苗字が違う人と同じお墓に入るにはどうしたらいい?

現在日本で最も主流のお墓は、家墓と呼ばれる代々引き継いでいくお墓です。
基本的には本家の一族が継ぐため、同じ苗字の人同士でお墓に入ります。
しかし近年では、お嫁に行ったけど実家の墓に入りたい、妻の両親を一緒にお墓に入れたいなど、様々な事情で苗字が違う人を一緒に納骨したいというケースも存在します。
そこで、今回の記事では、苗字が違う人が同じお墓に入れるかや、入るにはどうすればいいかについて解説していきます。
目次
苗字が違うと同じお墓に入れないのか
まず根本の問題である「苗字の違う人が同じお墓に入れるのか」ということについてです。
法律上は問題ない
結論から言えば、苗字が違う人が同じお墓に入るのは法的には可能です。
お墓については、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)などで規定されていますが、ここで誰を一緒に埋葬するかの制限に関する記載はありません。
なお、墓埋法では「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない」と規定されています。
もし墓地の管理者に、苗字が違うことを理由に納骨を拒否された場合はどうなるでしょうか。
この場合、「苗字が違うこと」が条文中の「正当な理由」に該当するかが問題になりますが、今のところこの判例はありませんので、訴訟を起こしてみないと分かりません。
ですが、現実的には訴訟を起こすのは大変ですから、墓地の使用規則に従うことになるでしょう。
墓地の使用規則によって禁止されている場合も
多くの墓地では、埋葬者の範囲を規定しています。
その中には「苗字が同じ人のみ」「親族3親等以内」などの規定もあります。
先述の通り実質的にはこういった管理規則に従うことになりますので、まずはお墓の使用規約を確認してみましょう。
永代使用権所有者の承諾が必要
お墓に関する権利は、お墓を承継した権利者がすべて持っています。
ですから、誰を埋葬するの決定権も、すべてお墓の所有者にあります。
ですから、苗字を違う人を埋葬してもいいかを考えたときには、まず所有者に相談して承諾をもらわなければなりません。
苗字が違うが同じ墓に入りたいという事例
苗字が違うけど同じお墓に入りたいというのは、どういう場合に起こるのでしょうか。
離婚して旧姓に戻してないが実家の親の墓に入りたい
女性が離婚した場合でも、子どもの名字を変えたくないというケースや、結婚して改姓した仕事上の呼び名を再度変えたくないというケースなどでは、苗字を元に戻さないことも多くあります。
その場合、苗字は結婚後のままですが、離婚しているので夫側のお墓に入ることはできません。
かといって、自分の家族墓を建立するのは多額の費用がかかります。
したがってその場合、苗字が違うまま実家のお墓に入ることになります。
嫁に出たけど実家の親の墓に入りたい
結婚して子育てをしている時には、嫁ぎ先の「嫁」として懸命に役割を果たしても、その役割が終わった後は本来の自分に戻って新たな人生を送りたい、という人が増えています。
その延長で、夫と同じお墓ではなく、自分の両親と一緒のお墓に入りたい、という希望も増えています。
また、夫の実家がほとんど行ったことのない田舎にあり、全く知らない土地で眠りたくないという理由もあるようです。
嫁の実家の墓に入りたい
夫が次男や三男なのでお墓を持っておらず、かつ妻が一人娘だったり姉妹だった場合などに多いケースです。
嫁の実家の墓守にも不安があるなら、夫の方が入ってそのまま継いでいくという考えです。
妻の両親を同じ墓に入れたい
妻が一人娘の場合や、姉妹だけの長女の場合に多いです。
妻の実家のお墓を守る人がいずれいなくなってしまうことが分かっているなら、妻の実家でお墓を作るよりも、自分たちでお墓を建ててそこに一緒に入ってもらいたいというケースです。
違う苗字の人が同じお墓に入るには
ではそのようなケースの場合、どういう手続きを踏めば名字の違う人が同じお墓に入ることが可能になるのでしょうか。
墓地の管理者とお墓の権利者に確認を取る
再三述べてきましたが、お墓に誰が入れるのかは「墓地の使用規則」と「所有者の承諾」にかかっています。
これは、苗字が違うかどうかにかかわらず、お墓の決定事項一般に言えることです。
なので、苗字が違うお墓に入りたい人は、まずは墓地と所有者の双方に確認を取ることが必要です。
必要があれば墓の彫刻を変える
苗字が違う墓石の正面彫刻が気になるなら、彫刻を変えるのも1つの方法です。
少なくとも「○○家之墓」を「先祖代々之墓」にしてしまえば、苗字が違っても入ることには違和感はなくなります。
