みなし墓地とは?意味や使い方を墓埋法から解説します!

みなし墓地という言葉は聞いた聞いたことがあるかもしれません。
みなし墓地は今後新たに増えることはありませんが、自分の所有しているお墓がみなし墓地にある場合は、家族を埋葬したりその墓地からほかの墓地に遺骨を改葬する時にいろいろと注意が必要です。
今回の記事では、みなし墓地とは何を指すのか、そして納骨や改葬の時にはどのような注意点があるのか、ということについて解説します。
目次
みなし墓地とは?
では最初にみなし墓地とは何を指すのかという定義について解説しましょう。
みなし墓地とは墓埋法制定以前に許可された墓地
墓地については、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)という法律によって規定が定められています。
墓埋法の第10条によると、墓地は都道府県知事の許可を受けて経営しなければなりません。
第10条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
ただし、この墓地埋葬法は昭和23年に施行されたものです。
当然、日本の墓地にはそれ以前から開設されているものも多々あります。
極端な話、人が亡くなったら埋葬するという墓地の歴史は縄文時代の遺跡にまでさかのぼります。
そこまでではないにしても、今から1000年以上前から営々と運営されている墓地も存在します。
したがって墓埋法が施行されたからと言って、その施行より前に設けられた墓地を、墓地としては認めないということは現実問題としてできません。
また改めて地方自治体の許可を取らせるにしても、全ての墓地の管理者が明確になっているわけではありません。
何代も前からそこにある墓地の場合は、管理者の存在があいまいになっていことも多いでしょう。
そこで国は、そのような墓埋法施行以前から都道府県知事の許可をうけて経営されていた墓地を、法律で許可されていたものとする、と追認しました。
これについては、墓埋法第26条で以下のように規定されています。
第26条 この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。
この条文の「許可をうけたものとみなす」という文言から、こうした追認型の墓地は「みなし墓地」と呼ばれるようになりました。
みなし墓地には共同墓地や個人墓地などがある
みなし墓地には3つの種類があります。
1つは地域の共同墓地です。
共同墓地とは、集落、村落など地域のコミュニティによって使用、管理、運営されてきた墓地のことを指します。
集落墓地、部落墓地、村墓地などとも称されます。
2つ目は宗教団体などの共同墓地です。これは地域のコミュニティではなく何らからの主旨でまとまった集団が管理、運営してきた墓地です。
たとえばカトリックや天理教などのように1つの同じ宗教を信じる人たちで管理してきた墓地が共同墓地に当たります。
3つ目は個人墓地です。
自分の所有している土地に自分の先祖代々を埋葬している墓地で、他家の人を埋葬しないものが該当します。
みなし墓地は法律上問題にならない?
上記のように、みなし墓地は墓埋法の第26条で規定されているので、合法的な墓地です。
みなし墓地を使用することは法律上問題になりません。
ただし、管理者が不明な場合も多く、納骨や改葬の際にその許可が取れないという問題が起こることもあります。
みなし墓地と無許可墓地の違い
みなし墓地とよく混同して使われる概念に「無許可墓地」というものがあります。
この無許可墓地とはどのようなものなのでしょうか。
無許可墓地とは?
みなし墓地とは別に、法律上許可されていない墓地のことは「無許可墓地」と呼ばれます。
無許可墓地とは、墓埋法制定以前に知事の許可を受けていなかった墓地、あるいは制定以後知事の許可を受けずに経営されている墓地のことを言います。
無許可墓地は違法で経営されている墓地なので、使用することはできません。
たとえば、墓地埋葬法の存在を知らずに、自分の所有地に家族を埋葬してしまうとそれは無許可墓地になります。
また自分が生まれた時から、あるいは生まれるずっと前の代の先祖から存在しているお墓があって、墓地埋葬法の追認も、敷設当時の行政の許可も受けていない墓地があれば、それも無許可墓地になります。
もしも無許可墓地があったらそれは墓埋法に違反している墓地ということになります。
許可の有無の確認方法
ある墓地が墓地埋葬法の許可を受けているか、あるいはみなし墓地として追認されているかどうか、すなわち合法か違法かを確認するにはどうしたらよいのでしょうか。
最も確実なのは、地方自治体の役所に行って墓地台帳にその墓地が記載されているかどうかを確認する方法です。
自分の家のお墓がある墓地が許可を受けておらず、みなし墓地としても追認されていない場合は、その墓地には新たに遺骨を埋葬できません。
それをした場合は違法行為となり罰せられます。
自分のお墓が無許可墓地だった場合の取り扱い
地方自治体の墓地台帳を閲覧して自分のお墓の存在する墓地が記載されていない、つまり無許可墓地だったということが分かった場合はどうしたらよいのでしょうか。
自分の墓地が無許可であった場合は、地方自治体に改めて墓地の許可を受けることになります。
自治体によって様式は異なりますが、多くの場合は「みなし許可に係る届出」などがあり、その書類を提出すれば墓地埋葬法の26条にもとづく正式な「みなし墓地」として追認されます。
ただし「みなし許可に係る届出」をする場合は、墓地埋葬法施行以前からその墓地が存在したという証拠の提示を求められます。
新規の墓地を許可の受けていない個人や団体が、みなし墓地を偽って許可をとることを防ぐための措置です。
したがって、たとえば古い寺院などの墓地であれば檀家名簿と言った過去の資料を探しましょう。
もしもそのような資料が残っていない、昔からの共同墓地の場合は、お墓の側面などに記載されている埋葬年月日の写真などを撮って、行政の窓口で相談するのが良いでしょう。
みなし墓地は普通の墓地と同様に使える?
