変更もその1つです。
これを忘れると、最悪お墓が撤去されてしまう場合があるので、忘れずに手続きを行いましょう。