土葬の遺骨を改葬して墓じまいするには?

近年、お墓の引っ越しや墓じまいをする方が増えています。
厚生労働省が毎年公開している「衛生行政報告例」を参照すると、お墓から遺骨を移動する「改葬」の件数は、2017年度から最新の統計が確認できる2021年度まで、毎年10万件を超えていることが分かります。
(参考:衛生行政報告例 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口)
現代でこそ火葬が一般的に行われていますが、少し昔のお墓では土葬のお墓も珍しくありません。
今回の記事では、土葬のお墓を引っ越したり、墓じまいする方法や、注意点について解説します。
目次
土葬とは?
土葬とは、遺体を(火葬せずに)土中に葬ることを言います。
日本でも、昭和の中頃までは葬送の半数程度が土葬でした。
(参照:火葬が普及したのは、いつ頃からか知りたい。 | レファレンス協同データベース)
現在でも国内で土葬が禁止されているわけではなく、一部の霊園や集落では土葬が行われています。
しかしながら、ほとんどの墓地は各々の規約の上で火葬骨のみを受け入れることとしているため、基本的に土葬はできません。
土葬のお墓は墓じまいできる?
土葬のお墓も、もちろん墓じまいできます。
土葬のお墓が多い地域では、その周辺にある石材店も解体工事の実績があると考えられるので、おおむね対応してもらえるでしょう。
ただし、土葬のお墓であれば長い時間をかけて遺体は土に還るので、本来あえて掘り起こす必要はないかもしれません。
お寺の墓地や地域で管理している共同墓地の場合は、遺骨を掘り起こす必要があるか、お墓の管理者や菩提寺に一度相談してみましょう。
土葬のお墓の墓じまいの注意点
土葬のお墓も墓じまいできますが、火葬骨を納めるお墓と違い、いくつかの注意点があります。
遺骨は出てこないこともある
土葬をした遺体は、数十年、長ければ百年以上の時間をかけて土に還ります。
他のお墓に遺骨を移そうと思っても、遺骨が出てこないこともあります。
遺体がどれくらいの時間をかけて土に還るかは土壌の性質によるので、掘ってみないと遺骨が残っているかどうかは分かりません。
遺骨が出てこなかった場合は、埋葬していた場所の土を少しもらって、新しいお墓に入れることもあります。
土の掘り起こしが必要な分費用がかかる
土葬のお墓を墓じまいする場合は、埋葬箇所を深く掘り起こして遺骨を取り出すので、その分の費用がかかります。
どの程度の深さまで掘るかは、墓地の規定などによって異なります。例えば、都立霊園の土葬区画は返還工事の際に2メートル掘る必要があります。
掘削は、小さいショベルカーを用いて、最後は手で遺骨を掘り出していきます。機材が入らない難所であれば、最初から手で掘ります。
掘削の作業が大変になるほど、費用も高くなります。
遺骨の洗浄・再火葬が必要
掘り出された遺骨は洗浄し、改めて火葬する必要があります。
取り出した遺骨は、新しい納骨先に納めるか、散骨するかの大きく2通りの方法で供養されます。
新しい納骨先に遺骨を納める場合、ほとんどの墓地では「焼骨(火葬骨)」のみを受付けているので、再火葬が必要です。
散骨する場合には遺骨をパウダー状に砕く「粉骨」が必要ですが、これも基本的には再火葬が必要です(一部の業者では、再火葬ではなく独自の乾燥サービスを経てから粉骨します)。
再火葬にあたっては遺骨から土などの異物が取り除かれていなければならないので、洗浄しておく必要があります。
遺骨の洗浄はお墓の解体工事をした石材店に対応してもらえることもありますが、対応してもらえなければ、専門の業者に依頼します。
再火葬は、自分で自治体で手続きをして、火葬場を予約します。
改葬手続きをするときに土葬のお墓であることを伝える
遺骨を移動するには、現在のお墓がある自治体役所で手続きをして、「改葬許可証」を交付してもらいます。
この改葬の手続きの際に土葬のお墓であることを伝えて、再火葬のための「火葬許可証」も交付してもらうとスムーズです。
遺骨が残っていなければこれらの手続きは不要ですが、遺骨が残っているかどうかは掘ってみないと分かりません。
