ゆうパックで遺骨を郵送する「送骨」とは?受入先も紹介

日本人の死生観の変化に伴って、お墓や葬送儀礼を重視するという価値観はかなり希薄になってきました。
かつてであれば、誰か家族が亡くなったら、故人にふさわしい規模の葬儀を行い、立派なお墓を作って納骨し、三回忌や十三回忌などの回忌法要なども怠らず実施する、ということが当たり前でした。
しかし現在ではそのような費用的にも手間的にも負担がかかることはできるだけ簡便化したい、という意向が主流です。
そのような意向を受けて最近注目されているのが、送骨サービスです。そこでここでは送骨サービスとは何か、どこで実施しているのか、費用はどの程度かかるのか、実施の手順はどうしたらよいのか、という点について解説して行きます。
目次
送骨サービスとは何か
まずそもそも送骨サービスとはどのようなものなのでしょうか。
送骨サービスとは?
送骨とは宅配業者を使って、寺院や霊園に遺骨を送り、遺族の立会いなく、寺院や霊園側にそのまま納骨してもらうことを指します。
そしてその後の四十九日や一回忌、三回忌法要などの回忌法要もそのまま寺院や霊園に代行を頼む、永代供養もセットになっている場合がほとんどです。特に、お墓を故人1人で埋葬する形式ではなく、ほかの人の遺骨を合葬する形式を選択すれば、トータルの費用も非常に安く済みます。
遺骨を郵送するのは違法じゃない?
遺骨の郵送は違法ではありません。
法律で、郵便で禁止されているものは、以下のものです。
郵便法
第十二条(郵便禁制品) 次に掲げる物は、これを郵便物として差し出すことができない。
一 爆発性、発火性その他の危険性のある物で総務大臣の指定するもの
二 毒薬、劇薬、毒物及び劇物(官公署、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師又は毒劇物営業者が差し出すものを除く。)
三 生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が付着していると認められる物(官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除く。)
これを見てわかるように、遺骨自体は大切なものですが換金性はありません。
また仮に郵送中に破損しても周囲に害毒をまき散らすものでもありません。
ですから郵送でも宅配便でも、法律上は遺骨の送付は禁止されていないのです。
また、郵送ではなく遺骨に関する法律ではどうでしょうか。
遺骨や埋葬に関する法律は、「墓地、埋葬等に関する法律」で規定されています。
しかし、こちらの法律でも遺骨の郵送を禁止する規定はないため、抵触しません。
もしも、過去に遺骨を郵送することは違法だと聞いた場合は、それはおそらく海外への郵送のことです。
海外へ遺骨を郵送すること、逆に海外から日本に遺骨を郵送することは原則禁止されています。
やむを得ず実施する場合は、大使館や外務省などの許可が必要なのです。
ですから、国内で遺骨を送付するということであれば、全く問題はありません。
送骨の流れ
次に送骨の流れについてです。手順は以下の通りです。
送骨サービスを行っている寺院や霊園を探す
最近は送骨サービスを訴求している寺院や霊園も多いので、ネットで「送骨」と検索すると、たくさん実施しているところが見つかるはずです。また現実的には、送骨は通信販売と同様に、遺骨を送付できる場所に寺院や霊園があれば実施可能ですから、日本中のどこにあっても依頼できます。
送骨サービスだけではなく、永代供養も行っているかを確認しましょう。
また自社では埋葬を行っていないが、永代供養を行っている寺院、霊園までの送骨を代行する業者やNPO法人もあります。
この記事でも、送骨サービスを実施している代表的な寺院や霊園を紹介しています。
送骨のために遺骨を梱包する
梱包の手順としては、まず骨壺よりひと回り大きい段ボールを用意し、ふたをしっかりガムテープで止め骨壺を納め、その上から骨壺が動かないようにぎゅうぎゅうに新聞紙などの緩衝材を入れる、ということです。
また送骨サービスを実施している霊園や、仲介業者によっては、送骨キットを用意しているところもあります。送骨キットは、送骨を申し込むと遺骨を納める段ボールと緩衝材、そして送り状をセットで送ってくるものです。遺族は送られたものを使って遺骨を梱包し送付するだけでよいようになっています。
必要書類の同梱を確認する
墓埋法の第 14条では「墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない」と規定されています。したがって、送骨は埋葬許可証、火葬許可証、または改葬許可証がなければ実施できません。これらの許可証は、自治体に死亡届を出したときに受け取れますから、必ず保管して、送骨する際には、遺骨と同梱するようにしましょう。
遺骨を送る
遺骨を送骨します。
納骨
