お墓の移動・引っ越しはどうやる?手続きや費用について解説

「お墓が遠くてお参りに行きづらい」「山にあるお墓のお参りがきつくなってきた」などのお悩みをお持ちの方は、お墓をお参りしやすい墓地に引っ越すことで、解決できるかもしれません。
この記事では、お墓の移動に必要な手続きや費用、流れなどを解説します。
目次
お墓を移動する手続き
お墓を移動する手続きについて解説します。
お墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請」をする
お墓に入っている遺骨を移動するには、お墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請」をする必要があります。
「改葬」とは、遺骨を他のお墓に移すことを言います。
具体的には、「改葬許可申請書」を必要書類と共に提出し、「改葬許可証」を交付してもらいます。
遺骨は、改葬許可証の交付をもって、初めて移動することができます。
遠方にお住いの場合は、郵送でも手続きの対応をしてもらえます。
なお、改葬許可申請は遺骨の移動にかかる手続きなので、誰も納骨していないお墓を移動したり解体する場合は、改葬許可申請は不要です。
その他の手続き
お墓の引っ越しに必要な行政手続きは「改葬許可申請」のみで済むことが多いのですが、場合によっては他の手続きも必要です。
公営墓地からお墓を引っ越す場合は「返還届」も出す
個人墓地のお墓をなくす場合は「墓地等廃止許可申請」も必要
土葬遺骨の移動やお骨を1つにまとめるための「再火葬」
「改葬許可申請」に必要な書類
改葬許可申請には、以下の書類が必要です。
書類 | 発行元 |
改葬許可申請書 | お墓のある市区町村の役所 |
埋葬(埋蔵)証明書 | 現在の墓地管理者 |
受入証明書 | 引越し先の墓地管理者 |
承諾書 | お墓の使用者 ※申請者と違う場合 |
改葬許可申請書の詳細
埋葬(埋蔵)証明書の詳細
受入証明書の詳細
承諾書の詳細
お墓の移動にかかる費用
お墓の移動にかかる費用の総額は、20万円以内で納まることもあれば、300万円近くになることもあります。
お墓の移動には、以下のような費用が掛かります。
内容 | 相場 |
墓石の撤去工事費用 | 8万~10万円/1㎡ |
法要や離檀料などのお布施 | 2万~30万円 |
引越し先のお墓の費用 | 5万~250万円 |
その他の費用 | 0円~5万円 |
墓石の撤去工事費用
お墓の引っ越しをするには、今あるお墓は撤去する必要があります。
墓石の撤去工事費用は、8~10万円/1㎡が相場と言われています。
ただし、お墓が山の上や通路が狭い墓地などの「難所」にあると、費用は相場も高くなり、倍以上になることもあります。
なお、墓石ごとお墓を引っ越したい方は、後述の「現在使用している墓石を移転することはできる?」をご覧ください。


法要や離檀料などのお布施
墓じまいでは、閉眼法要や離檀のためのお布施がかかります。
閉眼法要・開眼法要

閉眼法要をしていないお墓は工事できないという業者が多いので、これは実質的に必須ステップです。
閉眼法要は僧侶に営んでもらいますので、この時に渡すお布施が、1万~5万円程度かかります。
また、移動先のお墓ができたタイミング、またはお墓に納骨するタイミングでも、「開眼法要」または「納骨法要」という墓前法要をすることが一般的です。開眼法要のお布施も、閉眼法要と同程度です。
御布施は、寺格や地域によっては相場を上回ることがあります。
この他、お寺から外の墓地に出向いてもらった場合は「お車代」を5千~1万円程度、実費がこれよりも高ければその分も乗せて包みます。
離檀料
いわゆる「離檀料」とは、お寺の檀家を辞めるときに、今までお世話になったお礼として、お寺に納める御布施です。
離断料は、お寺にお墓がある場合のみ必要なことがあります。
離檀料の相場は、3万~20万円程度です。
地域によっては離檀料はいらないこともありますが、逆に法外な額を要求されてトラブルになるという事例も、ごくたまにあります。
引っ越し先のお墓の費用
お墓を移動するには、移動先のお墓を改めて契約する必要があります。
従来のような墓石のお墓を建てる場合の相場は、80~250万円程度です。
