自分で散骨するのはOK?法律や散骨場所の注意点を解説

自分で散骨するのはOK?法律や散骨場所の注意点を解説

自分の家族が亡くなってその遺志で散骨してほしいと言われた場合、どうしたらよいでしょうか。

1番簡単な方法は、散骨業者に丸投げすることです。
しかしその場合でも散骨業者を探さなければなりません。

では業者に頼らないで自分で散骨することは可能なのでしょうか。
ここでは散骨を自分ですることは法律的も、また物理的も可能なのかという点と、可能な場合のその方法について解説します。

散骨とは

まず散骨とはどのような埋葬方法なのしょうか。

散骨とは

散骨とは遺体を火葬し、遺骨になったものを粉々に砕いて、その粉末になった遺骨を海や山などの自然の中に撒く埋葬方法です。

散骨はどこに撒くかによって以下のように分けられます。

散骨の種類

海洋散骨

海洋散骨とは遺骨を海に撒く方法です。

しかし海岸に行って、適当に海に遺骨を撒くということはNGです。
なぜならその方法をしてしまうと、沿岸漁業をしている漁師、あるいは沿岸で養殖などをしている業者にとって、迷惑だからです。
したがって海洋散骨の基本は船で沖に出て、誰にも迷惑ならない海域で散骨をするのがルールです。

しかし自分で船を操って沖まで行けるという人は少ないでしょうし、かといって船を自力でチャーターしたにしてもどの海域であれば撒いてもOKなのかわからないでしょう。
そのような場合には、海洋散骨を専門にしている業者に委託することがおすすめです。

海洋散骨の専門業者は船を確保していますし、どこに遺骨を撒けば良いのか把握していますから、適切な沖まで連れて行ってくれます。

山林散骨

山の中に遺骨を撒く方法を山林散骨と言います。
しかし山林散骨は海洋散骨以上にハードルが高い方法です。

なぜなら海であれば誰にも迷惑が掛からない海域に行けば散骨できますが、山林散骨の場合は自分で所有している土地か、その土地を所有している人の許可をもらった土地でしか散骨できないからです。

また海洋散骨と同様、近隣に迷惑がかかる場所での散骨もNGです。
したがって、近くに住宅があったりした場合は散骨できません。

そのような場所が用意できない場合も、やはり山林散骨専門の業者に委託しましょう。
そうすれば、山林散骨業者が確保している、問題ない場所まで連れて行ってくれます。

空中散骨

最近人気の散骨方法が、ヘリコプターなどで上空か散骨する空中散骨です。
これも業者に頼む必要がありますが、委託すればまず自宅などの上空を回って故人に自分の懐かしの家を見てもらい、その上で散骨しても問題ない場所まで連れて行ってくれます。

散骨は違法ではないのか?

ここで気になる点は、このような散骨は法律に違反しないのかということでしょう。

日本では自然葬は法律違反

散骨に限らず、遺骨を墓地ではなく自然の中に還す方法全般を自然葬と言います。

世界中を見るとさまざまな自然葬がありますが、しかし日本では原則として自然葬は禁止です。
なぜなら「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)という法律で、市区町村の許可した墓地以外に遺骨は埋葬できない決まりになっているからです。

したがって、仮に自分の土地であっても、そこが許可を得た墓地でない限り、その土地に自分で埋葬することはできません。
自然葬の中に樹木葬というものがありますが、樹木葬も埋葬可能な場所は市区町村の許可を得ている樹木葬霊園だけです。

ただし散骨は黙認されている

しかし、散骨をする地域や実施については、法律で制限されていません。
それは墓埋法で散骨に関する規定がないためです。

墓地埋葬法は昭和23年に施行されました。しかしこの段階では散骨が一般的ではなかったため、埋葬と火葬についての定めはあっても、散骨については法的に可とも不可とも決められていないません。

そのため法的に違法と言い切ることができず、実質グレーゾーンとされています。

散骨でも違法になる場合がある

ただし散骨も埋葬方法によっては法律違反になります。

たとえば、自宅の庭に散骨をしてその上に記念に木を植えたとします。
するとそれは墓地埋葬法違反になります。なぜなら、記念に植えた木は法律上墓標だと判断され、墓標があるところは墓地だと認定されるからです。

日本にある墓地はすべて市区町村の許可を受けていなければならないため、自宅散骨をして木を植えてしまうと、それは無許可の墓地を作ってしまったことになり、法律に違反してしまうのです。

散骨は自分でもできるか

以上のような制限のある中、自分で散骨することは実質的に可能なのでしょうか。
また可能だとした場合、何に気を付けなければならないのでしょうか。

自分で散骨する時のルールと方法

結論を言えば、自分で散骨することは可能です。
ただし、自力で全てをするには数々のハードルを越える必要があります。
そのため、本来であれば業者に頼むのが無難です。

どうしても自力で実行する場合は、以下のルールと方法を守りましょう。

遺骨は粉砕機で粉末状に

まず散骨は遺骨を遺骨だとわからなくなるくらい細かく砕く必要があります。
仮に遺骨だとわかる状態で散骨すると死体遺棄罪に問われる可能性があります。

ではどの程度の粉末にすればよいかというと、特に法律では定められていませんが、散骨業者の自主規制では直径2mm以下になっています。ですからその2mm以下をめどに粉末状にすればよいでしょう。