寺院、霊園でしかるべき法要を行った後、納骨してくれます。納骨する場所は、個々のお墓、納骨堂、合祀のお墓などケースバイケースです。永代供養を行う寺院や霊園の場合は。墓誌に刻字してくれたり、戒名を付けてくれたりするサービスも付加されています。
送骨にかかる費用
送骨にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。
一般的な送骨の費用は、遺骨の埋葬とその後の永代供養がセットになっています。
まず合祀の場合は、3万から5万円程度です。個々に納骨する場合は10万から20万円程度です。一般的に新たにお墓を取得して納骨する場合の費用は、150万から300万円かかりますから、個別に納骨した場合でもあっても、送骨サービスならその1/10の費用で済むということです。
送骨サービスを受付けている寺院・霊園
送骨サービスを実施している寺院、霊園、あるいは仲介業者やNPO法人に共通した点はありません。ですからここでは、地域別に、送骨を行っているいくつか代表的
東北地方
関東地方
永代供養墓3万円~
寺院墓地宗教不問
中部地方
永代供養墓10万円~
寺院墓地宗教不問
近畿地方
永代供養墓3万円~
民営霊園在来仏教
中国・四国地方
送骨のメリット
また送骨にはどのようなメリットがあるのでしょうか。あるいはデメリットはあるのでしょうか。
送骨先が遠方でも可能
先ほど書いたように、送骨は通信販売と同様に、送付手段さえあって、送付後にお墓参りなどを予定していなければ、全国どこに送骨サービスの寺院、霊園があっても依頼可能です。
遠方にお墓がある場合、交通手段なかったり、遺骨をもって電車や飛行機に乗るのが大変だったりしますが、送骨であればそのような心配は無用です。
建墓よりも費用が安い
また費用の項目でも触れたように、送骨サービスはお墓を建立して埋葬することに比べて、圧倒的に費用が安いのも大きなメリットでしょう。
繰り返しになりますが、お墓を新たに作る場合は150万から300万円、すでに持っているお墓に埋葬するだけでも、葬儀代、納骨法要代、納骨作業代などで100万円は必要です。それらに比べて送骨サービスであれば1/5から1/10の費用で埋葬ができます。
送骨のデメリット
便利な送骨サービスですが、デメリットもあります。
あとで改装ができない
送骨サービスの安さを追求すると、ほとんどの場合合祀になります。したがって、いったんは送骨サービスを利用したが、後でお墓を作ったので改めて遺骨を取り寄せて、お墓に埋葬したい、ということはできません。これが送骨サービスの1番のデメリットでしょう。
遺骨の紛失の可能性も
遺骨に限らず、すべての郵送や宅配便の荷物で起こり得ることですが、送付途中で遺骨が紛失してしまう可能性もゼロではありません。紛失した場合は、郵便物等の損害賠償制度で決められた範囲で賠償を請求できますが、その限度額は30万から50万円です。自分の家族の遺骨の価値が、30万から50万円で納得するかどうかは、その人の価値観によるでしょう。
日本郵便のゆうパックしか受け入れがない
現在日本にはいくつかの宅配業者がありますが、日本郵便のゆうパック以外は、すべて遺骨の送付を禁止しています。ですから送骨サービスを利用する場合は、必ずゆうパックを利用する必要があります。
納骨の許可証は必要
送骨サービスに限らず、遺骨を埋葬するためには、先ほど書いたように埋葬許可証、改葬許可証、火葬証明書のいずれかが必要です。これはデメリットではありませんが、しかし単に遺骨を送れば済む、という話にはならないので、念のため挙げておきます。
心理的な抵抗がある
故人の遺骨を、人の手を借りて、自分は立ち会わずに埋葬してもらうということ自体に、遺族としての義務を果たしていないような罪悪感や、心理的な抵抗を持ってしまう場合もあるでしょう。
ペットも送骨できる?
送骨サービスにはペットの遺骨も対象にしたものがあります。
ペットの埋葬に関しては法律の規定がない
ペットの遺骨の埋葬に関して、現在法的な規制はありません。仮に遺骨や遺体を庭先に埋めても、遺骨が埋葬後に土の中から露出するなど、近所迷惑なことにならなければ何も問題ありません。したがって、ペットの遺骨を宅配便で送付して、しかるべき霊園で埋葬してもらうことは、法的にOKの範囲です。
ネットでも送骨を依頼できる
ペットの送骨はAmazonなどのネットでも申し込めます。手順としてはまずAmazonで送骨キットを購入すると、自宅に送骨キットが届きます。送骨キットを利用して遺骨を梱包し、同梱されていた送り状で霊園へ返送します。受け取った霊園側は遺骨を埋葬し、自宅宅には納骨および納骨証明書が届きます。
ですから、ペットの遺骨の埋葬に困っている場合は、送骨サービスを利用してもよいでしょう。
まとめ
送骨というサービスを始めて知った人も多いのではないでしょうか。故人の遺骨を行ったことのない寺院や霊園に、それも自分は立ち会わないで埋葬するということの心理的な抵抗さえなければ、送骨は便利で費用も安い、よい埋葬方法です。遺骨の埋葬に困っている場合は、以上の記事を参考に送骨も選択肢として考えてみてはどうでしょうか。