お墓は兄弟で相続できる?共同管理や相続したくない場合について解説

いわゆる「先祖代々之墓」は、基本的には親から長男に引き継いでいきます。
しかし、兄弟がいるなら、一緒に相続するということはできるのでしょうか。または、自分が長男だからと言って、必ずしもお墓を引き継がなければならないのでしょうか。
今回の記事では、兄弟とお墓の相続の関係について解説します。
目次
お墓を兄弟で相続することはできない
お墓を兄弟の共同名義で相続することはできません。
法律上、お墓は一般的な相続財産からは区別される、「祭祀財産」というものに分類されます。
祭祀財産とは
祭祀財産は、家系図や仏壇・祭壇、お墓など、家の祭祀に関わるものです。
祭祀財産は、民法第897条によって規定されます。
そもそも、1947年に全面改正される以前の旧民法では、祭祀財産は家督相続人が当然に承継するものでした。
しかし、改正によって家制度が廃止された新法においても、当時の保守派や祭祀を承継したいという国民感情に配慮する形で、祭祀財産に関する条項が残されました。
参考:2022小野健太郎「祭祀財産承継に関する民法規定の変遷とその意義」『国際関係学部研究年報 第42集』45~58P
祭祀の承継を維持していくには祭祀財産を分割して承継することは適当ではないので、祭祀財産は1人が引き継ぎます。
当然、お墓を2人で承継するということもできません。
必ずしも長男がお墓を承継する必要はない
お墓は、必ずしも長男が承継する必要はありません。
お墓を含めた祭祀財産の承継者は、次のように決められます。
お墓を含めた祭祀財産の承継者の決め方
- 1.祭祀財産を所有していた故人の指定による
- 2.故人の指定がなければ慣習による
- 3.上記どちらも明らかでなければ家庭裁判所が決める
このように、祭祀財産を承継するべき人の関係性や範囲については定められていないので、長男に限らず、次男、娘、親戚、あるいは他人など、誰でも承継者になる可能性があります。
ただし、実際にはお墓がある墓地の規定によってお墓の名義を引き継げる人の範囲が定められているので、実際に他人が祭祀承継者になることは現実的ではありません。
これらの内容については、民法第897条で次のように定められています。
第897条
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
お墓を共同管理するときのポイント
お墓を兄弟の共同名義で引き継ぐことはできませんが、現実的な管理を兄弟間で負担することはできます。
兄弟でお墓を共同管理するときのポイントを解説します。
誰がお墓に入るのか確認する
まずは、管理するお墓には誰が入るのかを確認しましょう。
お墓に入るか否かで、管理や負担に対する姿勢も変わってきます。
例えば、お墓を引き継ぐ人の他に、未婚または結婚しているが子供がいない兄弟がいれば、その人たちはお墓に入れる可能性があります。
お墓に入れるかは、お墓の承継者と墓地の管理規程によります。
もしお墓に入れるなら、初期費用の出資をしたり、お墓の掃除などを分担することも考えられます。
逆に、お墓に入らない兄弟は別に自分たちのお墓を用意するかもしれず、お墓に入る人同様の負担を求めることは適当ではないでしょう。
費用の分担を考える
お墓にかかる費用には、以下のようなものがあります。
- 年間管理費
- 初期費用(建墓する場合)
- 修繕費(必要に応じて)
年間管理費
年間管理費はお墓の承継者である名義人が墓地に納めます。
年間管理費は5千~2万円程度で、名義人がそのまま負担することが一般的です。
もちろん、兄弟間で合意が取れていれば、費用を協力してもらうことも問題ありません。
初期費用
お墓を新しく建てる場合は、初期費用が掛かります。
従来のような墓石を建てるお墓の費用相場は、80~250万円ほどです。
お墓の承継者の他に、お墓に入る兄弟がいれば、費用を出資してもらっても良いでしょう。
あるいは、親のためのお墓を建てる場合は、お墓に入らない兄弟も、多少相談に乗ってくれるかもしれません。
修繕費
お墓も永く使っていると、修繕が必要になります。
墓石が欠ける、ひびが入る、お墓が傾く、文字色が褪せるなど、その時々で必要になる対応やその費用は掛かります。
お墓を修繕する権利はお墓の名義人が持っているので、基本的にはお墓の名義人が費用を負担して修繕します。
ただ、修繕費についても、合意が取れていれば他の兄弟に負担をお願いしても良いでしょう。
特に、お墓が傾いていたり、納骨室をリフォームしたりするような場合は、丸ごとお墓の建て直しになり、ただお墓を建てるよりも費用が掛かることがあります。
お墓参りや掃除の分担を考える
お墓の維持が大変なことの要因の一つに、お墓参りがあります。
住まいの近くにお墓があれば別ですが、遠方にある場合は、お墓に行くまでの交通費や宿泊費、往復する時間などのコストがかかります。
お墓参りやお墓の掃除は、近くに住んでいる兄弟にお願いできないか聞いてみましょう。
近くに住んでいる兄弟がいない場合は、持ち回りも考えましょう。
お墓を相続したくない場合
費用や手間の負担の点で、自分1人でお墓を管理することも、兄弟で共同管理することも避けたいという場合はどうしたらよいのでしょうか。
お墓の相続放棄はできない
お墓を含む祭祀財産は、行政手続きを経ずに自動で相続されます。
お墓を承継する行政手続きがない以上、相続放棄をする手続きも存在しません。
したがって、一度は誰かが承継者になる必要があります。
お墓を撤去することはできる
お墓を含む祭祀財産の承継者は、承継した祭祀財産を自由に処分することができます。
したがって、親族などはいるもののお墓を管理してくれる人が誰もいないという場合は、一度誰かが承継者になり、その後お墓を処分することになります。
お墓を撤去して墓地を返還することを、「墓じまい」と言います。
遺骨は永代供養か散骨に
墓じまいをするにあたっては、もともと納骨されていた遺骨を何らかの形で供養する必要があります。
遺骨も祭祀財産としてみなされるので、遺骨の供養先についても、お墓を引き継いだ祭祀承継者が決めます。
もし近くに新しくお墓を建てるなら、そちらに移動すれば良いでしょう。
そうでない場合の遺骨の供養先としては、永代供養墓または散骨が考えられます。
永代供養墓とは
承継者がいなくても使用できることから、近年広がりを見せています。
一般的な墓石のお墓に永代供養がついていることはまだ少なく、樹木葬や納骨堂、合葬墓などが永代供養墓として販売されています。
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散骨とは

自分でやるには非常にハードルが高いので、専門の業者に相談しましょう。
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まとめ
法律上、お墓を兄弟で相続することはできません。
ただし、費用負担やお参り・掃除などの負担は分担できるので、兄弟で話し合ってみましょう。
特に、お墓の承継者の他にお墓に入る予定の兄弟がいれば、相談しやすいでしょう。
なお、お墓は必ずしも長男が相続しなければならないわけではありません。
元々のお墓の持ち主の指定があればその人に、なければ慣習に従って決まります。
お墓は相続の行政手続きが無いので、相続放棄の行政手続きも存在しません。
お墓の面倒が見れない場合は、一度誰かがお墓の名義人になり、その後にお墓を撤去しましょう。
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お墓を兄弟で共同して相続することはできますか?
できません。お墓の名義人は一人です。ただし、実際の費用負担やお参りなどは分担できるでしょう。
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長男なのですが、必ずお墓を承継しなければなりませんか?
必ずしも承継する必要はありません。元の名義人が承継者を指定していればその人に、なければ慣習に従って承継者が決まります。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。