墓じまいのマナーを紹介!服装は?お布施や香典は必要?

近年、家墓を撤去する墓じまい(改葬)が増えています。
お墓を建てることと同様に、墓じまいをするという経験はそう何度もありません。
分からないことや知らないことも数多くあるでしょう。
今回の記事では、墓じまいのマナーについて解説します。
これから墓じまいを考えている方は、ぜひご一読ください。
目次
墓じまいとは
墓じまいとは、今あるお墓を解体し、墓地を更地にして管理者に返すことを言います。
墓じまいに当たっては、墓地がある役所での手続きが必要になります。
お墓から遺骨を取り出す前にはお坊さんに読経をお願いする場合が多く、これには家族や身内が立ち会います。
読経が終わったら、墓石の解体工事に取り掛かることができます。工事は石材店に依頼します。
墓地を更地にして返還したのちに遺骨を新たな場所で供養して、墓じまいの一連の流れが終了します。
墓じまいの費用や手順については、こちらもご覧ください。
参考:墓じまいとは何?費用・料金とお墓を処分する手続き・方法・流れ
墓じまいの服装のマナー
墓じまいに立ち会う時の服装はどのようなものが相応しいでしょうか。
墓じまいでは、一連の流れで何度かお墓にタイミングがあり、場合によってふさわしい服装が違います。
お坊さんを呼ぶ閉眼供養(魂抜きの法要)は喪服
お坊さんに墓前でお経をあげてもらう場合は喪服を着用します。
墓じまいをする際、一般的にはお墓から遺骨を取り出す前に、お坊さんにお経を上げてもらいます。
これを「閉眼供養」と言います。あるいは「魂抜き」「お性根抜き」、浄土真宗の場合は「遷仏法要」と言います。
閉眼供養には、お墓を仏様や霊魂が宿る礼拝の対象から、ただの石に戻すという意味合いがあります。
お坊さんを呼ぶ場合は正装が望ましいので、参列する際は喪服を着用しましょう。
閉眼法要は、必ずしも墓石解体の当日に行われません。
墓石解体工事の1~2週間前に閉眼法要を済ませておいて、その後に解体業者が入るということも珍しくありません。
したがって、閉眼法要と解体工事(遺骨の引き取り)の日程が別日になる場合は、2回お墓に行くことになります。
遠方にお住まいの方は、同じ日程にできるよう、お寺や業者と調整しましょう。
なお、閉眼供養は、お墓を建てたときに墓石を礼拝の対象とする「開眼法要」と対になる儀式です。
仏式のお墓は建てたときに「開眼法要」をしているはずなので、墓じまいの際の「閉眼法要」はほぼ必須ステップになります。
加えて、現実的にも、墓石解体をすることになる石材店は、閉眼供養していないお墓は解体できないという所が大半です。
また、慣習的にも閉眼供養をしないで墓じまいをしたとなると、抗議する親戚も現れるかもしれません。
お坊さんを呼ばない墓石解体は平服
墓石解体当日にお坊さんの立ち合いがなく、解体の立ち合いや遺骨の引き取りに行く場合は、平服で構いません。
山の上などお墓が行きづらいところにある場合は、動きやすく汚れてもいい服装でもいいでしょう。
ただし、通常のお墓参りと同様に派手な服装は控え、落ち着いた服装をするよう心がけましょう。
新しいお墓(改葬先)の開眼供養に呼ばれたら
お墓を近くに移すために墓じまいをする場合は、また新しく墓を建てることになります。
お墓を建てたときの儀式に参列する場合は、どのような服装をすればいいのでしょうか。
建碑祝いだけなら落ち着いた色のスーツ
新しくお墓を建てたら、お墓を霊魂や仏様が宿る礼拝対象とするための「開眼法要」を行います。
お墓を建てること自体はお祝い事に当たりますので、喪服は着用しません。
服装はグレーや紺などの落ち着いた色のスーツを着用しましょう。男性のネクタイは白が一般的です。
喪中・納骨式と同時に行うなら喪服
建碑式や開眼法要と同時に納骨式を行う場合は、喪服を着用します。
これは、お墓を建てることは慶事、納骨式は弔事にあたりますが、弔事は慶事に優先するためです。
あるいは、喪中の場合も喪服を着用しましょう。
親族が集まるなら事前に確認を
いずれのタイミングや儀式の場合も、親族を集めて行う場合は事前にドレスコードを相談しておきましょう。
事前に服装をお知らせしておかないと、それぞれ何を着ていいか迷ってしまいます。
当日集まってみたら喪服の中に一人だけ平服だったということも起こりえます。
お坊さんを呼ぶ場合は、事前にお寺に服装について相談しておいてもいいでしょう。
墓じまいのお布施のマナー
墓じまいをする際は、お布施が必要になります。
お布施は、墓石解体前の「閉眼供養」の際に必要になります。
また、もし新たにお墓を持つ場合は、「開眼法要」あるいは「納骨式」の時も必要です、
墓じまいのお布施はいくら包む?
