水子供養とは何をするの?供養の方法やお布施の金額を解説

おなかの子を亡くしてしまったら、一般的にはお葬式などをせずにお見送りします。
しかしながら、何かをしてあげたいという気持ちは、後に残るかもしれません。
この記事では、生まれてくることができなかった子どもの供養について解説します。
目次
水子供養(みずこくよう)とは?
水子供養とは、中絶、流産、死産などで、この世に生を受けることができなかった子の冥福を祈るための供養です。
水子供養と地蔵
地蔵菩薩は、子どもがあの世で幸せに暮らせるようにお世話をしてくれると言われています。
「賽の河原」で有名な「地蔵和讃」でも、最後に子どもたちを救うのは地蔵様です。
水子供養で参拝の対象となる地蔵は、「水子地蔵」と呼ばれています。
水子地蔵には、いくつかの種類があります。
錫杖を持っている地蔵菩薩
錫杖(しゃくじょう)を持っている水子地蔵は子どもたちを鬼から救ってくれる地蔵菩薩です。
賽の河原で子どもたちを救うのはこの地蔵様だと言われています。
合掌している慈母地蔵尊
合掌している水子地蔵は子どもたちの母親代わりの慈母地蔵尊です。
赤ちゃんを抱っこしている子安地蔵
赤ちゃんを抱っこしている水子地蔵は子安地蔵と呼ばれ、妊婦の安産を守ってくれる地蔵尊です。
水子供養はどこに依頼する?
水子供養の依頼先はお寺です。
ただし、全ての寺院が水子供養をしているわけではありません。
まずはお世話になっているお寺に水子供養をお願いできるかを聞いてみましょう。
お世話になっているお寺が無ければ、水子供養に力を入れている寺院に問い合わせてみましょう。基本的には、宗派に関係なく受け入れてくれるはずです。
水子供養の方法とお布施の金額
水子供養の方法は様々です。内容によって、お納めするお布施の金額も変わります。
なお、お布施はお寺によっておおきく金額が違うこともあります。
ご供養料が明示されていない場合は、あらかじめ「皆さんはどれくらい包まれていますか?」と聞いておくことをおすすめします。
水子地蔵に参拝する
水子供養を行っているお寺では、水子供養の参拝の対象となる地蔵尊が建てられています。
手を合わせるだけでも構いませんし、お供えを受付けているお寺であれば、おもちゃやお菓子をお供えしても良いでしょう。
参拝するだけなので、お布施は不要です。別途、拝観料があれば納めます。
法要を営む
お寺で僧侶に読経してもらいます。
お寺が定期的に開催する合同法要に参加するか、個別での法要をお願いすることもできます。
合同法要の場合はお子様を亡くした方が集まるので、お寺によっては心情に配慮して、子どもの参列を遠慮してもらっている所もあります。
お布施は、個別法要の場合で1万~3万円程度、合同法要の場合で5千円程度が相場です。
戒名をつけてもらう
お寺によっては、水子に戒名を付けてくれます。
菩提寺に相談するか、対応してもらえなければ、水子供養に力を入れているお寺に依頼してみましょう。
お布施は、戒名のみでは1万~2万円程度が相場ですが、法要とセットにする場合が多いようです。
塔婆供養をする
塔婆を立てて、読経してもらいます。
寺院によっては、小さなお塔婆に名前を書いて納められる所もあります。
塔婆自体は2千~3千円/1本程度ですが、通常は読経も一緒にしてもらうので、これに法要をお願いする程度のお布施が必要です。
水子絵馬を納める
水子供養を行っている寺院では、水子専用の絵馬を納めることができます。
裏面などの余白に、赤ちゃんへの気持ちをしたためることができます。
絵馬の奉納料は、500~1,000円程度が相場です。
地蔵を奉納する
小さな石仏の地蔵をお寺に奉納する方法です。
ご遺骨があれば、お地蔵様の中に納めることもあります。
奉納料は、5千~10万円程度です。読経をしてもらう場合は、別途法要をお願いする程度のお布施が必要です。
ご遺骨がある場合の水子供養
赤ちゃんのご遺骨がある場合は、どこかに納骨するか、ご自宅で供養します。
従来では、すでにあるお墓の隣にお地蔵様を建て、その中に納骨していました。
ですが、必ずそうしなければならないわけではないので、新しくお墓を建てて納骨したり、赤ちゃんとご両親だけで利用する樹木葬などを用意しても構いません。
また、納骨に期限はありませんので、焦らずに気持ちの整理が付くまで、ご自宅で供養されても良いでしょう。
自宅でできる水子供養
水子供養は、お寺にお願いせず、ご自分やご家族だけで行うこともできます。
自宅でできる水子供養を紹介します。
位牌を造る
名前や戒名が決まっていれば、位牌を造って手元に置いておくこともできます。
一般的な黒塗りのタイプから、ガラスや木目調の現代的なデザインの位牌もあります。
位牌は、仏具店やネット通販などで購入できます。
手元供養品を買う
ご遺骨や遺灰がある場合は、小さな骨壺や入れ物などを用意して、ご自宅で供養しても良いでしょう。
ご遺骨自体を加工して、アクセサリーやオブジェにする方もいます。
水子供養はした方が良い?