墓石のお墓以外にも、合葬墓、樹木葬、納骨堂などの跡継ぎ不要のお墓もあります。
跡継ぎ不要のお墓を購入すれば、墓石のお墓を購入するよりは、費用を抑えることができます。
種類 | 墓石のお墓 | 合葬墓 | 永代供養墓 | 樹木葬 | 納骨堂 |
画像 | ![]() |
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![]() |
費用相場 | 80~250万円 | 3~30万円/1人 | 3~200万円 | 10~150万円 | 30~200万円 |
一覧 | 一覧> | 一覧> | 一覧> | 一覧> | 一覧> |
その他の費用
これまでに述べた内容の他に、以下のような費用がかかるかもしれません。
- 書類の郵送費:数百円程度
- 再火葬の費用:5千~4万円程度
書類の郵送費は、改葬の手続きを郵送でやりとりする時にかかります。
再火葬の費用は、土葬の遺骨を移動したり、たくさんある骨壺を1つにまとめるための「再火葬」にかかります。
お墓を移動する流れ
お墓を移動するには、次のようなステップを踏みます。
1.親族や墓地の管理者に相談する
まずは、お墓を移すことを決定する前に、お墓に関わる親族や、お寺などの墓地管理者に相談しましょう。
相談をせずにお墓を移してしまうと、後々にトラブルになることがあります。
例えば、お参りに来ていた親族が、ある日突然お墓がなくなっていることに気づいたら、お墓はどうしたんだということになるかもしれません。
また、民営霊園や公営墓地ではそれほど心配ありませんが、お寺にお墓がある場合は、注意が必要です。
お寺からお墓を出すということは、お寺の檀家をやめること(離檀)にほぼ直結します。
檀家とは、寄付や仏事のお布施などを通して、お寺を経済的に支える家のことです。
離檀はお寺としても喜ばしいことではないので、まずはお墓を出したいということを決定事項としてではなく、相談という形で伝えましょう。
2-1.墓石の撤去工事の業者を決める
移動先のお墓を探すことと同時に、現在のお墓を解体する業者を選びます。
解体工事や移動先のお墓の費用が予想外に高くなってしまうと、お墓の移動自体が中止になるかもしれないので、同時進行で費用感を調べておくことをおすすめします。
お墓を解体する業者は、石材店から選びましょう。
必ず、契約前に一度見積もりを取ってください。
民営霊園や一部の寺院墓地では、墓地に入れる石材店が決まっているので、管理事務所やお寺に紹介してもらいます。
公営墓地や共同墓地では、業者は決まっていないので、自分で石材店を探します。
自由に石材店を選べる墓地では、複数社で見積りを取る「相見積もり」ができます。
一社見積もりを取ってみて、納得できなければ他の石材店にも見積もりを取ってもらいましょう。
お墓さがしでも、墓石を解体する石材店を紹介しています。
2-2.お墓の移動先を決める
工事の業者を決めることと同時に、お墓の移動先を探します。
お墓に求める条件を考えてから希望に合う墓地をいくつかピックアップし、実際に現地に見学に行きます。
霊園の様子や予算、アフターサービスの内容、将来的な通いやすさなどを考えて、お墓を契約しましょう。
お墓は、こちらから探すことができます。
3.役所で手続きをする
手筈が整ったら、お墓のある市区町村の役所で手続きをします。
詳しくは、冒頭の「お墓を移動する手続き」をご覧ください。
役所で手続きをして「改葬許可証」が交付されたら、法的にお墓から遺骨を取り出せるようになります。
4.閉眼法要をする
遺骨を取り出す前に、「閉眼法要」をします。
お世話になっているお寺があればそこに、なければ近くのお寺に問い合わせて依頼してみましょう。
閉眼法要は、遺骨の取り出しや工事の前であれば、当日でなくても構いません。
5.遺骨の取り出し・墓石の撤去工事
遺骨を取り出して、石材店に撤去工事をしてもらいます。
遺骨の取り出しには施主が立ち会うことが多いようですが、地域や石材店によっては、遺骨をそのまま移動先の墓地に郵送してくれることもあります。
6.移動先のお墓に遺骨を納骨する
取り出したお墓を、新しいお墓に納骨します。
一般的には、納骨のタイミングでも納骨法要、または開眼法要をします。
これで、お墓の移動が完了します。
現在使用している墓石を移転することはできる?