お布施の金額は3~5万円程度が一般的です。
閉眼法要、開眼法要、納骨式いずれの場合も同様です。
ただし、お布施には地域差があるので、事前に親戚やお寺に確認しておくのが無難です。
お布施はお気持ちでと言っている以上、お寺もいくらくださいとは言いづらいことが多いです。
一般論として、「皆さんはどれくらい包まれますか」という聞き方をしましょう。
加えて、お寺の外までお坊さんに出向いてもらう場合は、「御車料」として5千~1万円を別に包みます。
さらに、法要後に会食の席を設けており、かつお坊さんがそこに参加しない場合は、「御膳料」として5千~2万円を包みます。
墓じまいで渡すお布施ののし袋は何を使う?
お布施を入れる袋は、いずれの場合でも白無地の封筒が無難です。
より丁寧な形で包む場合は、封筒ではなく、奉書紙という和紙を利用します。
封筒はコンビニや100円ショップに売っているもので構いません。
郵便番号欄が印刷されているものは避けましょう。
また、弔事の場合は不幸が重なるとのイメージから、袋が二重になっているものも避けます。
なお、地域によってはお布施にも水引をつけることがあります。
関西であれば黄白、金額が多ければ双銀、喪中であれば黒白の水引をつけるなどです。
原則は白無地の封筒で構いませんが、心配があるようでしたら親戚やお寺の世話役のような人に確認しておきましょう。
墓じまいで渡すお布施の表書きの書き方
いずれの仏事の場合も、お布施の表書きの書き方は同様です。
書くときは、毛筆または筆ペンを使用しましょう。薄墨ではなく、濃い墨で書きます。
表書きは、上側中央に「御布施」と書きます。
下側中央に自分の名前を書きます。名字だけで構いません。
なお、お布施とは別に車代を包む場合は「御車代」、御膳料を包む場合は「御膳料」と記載します。
墓じまいで渡すお布施の裏側・中袋の書き方
お布施を包むときは、表書き以外にも自分の情報や金額を記載します。
これらの情報は、封筒タイプなら裏側、中袋があれば中袋に記載します。
中袋がない封筒の場合
中袋がないタイプの封筒の場合は、裏側に自分の情報と金額を記載します。
封筒裏側の左下(手紙で自分の住所などを書く位置)に、右から住所、氏名、電話番号、最後に金額を記載します。
金額は「金○○圓也」と記載します。
○○の部分は金額を漢数字で書きます。
漢数字は、以下を参考にしてください。
5千円を入れる場合は「金伍阡圓也」、3万円を入れる場合は「金参萬圓也」となります。
- 一→壱
- 二→弐
- 三→参
- 五→伍
- 十→壱拾
- 千→阡または仟
- 万→萬
中袋がある包みの場合
外側が封筒ではなく、包みになっている多当折りタイプのものを利用する場合は、中袋があります。
中袋がある場合は包みの裏ではなく、中袋に自分の情報や金額を記載します。
金額は表側中央に「金○○圓也」と記載します。使用する漢数字は封筒の裏側に記載する場合と同じです。
裏側は、左下に住所、名前、電話番号を記載します。
墓じまいのお布施の渡し方とタイミング
お布施は、読経が終わり、お坊さんが帰るときにお渡しします。
お布施の包みをそのまま出して渡すことは失礼になります。
あらかじめお布施を袱紗(ふくさ)で包み、そこから取り出してお渡ししましょう。
墓じまいのお布施の包み方
お金は、表書きを上にして取り出した時に人物の顔が見えるように包みます。
袱紗は、取り出し口を左にしたときに表書が上に来るように包んでください。
金封袱紗という袋状になっているものは畳む必要がないので、そのままお布施を入れれば大丈夫です。
台付き袱紗という切手本が付属しているタイプや、爪付き袱紗包みを止める爪がついたタイプを使用する場合は畳みながら包む必要があります。
中央よりもやや右側、表書きが上になるようにお布施を置きます。この時、袱紗の1辺とお布施の1辺に対して45°傾いているようにしましょう。右→下→上→左の順に畳んでいきます。
台付き袱紗と爪付き袱紗は、3万円以上を包むときに使います。
離檀料が必要になることもある
寺院墓地にあるお墓を墓じまいする場合は、「離檀料」が必要になることがあります。
お寺のお墓を撤去するということは、そのお寺の檀家をやめるということに直結します。
離檀料とは、檀家をやめるときに、今までお世話になったことへの感謝としてお寺にお渡しするお布施の俗称です。
離檀料の相場は3~20万円程度ですが、地域やお寺の寺格によっても異なります。
また、ごくまれに、数百万単位の法外な金額を提示されることあります。
金額に納得がいかない場合は、あくまでお布施は気持ちであることを念頭に、お寺と話し合いましょう。
離檀料は、閉眼供養のお布施とあわせてお渡しすることもあります。
墓じまいに呼ばれたら香典は必要?