「遺骨が出てきたけど改葬許可の手続きをしていないために移動できない」ということになりかねませんので、土葬のお墓でも前もって手続きをしておいた方が無難です。
なお、改葬許可証は、次の納骨先に納骨する時に必要になります。
土葬のお墓の墓じまいの手順
土葬のお墓の墓じまいも、基本的には普通のお墓を同じ手順で行います。
1.親族や墓地管理者に相談する
まずは、墓じまいをするか、遺骨を移すかについて、親族や墓地の管理者に相談します。
墓地の管理者は、寺院墓地ならお寺、公営墓地なら自治体や管理事務所、共同墓地なら地域の墓地管理委員会です。
2.解体工事をする石材店を探す
石材店に、解体工事の見積もりをもらいます。
墓地の近くの石材店に連絡して、土葬のお墓に対応してもらえるかを先に聞いておきましょう。
また、墓地によっては、出入りできる石材店が決まっていることもあります。
3.新しい供養先を探しておく
遺骨の移動先を探しておきます。
土葬骨のみが埋葬されているお墓は実際に遺骨が出てくるか分からないので、契約は後にして、とりあえず再火葬した遺骨は自宅に安置しておくことにしても良いでしょう。
4.行政手続きをする
お墓がある自治体の役所で改葬の手続きをします。
「改葬許可申請書」という書類をあらかじめ窓口またはHPで入手し、記入しておくとスムーズです。
手続きをする際は土葬のお墓であることを伝えて、「火葬許可証」も交付してもらいます。
5.閉眼法要をする
お墓を解体する前に、僧侶に「閉眼法要」という墓前法要をしてもらいます。
お寺であればそこの僧侶に、そうでなければ菩提寺に、菩提寺が無ければ近くのお寺に依頼します。
石材店は閉眼法要をしていないお墓を解体できないことが多いので、これはほぼ必須の手順です。
6.解体工事・遺骨の取り出し
石材店に解体工事と遺骨の取り出しをしてもらいます。
閉眼法要より後の日程であれば、同日でなくても構いません。
7.遺骨の洗浄・再火葬
取り出した遺骨を洗浄します。洗浄は石材店に対応してもらえることもありますが、そうでなければ専門の業者に依頼します。
あらかじめ確認しておきましょう。
遺骨をきれいにしたら、再火葬します。
8.遺骨を供養する
再火葬した遺骨を供養します。
供養の方法には、新しい納骨先に納める、散骨する、などの方法が考えられます。
まとめ
現代でこそ葬送と言えばほぼ火葬が行われる日本ですが、昭和の中頃までは半数程度が土葬によって弔われていました。
少し昔のお墓であれば、土葬も珍しくはないでしょう。
土葬のお墓ももちろん墓じまいできますが、長期的に見れば遺体は土に還るので、遺骨の掘り起こしをしたいか、あるいは、掘り起こしが必要かどうかは、墓地の管理者や菩提寺などに相談してみましょう。
土葬のお墓が多い地域であれば土葬のお墓の解体実績がある石材店もあるはずなので、解体業者は墓地の近くの石材店から探してみましょう。
土葬のお墓を掘り起こしても、遺骨は出てこないことがあります。
また、遺骨が出てきたら、原則洗浄と再火葬が必要になります。
再火葬には火葬許可証が必要なので、役所で改葬の手続きをするときに、土葬遺骨を再火葬したい旨も伝えておきましょう。
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土葬のお墓は墓じまいできますか?
できます。解体工事は墓地周辺の石材店に相談してみましょう。土葬のお墓の場合は遺骨を掘り起こしますが、遺骨が残っておらず、土を少しもらって新しいお墓に納めることもあります。
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土葬のお墓を墓じまいするにあたって注意することはありますか?
土葬のお墓から取り出した遺骨は、ほとんどの場合で洗浄と再火葬が必要になります。取り出した遺骨をすぐに納骨できるわけではないので注意しましょう。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。