水子供養は、必ずしもする必要はありません。
現在のような水子供養が始まったのは1970年代以降と比較的最近で、既存の国内の慣習や仏教の教義で推奨しているものではありません。
ご自身の気持ちとして水子供養をした方が良ければ、してもいいでしょう。
「水子供養」は比較的最近の慣習
現在のような形の水子供養が成立したのは比較的最近で、1970年代以降です。
1948年の優生保護法(現母体保護法)が制定されて以降、日本国内では中絶が広く受け入れられ、中絶が急増しました。
この時点では、胎児の生命について強く意識する風潮はなく、中絶した本人が胎児の供養をすることはありませんでした。
しかしながら、その後の医療の進歩で胎児の心音や姿などが可視化されたと同時に、避妊の浸透で希望する妊娠ができるようになったことで、胎児生命の視点が生まれます。
一方、1970年代に水子供養の先駆けとなった紫雲山地蔵寺の初代住職の橋本氏が、中絶が家庭内の不和や社会問題の原因になっているという論理を打ち出し、講演会やメディアなどを通じて「水子供養」は全国的に広まりました。
また、当時の社会不安やオカルトブームの後押しもあり、ワイドショーなどで「水子のたたり」が取り沙汰されます。この視聴者の一角を成すこの時の主婦層は、1950年代の中絶全盛時代に家庭を築いた世代で、積極的に中絶を選択した世代でした。加えて、1970年代になると子供が思春期や青年期を迎え、自分たちは年を取り、家庭内では様々な問題が増える時期にありました。
こうした社会情勢などから1970年代以降に現在の「水子供養」がブームとなり、その後も慣習として残っています。
参考:鈴木由利子2017「水子供養に見る胎児観の変遷」『国立歴史民俗博物館研究報告 第250集』、157~209P
まとめ
水子供養とは、中絶、流産、死産などで、この世に生を受けることができなかった子の冥福を祈るための供養です。
希望する方はお寺に依頼します。供養の内容は、法要を営む、塔婆を立てる、戒名を付ける、絵馬を納める、など様々です。
全てのお寺で水子供養を受付けているわけではありません。まずは菩提寺に相談して、対応していなかったら水子供養に力を入れているお寺を近くで探してみましょう。
また、ご自宅でも、位牌を造ったり、手元供養品を用意したりすることで、ご供養ができます。
なお、現在見られる「水子供養」は1970年代以降に定着したもので、従来の慣習や仏教とは関係ありません。
水子供養は必ずしなければならないものではありません。
ご自身のお気持ちとして、必要なら水子供養をしましょう。
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水子供養に関するQ&A
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水子供養では何をするのでしょうか?
一般的には、寺院で読経をしてもらったり、石仏のお地蔵様または塔婆や絵馬などを納めたりします。
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水子供養はいつから始めますか?
水子供養はいつ始めても構いません。ご自身の気持ちの整理が付き、始めようと思ったときに始めましょう。また、必ずしも水子供養はしなくても構いません。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。