自分が施主やお墓の持ち主でなくても、墓じまいに立ち会うことはあり得ます。
この時、香典は必要なのでしょうか。
墓じまいに香典はいらない
閉眼法要や墓石解体工事に立ち会う際は、香典は不要です。
香典は、通夜や葬儀の際に遺族に包むお金です。
建碑式に呼ばれたら御祝金を包む
墓じまいした後にお墓を新たに建て、その建碑式に呼ばれた場合はお祝い金を持参します。
お金はご祝儀袋に包み、表書きは「建碑御祝」「建碑祝い」などとします。
金額は5千~1万円程度です。
納骨式に呼ばれたらお供えを包む
納骨式に呼ばれた場合は、お供えを包んでいきます。
建碑式や開眼法要と納骨式が一緒になった場合は、弔事が優先するのでお祝いではなくお供えとして包みます。
お金は不祝儀袋に包み、表書きは「御仏前」「お供え」などとします。
墓じまい(閉眼供養)当日の持ち物
墓じまい当日、つまり閉眼供養当日に必要な持ち物を解説します。
通常のお墓参りに必要な持ち物
閉眼供養は今のお墓にお参りする最後の日です。
いつものお墓参りにもっていく掃除道具やお供えを持っていきましょう。
具体的には、以下のようなものがあげられます。
【掃除道具】
- 桶・柄杓
- 雑巾
- ほうき
- たわし
【お供え】
- 花
- 線香
- ろうそく
- 水
- 故人の好きだった物や季節の食べ物
【その他】
- マッチ・ライター
- 数珠
お坊さんにお渡しするお布施
お坊さんに読経してもらった後に、お布施をお渡しします。
詳しくは、前述の墓じまいのお布施のマナーをご覧ください。
石材店に費用を手渡しする場合も
閉眼法要当日に遺骨を取り出しや墓石解体する場合は、担当の石材店にお礼を手渡しする場合もあります。
墓じまいの費用の支払い方法は、事前に担当の石材店に確認しておきましょう。
墓じまいのお供えのマナー
閉眼供養や開眼供養の際には、墓前にお供えをします。
お供えはどのように準備すればいいでしょうか。
お供えは「五供」を用意する
仏事のお供えは、「五供(ごくう)」と呼ばれる5つのお供えをすることが基本です。
「五供(ごくう)」の内容は、以下の5つです。
- 香…お線香や焼香
- 花…仏花
- 灯明…ろうそくや灯篭
- 水…自然水や水道水
- 飲食(おんじき)…ご飯など食べ物
お供えの置き方と作法
五供は、以下のようにお供えします。
水の供え方
水は、お墓に付属している水鉢に注ぎましょう。水はミネラルウォーターでも水道水でも構いません。
香炉に使われている石材の上面にくぼみがあれば、それが水鉢です。
お供えする水は、掃除に使うものとは別に用意しておきます。
墓石の掃除もする場合は、お供えする前に済ませておきましょう。
花の供え方
お花は、付属の花立にお供えします。
2つの花束を一対で飾りましょう。
一つの花束を作るにあたり、本数は3本、5本、7本など奇数で揃えます。
色も奇数でまとめるのが良いとされ、3色なら白・紫・黄、5色なら白・黄・紫・赤・ピンクで揃えます。
一番背の高いお花を中心に、ひし形になるように高さを切ります。
仏花に使われる花の定番は菊や小菊です。この他はカーネーションやスターチスもよく用いられます。
対して、バラなどのトゲがある花、彼岸花などの毒がある花、朝顔などのツルがある花は仏花に不向きとされています。
ただし、いずれも慣例的なものなので、故人や施主に特段の思いがあれば、好きな花をお供えして構いません。
組み合わせるのが難しければ、花やスーパーなどで「仏花」として売られているものを買えばいいでしょう。
飲食の供え方
お花を供えたら、食べ物をお供えします。
ご飯でなくても、季節の食べ物や故人が好きだったものをお供えして構いません。