しかし石材店に言わせると、それは推奨されていません。
墓石の正面の文字は、かなり深く掘られています。
削るにもかなり労力とコストがかかりますし、セメントなどで埋めても耐久性が落ちます。
正面の文字を変えるなら、石材店に相談したうえで、石ごと変えることを検討したほうがいいでしょう。
二世帯一緒の両家墓を作るという方法もある
また1つの家族、親族だけのお墓を改め、両家墓にしてしまうという方法もあります。
両家墓とは
両家墓には、1墓域に2つのお墓を建立して並列させる形式と、1つの墓石に両家の家名を刻字する形式があります。
墓を継承する子供がいない、1人娘が嫁いでしまい将来的にお墓を維持できないなどの場合に採用されます。
ただしこの両家墓の形式を許可しない墓地や霊園もあるので、確認が必要です。
両家墓のメリット
両家墓のメリットには、以下のようなものがあります。
- 両家のお墓参りを1回で済ませることができる
- 遺族のお墓維持の負担を軽減できる
両家墓にする時の注意点
このようにメリットが多い両家墓ですが、建立するうえでの注意点もあります。
両家墓が許可されている墓地か
1つは先ほど書いたように、墓地や霊園が両家墓を許可するかということです。
特に傾向としては、民営の霊園は両家墓を許可し、公営の霊園は許可しないということが多く見られます。
さらに民営で両家墓を許可している場合でも、1つの墓石に2つの家名を刻むことは禁じられている場合もあります。
両家の宗派が違う場合
またお寺の墓地の場合は、両家の宗派が一緒かどうかが大きな問題です。
たとえば、浄土真宗のお寺の墓地は基本的に浄土真宗の門徒だけが埋葬されています。
そこに曹洞宗の宗徒が一緒に埋葬される、ということは通常であればあり得ません。
その場合は改宗が必要になるでしょう。
両家のお墓の権利者の了承が必要
加えて、両家の永代使用権所有者の了承が得られているかという点も重要です。
当然、両家の永代使用権所有者の了承がなければ、どちらかの墓地や霊園であっても、法的に両家墓を建立することは不可能です。
親族の了承が得られているか?
また両家墓にする上で、埋葬される親族全体の了承が得られているかも重要な問題です。
両方の永代使用権所収者、および埋葬される家族同士が合意していても、すでに埋葬されている親兄弟がいるかもしれず、その縁戚者が両家墓に反対する可能性があるからです。
ですから両家墓を考えた場合は、幅広く相談することを忘れないようにしましょう。
すでにあるお墓を両家墓にすることはできるのか
新たに墓域を購入し、そこに両家墓を建立する場合はまだ問題が少ないですが、既存のお墓を両家墓にする場合、様々の問題が発生します。
たとえば今のお墓から遺骨を移動させることになれば、空き家になったお墓の処分をどうするのかという問題があります。
そうなると墓じまいや、檀家をやめる離檀手続きなど、多くの話し合いや手続きが必要になります。
またお墓を更地に戻すための工事費も必要です。
苗字に関係なく誰とでも入れるお墓
そのような手間を避け、名字の違う人同士が同じお墓に入る方法もあります。
合祀墓
基本的に骨壷から遺骨を取り出し、直接大きな納骨室に納めます。
お墓の中で最も費用を安く抑えられるタイプです。
苗字に関係なく同じお墓に入れますが、全く知らない他人とも一緒に埋葬されることになるので注意しましょう。
樹木葬
樹木葬は代々引き継いでいくことを前提としないため、埋葬する人を限定しないことが多く、友だちと入れるということもあります。
この方法であれば、永代使用権も墓石の刻字も関係ありませんので、違う苗字の人でも同じ木の下に埋葬してもらえます。
参考:樹木葬とは?費用と購入の流れを解説!メリット・デメリット4選
納骨堂
ほとんどの場合は永代供養がついており、跡継ぎがいない方でも利用できます。
樹木葬と同様、利用者に制限がない場合が多く、血縁のない人とでも一緒に入ることができるところもあります。
まとめ
苗字が違う人がお墓に入れるかを決めるのは、墓地の管理者とお墓の所有者です。
まずはこの2つに確認を取りましょう。
時代の変遷や、「イエ」に対して「個人」という意識が強くなってきている傾向から、苗字と埋葬されるお墓を完全なセットで考えるケースは少なくなってきています。
その結果、上で挙げたような苗字が違うお墓に入りたい、という希望が増えているのです。
最近では時代や個人のスタイルに合わせて、霊園や墓地も多様化しています。
違う苗字で同じお墓に入りたい、という希望のある場合は、あきらめずにここで挙げたような様々な方策を考えてみましょう。
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