お墓さがしでは、現在使用している墓石をそのまま移転したいというご相談をいただくことがあります。
墓石ごとお墓を引っ越すことについて、解説します。
墓石の移転はできるがおすすめはしない
墓石ごとお墓を移すことは不可能ではありませんが、おすすめはしていません。
墓石の移転は、墓石を全て新しくするよりもかかる費用が割高になるためです。
墓石を壊さずきれいに解体することは、通常の工事よりもコストがかかります。
加えて、使用していた墓石は内部にヒビが入っていることがあるので、運搬にも壊れないように細心の注意が払われます。
また、お墓の区画を囲う「外柵」は、どうしても壊さないと整地できないので、移転できません。
真ん中の墓石を移転できても、外柵の部分はどちらにしても新しく建て直す必要があります。
墓石ごとお墓を移転する方法
おすすめしないとは書きましたが、墓石の移転は全くできないわけではありません。
墓石に思い入れのある方は、墓石の移転も一度検討してみましょう。
墓石の受け入れ可能な墓地を探す
墓石の移転でネックになるのは、墓石を持ち込んで良い墓地が非常に少ないことが挙げられます。
まずは、希望エリアで、墓石を受け入れてくれる墓地を探します。
気になる霊園を見つけたら、管理者に問い合わせて、墓石の持ち込みがOKかを確認しましょう。
公営墓地は墓石の持ち込みを受け入れている傾向にあるので、狙い目です。
ごく一部の民営霊園でも、墓石の持ち込みを受け入れていることがあります。
墓石の移転に対応してくれる石材店を探す
霊園を探すと同時に、墓石を移転してくれる石材店を探します。
移動先との距離感や、その他の問題で、移転に対応できない場合もあります。
まずは、お墓を建てた石材店に相談してみましょう。
石材店や移動先の霊園と打ち合わせる
実際に墓石を移動したときに、どの区画であれば建てられるのかを相談しましょう。
霊園によっては、お墓の高さや幅に規定を設けています。
また、お墓を解体した業者と、お墓を建て直す業者を一緒にできるかどうかは、業者の事情や霊園の管理規程などによります。
解体業者・移動先の霊園に見積もりをもらい契約する
実際に墓石の移転が実現できることになったら、解体する業者と移動先の霊園双方から見積もりを出してもらいましょう。
見積もりに納得できたら、契約します。
以降は一般的なお墓の引っ越しと同じ
これ以降は、一般的なお墓の移動と同じ手順です。
役所で手続きをして、改葬許可証が出たら閉眼法要をし、遺骨を取り出して解体工事をします。
解体業者が墓石を移動先の霊園まで運んで、新しくお墓が造りなおされます。
日程などの打ち合わせは、解体業者と移動先の霊園のどちらともしっかりとしていきましょう。
まとめ
お墓を移動するには、役所で「改葬許可申請」という手続きが必要です。
現在の墓地の管理者、移動先の墓地の管理者から必要書類をもらって、「改葬許可申請書」と併せて提出します。
この他、場合によっては必要な手続きや書類が増えます。
お墓を移動するための費用相場は、非常に幅があります。
お墓が小さい、移動先を合祀墓にするなどの条件が揃えば20万円以内でできることもありますし、新しく墓石のお墓を建てようとすると、300万円近くかかることもあります。
まずは工事の見積もりを取ったり、移動先のお墓にかかる費用などを大まかに調べておきましょう。
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お墓を墓石ごと移動することはできますか?
できますが、費用が割高になるためおすすめはしていません。墓石ごと移動したい場合は、まずは墓石の持ち込みを受け入れている霊園を探しましょう。
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お墓の移動に必要な手続きはありますか?
はい。今のお墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請」をします。お墓に遺骨が納骨されていない場合は、役所での手続きは不要です。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。