お供えを置く場所はお墓によりますが、花立より一つ奥側の石材に置けることが多いです。一番手前側に供物台が設けられていることもあります。
お供えは直接墓石に置くのではなく、半紙を二つに折ったものを敷いて、その上に乗せるのが正式です。
仏事の場合、肉や魚などは殺生を連想させるため、お供えには不向きとされています。
灯明の供え方
ろうそくはろうそく立てにお供えします。
ろうそく立ての位置はお墓の造りによりますが、花立より内側に2本一対置けることが多いでしょう。お墓にろうそく立てが付属している場合もあります。
ろうそくはマッチやライターから直接火をつけて構いません。
火を消すときは、息を吹きかけるのではなく、手で仰いで消しましょう。
香の供え方
お線香は、お墓に付属している香炉や香立てにお供えします。
火はライターなどから直接つけるのではなく、ろうそくからもらいます。
線香が燃えて火が出たら、息を吹きかけるのではなく、手で仰ぐか、線香を縦に振って火を消しましょう。
墓じまいにかかる閉眼供養の場合は、墓前で焼香することもあります。
墓じまいの挨拶状のマナー
墓じまいにあたり、他にお墓の縁者がいれば挨拶状を出します。
お墓は埋葬されている家族だけでなく、一族全体に関わるものです。
とくに代々のお墓がある土地には一族や親戚がいることも多く、定期的にお参りをしてもらっていることもあります。
また、親戚でなくてもお参りやお墓のお世話をしてくれている人がいるかもしれません。
墓じまいを決める際に親戚やお墓の縁者には相談しておくことが前提ですが、墓じまいをした際も、改めて報告を兼ねた挨拶状を送りましょう。
挨拶状を送るタイミング
墓じまいの挨拶状を送るタイミングは、閉眼法要が終わった後です。
事前に挨拶状を書き終えておくと、遅滞なく送付できるでしょう。
挨拶状の書き方
挨拶状を書くのはハガキで問題ありません。
以下の事項を書きましょう。
- 時候の挨拶
- 墓じまいをした場所と時期
- 新墓所の所在地
- 墓じまいをした理由
- 結びの言葉
以下に、例文を記載します。
<例文>
いつしか葉桜の季節となり、暖かい日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。(時候の挨拶)
この度、○○霊園にあった我が家の墓所を、去る○月○日に墓じまいいたしました。(墓じまいをした場所と時期)
改葬先の所在地は、○○県○市の△△霊園です。(新墓所の所在地)
これまで我が家から旧墓所が遠く、日頃のお墓の管理もままならないことを心苦しく思っておりました。このままではご先祖様に申し訳ないという思いから、今回墓じまいさせていただくこととなりました。今後は近くの△△霊園にお墓を移し、あらためて懇ろに供養してまいります。(墓じまいをした理由)
季節の変わり目ですのでくれぐれもご自愛いただき、お健やかにお過ごしください。(結びの言葉)
まとめ
墓じまいのマナーについて解説しました。
服装は、僧侶が立ち会う場合は原則喪服です。身内だけで行う場合は、平服で構いません。
墓じまいにあたってお坊さんに閉眼法要をお願いする場合は、お布施が必要です。
表書きを「御布施」とし、お坊さんが帰るときに袱紗から取り出してお渡ししましょう。
お布施の金額の相場は3~5万円程度と言われますが、地域やお寺によって異なります。事前に親戚やお寺に確認しておくと無難でしょう。
閉眼法要が済んだら、親戚やお墓の縁者に挨拶状を出しましょう。
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