水子地蔵には違いがある?寺院での水子供養の方法も解説
お墓の隣に、小さなお地蔵様が建っているのを見たことがあるでしょうか。
お墓の隣のお地蔵様には、生まれて間もなく亡くなった子や、生まれてくることができなかった子が祀られています。
いわゆる「水子供養」では、このように、お地蔵さまがしばしば登場します。
この記事では、水子供養で特に祀られる、水子地蔵について解説します。
目次
水子とは
水子とは、中絶、流産、死産などで、生まれてくることができなかった子どもを指す言葉として、現代では浸透しています。
元々は生まれて間もない子供を指す言葉でしたが、1970年代以降に水子供養が流行すると、現代のような意味で使われるようになりました。
水子供養とは
水子供養とは、この世に生まれることができなった子どもの冥福を祈る供養です。
「水子供養」は1970年代に広まった慣習で、歴史は長くありません。
日本では、1948年の優生保護法(現母体保護法)で中絶が認可されたことを受け、1950年代に中絶の全盛期を迎えました。
その後の1970年以降、医療の進歩で胎児の姿が確認できるようになったことで胎児の生命に対する認識が変わったと同時に、宗教者やオカルトブームに乗じたワイドショーが「水子のたたり」を取り沙汰するようになります。この頃は、中絶を経験した世代は、思春期や青年期を迎えた子どもを育てていたり、自身の加齢などがあり、家庭内で様々な問題が増え始める時期と重なります。
こうした家庭内の不安、または社会不安が水子のたたりと結びつき、1970年代に水子供養のブームが到来しました。
参考:鈴木由利子2017「水子供養に見る胎児観の変遷」『国立歴史民俗博物館研究報告 第250集』、157~209P
水子地蔵とは
水子地蔵とは、水子の霊を慰める仏様です。
地蔵菩薩は、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を巡りながら人々に救いの手を差し伸べる仏様です。
地域によっては、特に子どもを守る仏様として信仰されています。「賽の河原」で子どもたちを救ったのも、地蔵菩薩です。
この特徴をもって、水子を供養する際の供養での参拝の対象となっています。
水子地蔵の種類
水子地蔵には、いくつかの種類があります。
錫杖を手にしている地蔵菩薩
錫杖とは、修験者が使用する、先端に金属の環が付いた杖です。
錫杖を持った水子地蔵は、子どもの霊を正しく導いてくれる仏様です。
賽の河原で子供たちを救う仏さまも、錫杖を持っているお地蔵様だったと言われています。
合掌している慈母地蔵尊
合掌している水子地蔵は、水子の母親の代わりの子供を慈しんでいる慈母地蔵尊です。
合掌をしている水子地蔵はもともとは地蔵尊ではなく慈母観音菩薩で、母親が子供に注ぐ愛情のように深い慈愛心を持った菩薩です。
子どもを抱いている子安地蔵
子どもを抱いている水子地蔵は、別名を子安地蔵(こやすじぞう)とも言い、本来は妊婦の安産を守護してくれる地蔵尊です。
あるいは子どもをなかなか授からない人のために、妊娠の計らいをしてくれる存在でもあります。
水子地蔵による水子供養の方法
水子地蔵は、水子供養ではいくつかの文脈で登場します。
石仏のお地蔵さまを奉納する
水子供養の一つに、石で作られたお地蔵様をお寺に納骨するという方法があります。
一般的には、子どものような見た目のお地蔵様に、赤い帽子や前掛けをしたものが多いようです。
お墓の隣に建てて納骨する
水子のご遺骨がある場合は、既存のお墓の隣に小さなお地蔵様を建てて、その中に納骨するという慣習もあります。
ただし、必ずしも水子のご遺骨をこのように納骨しなければならないわけではありません。
仏前で参拝する
しばしば、水子供養をしている寺院では、不特定多数の人が参拝できるような、アイコンとなるお地蔵様の仏像があります。
個別のお地蔵様を造らずとも、お寺のお地蔵様に参拝するだけでも、水子供養になります。
その他の水子供養の方法
この他にも、水子供養は様々な形で行われます。
法要を営む
お寺にお願いして、個別法要または合同法要で、水子供養のための法要に参加します。
戒名を付ける・卒塔婆を造る
法要に加えて、水子に戒名を付けたり、卒塔婆を作ってくれるお寺もあります。
卒塔婆に関しては、小さなサイズのものに記名して奉納するという、ハードルが低いものが用意されていることがあります。
水子絵馬を納める
水子供養専用の絵馬を奉納できるお寺もあります。
絵馬には、赤ちゃんへのメッセージを書くことができます。
自宅で手元供養をする
位牌を造ったり、ご遺骨がある場合は手元供養品などを利用して、ご自宅で供養することもできます。
手元供養品には、ご遺骨を納められる骨壺や、ご遺骨自体を加工して作るアクセサリーやオブジェなどがあります。
納骨に期限はありませんので、心の整理が付くまで、側に置いておくこともできます。
まとめ
お地蔵さまは、子どもを守る仏様として、一部の地域で信仰を集めています。
水子供養においても地蔵菩薩が参拝の対象となり、このお地蔵様は一般的に「水子地蔵」と呼ばれます。
お地蔵様には、錫杖を持っている地蔵菩薩、合掌している慈母地蔵尊、子どもを抱いている子安地蔵がいます。
水子地蔵による水子供養の仕方は何通りかあり、「石仏にして奉納する」「お墓の隣に建てて納骨する」「仏前で参拝する」などが挙げられます。
この他にも水子供養の方法はあるので、ご自分が納得する方法でご供養しましょう。
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水子地蔵についてのよくある質問
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水子地蔵とはなんですか?
生まれてくることができなかった子の霊を慰め正しく導いてくれるお地蔵様です。
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水子地蔵を奉納する費用はどれくらいですか?
お寺や様式に寄りますが、おおむね5千~10万円程度です。
経歴
2018年より、お墓マガジンのコラムを執筆しています。適切な情報をお届けできるよう努めて参ります。