粉末化の仕方は遺骨を袋に入れてハンマーで砕くか、あるいは粉砕機をレンタルするなどになります。

散骨場所が指導に沿っているか

まず、自治体の条例で散骨が禁止されていないかを確認します。
条例で散骨が禁止されている場合は、所有している敷地でも散骨できないので注意しましょう。

また、墓埋法では定められていませんが、国の指導として以下の場所での散骨は避けるようにと言われています。

・水源地付近や生活用水として利用される河川、湖、沼など
・漁場、養殖場、防波堤など
・公園や住宅地
・観光地や観光ルート

ただし、自宅の庭など上の指導に反していない場所であっても、近隣の住民に遺骨を撒いたことがわかってしまうとクレームが発生しトラブルの元になります。

ですから自分の所有地に散骨する場合でも、最低限、近隣の住民から見えない場所で行いましょう。

自分で散骨した時に起こりうるトラブルと注意点

上記ルールを守っていても、自分で散骨をするとトラブルが起こることもありますので注意しましょう。

それは以下のような点です。

自分も一緒に埋葬できない

まず当然ですが、散骨は散骨した場所を特定できません。
仮に特定できても、そこに本当に遺骨が眠っているかわかりません。
ですから遺族が眠っている場所と同じ場所に葬ってもらいたいと思っても、散骨の場合は不可能です。

後で改葬することは不可能

何かの理由で散骨を行って、そのあとに自分の家族の墓を作って、亡くなった人を一緒に葬り直したいと考えても、散骨の場合はすでに遺骨は土に還っているので不可能です。

家族が反対することも

散骨は本人の遺志に沿っていても、残された遺族にとってはお参りする場所もありませんから、抵抗が残るケースも多々あります。したがって自分を散骨してほしいと言った時に、家族の反対にあう場合も多いです。

散骨に関する判例は?

また先ほど少し書きましたが、散骨を「死体遺棄」だと警察が判断するケースがあります。
仮に死体遺棄になった場合、それは刑法違反になり、逮捕されてしまいます。

そのような事例は判例にはまだありませんが、判例に近い、政府判断は以下のように出ています。

平成3年に東京の市民団体「葬送の自由をすすめる会」が行った神奈川県沖での散骨に関して、法務省は以下のように公式に発言しています。

すなわち「刑法190条の遺骨遺棄罪の規定は、社会風俗としての宗教的感情を保護するのが目的であり、葬送のための祭祀のひとつとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」ということです。

また同時に厚生労働省も「墓地埋葬法はもともと土葬を対象としていて、遺灰を海や山に撒く葬法は想定しておらず対象外で、自然葬を禁じた規定ではない」と公式に言っています。

したがって、散骨は法律ではグレーゾーンにあるものの、実質的には適法な埋葬方法なのです。

散骨業者に頼んだ場合の費用

では散骨を自分で行わずに、業者に委託した場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか。

散骨の依頼方法

そもそも散骨を業者に委託する時には、以下の2つのパターンがあります。

(1)砕骨や散骨場所への案内など、散骨の一部を業者に委託する
(2)砕骨から実際の散骨まですべてを業者に委託する

以上のどちらにするかによって、散骨費用は変わってきます。

依頼内容別の散骨費用

まず海洋散骨の場合です。海洋散骨で(1)を選んだ時でも、船のチャーターの仕方によって費用が変わります。

自分の一家だけで船をチャーターして海洋散骨を行った場合は、総額20~30万円の費用がかかります。
しかしその分、ゆったりした気持ちで十分に故人とのお別れができます。

複数の家族で1隻の船に便乗し、海洋散骨をする場合は、総額で10万円程度の費用がかかります。
費用は安くなりますが、ほかの家族と一緒なので少し気が散るかもしれません。

そして(2)の場合です。
散骨まで全て業者に委託した場合の費用は非常に安く、だいたい5万円が相場です。
しかし最後の瞬間に自分で立ち会って、十分に故人とお別れもできませんし、どのような形で散骨されたのかということも不安です。

海洋散骨をする場合は、以上の相場とメリット、デメリットを勘案して判断しましょう。

山林散骨の場合も基本的には、(1)と(2)の方法によって費用が異なります。
やはり海洋散骨と同様に、単独で行う場合、複数で行う場合、業者にすべて委託する場合でだんだん費用が安くなります。

相場としては、海洋散骨の7~8割くらいだと考えておけば良いでしょう。

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まとめ

最近は亡くなった後に狭くて暗い納骨室に閉じ込められるのではなく、自然の中に還って、樹木や魚の栄養になって、生命界の循環の中の1つになりたい、と思う人も増えています。
そのよう人が選ぶ埋葬方法の1つが散骨です。

散骨は業者に任せることが一般的ですが、しかし上で解説したように法律やルールを守れば、自分で実行することも可能です。もしも自分の力で散骨を行いたいという場合は以上の解説を参考にしてください。