みなし墓地は、行政の許可を受けて経営する墓地として、原則その他の墓地と同様に使用できます。
ただし、その性格上、注意しなければならないことがあります。
新規のお墓の建立は管理者に相談
みなし墓地に新規にお墓を建てたい場合は、まずはその墓地の管理者に相談してみてください。
お墓を建てられるかどうかは、建てようとしている所が、お墓を建てられる区画として使用されていたかによります。
墓所として使用されていた区画に建てることはできる
それまで墓所として使用されていた区画で、現在再貸し付けがされている杭粋であれば、お墓を建てることができるでしょう。
例えば、お墓を持っていた人がお墓を撤去して空いた区画に、新しくお墓を建てるような場合です。
お墓が建っていなかった所に増やす場合は要注意
例えば、共同墓地などで、今お墓が建っているところの隣にお墓を増やしたい、という場合は、管理者にその区域が墓所として登録されているかを確認する必要があります。
再度の引用になりますが、墓埋法の第10条では以下のように規定されています。
第10条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 前項の規定により設けた墓地の区域又は納骨堂若しくは火葬場の施設を変更し、又は墓地、納骨堂若しくは火葬場を廃止しようとする者も、同様とする。
墓地の敷地内でも、参道などの墓域以外のエリアにお墓を建てるには、お墓を建てられるエリアを増やす、つまり、「墓地の区域」を「変更」することになるので、行政に許可をもらう必要があります。行政に届け出るのは墓地管理者です。
このように、お墓が建っていなかった所にお墓を建てるようとすると、大掛かりな作業になってしまいます。
この問題については、「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するQ&A』」もご参照ください。
参考:Q1.[墓埋法第26条における「みなし墓地」の管理と再貸付け]に関する質問
みなし墓地への納骨は可能
みなし墓地にあるお墓に納骨すること自体は許可されます。
墓地埋葬法の4条には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」とされています。
この条文を逆に言えば、追認であっても許可を受けているみなし墓地なら、法的には合法の墓地なので、故人を納骨することは法律には違反しません。
みなし墓地と改葬の関係
新規の埋葬ではなく、みなし墓地にある遺骨をほかの墓地に改葬する場合、あるいはほかの墓地に埋葬されていた遺骨をみなし墓地に改葬する場合、法律的にはどうなのでしょうか。
みなし墓地「から」の改葬は可能
みなし墓地に埋葬されている遺骨を、みなし墓地からほかの墓地に改葬することは可能なのでしょうか。
改葬する場合には、「改葬許可申請書」にその改葬元の墓地の管理者による署名、捺印をしてもらった上で地方自治体に提出し、改葬許可証の発行を受ける必要があります。
この許可証がなければ、改葬先の墓地の管理者から埋葬の許可が出ません。
みなし墓地であってもその管理者が明確であれば署名、捺印がもらえますから、改葬許可証を受けることは可能です。
したがってその場合はみなし墓地からほかの墓地に改葬することは法的にOKです。
個人墓地の場合は自分がみなし墓地の管理者ですから、改葬許可申請書には自分で署名、捺印することになります。
管理者が明確になっていない古くからの共同墓地などの場合は、改葬許可申請書に署名、捺印をもらう相手がいないので、そのみなし墓地から改葬することは難しいでしょう。
みなし墓地「へ」の改葬は管理者に相談
みなし墓地にお墓を建てて遺骨を引っ越す場合は、まずは引っ越そうとする墓地の管理者に相談してください。
新しくお墓を建てる場合と同様、すでに墓所として登録されている区域を再貸し付けしている状態であれば、お墓を引っ越すことができます。
すでにあるお墓にご遺骨だけ持ってくる場合も、おおむね問題ないでしょう。
一方で、墓所として使っていない所に適当にお墓を建ててしまう、ということはできません。また、墓所としては登録しているものの、墓地を廃止の方向に持っていくために再貸し付けを行っていない、ということもあります。
墓所を使用できるかどうかは、お墓の管理者に相談してください。
共同墓地の場合は、地域の墓地管理委員会が管理者になっています。
みなし墓地で墓じまいするには
遺骨をほかの墓地に改葬したのち、お墓を廃止、撤去し、更地に戻して墓地管理者に返還することを墓じまいと言います。
みなし墓地の場合、墓じまいはどうしたらよいのでしょうか。
みなし墓地から遺骨を動かす場合も、行政に届け出る必要があります。
この時に「改葬許可申請書」という書類が必要になりますが、これには墓地の管理者の署名、捺印をもらわなければなりません。
したがって、墓地の管理者が明確にわかっている場合は、その管理者に署名、捺印をしてもらえば墓じまいは問題なく行うことができます。
問題が生じるのは、古くからの共同墓地などで、誰が管理者かわからなくなっている場合です。
そのような場合は、まず墓地のある地域に古くから住んでいる人などへ管理者の心当たりがないかということを聞き、自分で管理者を探すしかありません。
自治体の窓口に行って、墓地台帳を見せてもらうことで管理者が分かることがあります。
あるいは、近隣の寺院の住職であればその地域の墓地の情報を持っている場合があるので、尋ねてみてもよいでしょう。
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まとめ
墓地は日常生活を送っている時には、お墓と関係があるしたらせいぜいお盆やお彼岸にお参りをするくらいでしょう。
しかしお墓を改葬する場合などには、本文でも触れたようにその管理者の承諾が必要です。
その際には、墓地管理者が誰なのか、そもそもその墓地は地方自治体の許可を受けているものなのか、ということが問題になります。
その結果、自分のお墓の墓地がみなし墓地だとわかった場合は、以上で解説した内容を参考に、しっかりと墓埋法を守った対応をしましょう。
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